文献情報
文献番号
202116004A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の口腔管理等の充実のための研究
課題番号
20GA1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
平野 浩彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科/研究所 口腔保健と栄養)
研究分担者(所属機関)
- 本川 佳子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
- 枝広 あや子(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
- 小原 由紀(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
- 荒井 秀典(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長室)
- 飯島 勝矢(国立大学法人 東京大学 高齢社会総合研究機構/未来ビジョン研究センター)
- 恒石 美登里(公益社団法人 日本歯科医師会 日本歯科総合研究機構)
- 岩崎 正則(東京都健康長寿医療センター研究所)
- 五十嵐 憲太郎(日本大学 松戸歯学部)
- 渡邊 裕(北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)
- 古屋 純一(昭和大学歯学部 高齢者歯科学講座)
- 大河内 二郎(社会医療法人 若弘会 介護老人保健施設 竜間之郷)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
地域在住高齢者コホートデータを用いた「口腔機能低下症」の検証
口腔機能低下症から摂食嚥下障害の発症の詳細な実態、その重度化から導かれる低栄養 、サルコペニア、フレイル、身体機能障害、疾患などの発現リスクの実態把握はされておらず、重症度に沿った系統立った支援・対応策は国内外でもほとんど検討されていない。
高齢者の口腔機能低下の重症度別に、効果的・効率的な管理方法を考えるための基礎資料を構築することを目的に大規模コホートのデータを収集統合し、口腔機能低下の実態を、性、年齢、状態別に算出することとした(研究目的①)。
統合データを用いて算出した地域在住高齢者の口腔機能低下症の有病率をもとに、他の病態の有病率とも大きな乖離のない、新たな口腔機能低下症の定義を提案することとした(研究目的②)。
口腔機能低下のパターンに応じた効果的・効率的な管理方法の提案:口腔機能低下症診断アルゴリズムの提案
口腔機能低下症のアウトカムを、低栄養、フレイル、サルコペニアをアウトカムとして検討した結果、従来の7項目モデルと、「舌口唇運動機能低下」「低舌圧」「咀嚼機能低下」「咬合力低下」の4項目モデルで識別能の差は無いことを確認した。「口腔機能低下症」(4項目モデル)において、3項目以上の低下が認められたケースを口腔機能低下症と設定し、診断アルゴリズムの考案を目的とした。
口腔機能低下症から摂食嚥下障害の発症の詳細な実態、その重度化から導かれる低栄養 、サルコペニア、フレイル、身体機能障害、疾患などの発現リスクの実態把握はされておらず、重症度に沿った系統立った支援・対応策は国内外でもほとんど検討されていない。
高齢者の口腔機能低下の重症度別に、効果的・効率的な管理方法を考えるための基礎資料を構築することを目的に大規模コホートのデータを収集統合し、口腔機能低下の実態を、性、年齢、状態別に算出することとした(研究目的①)。
統合データを用いて算出した地域在住高齢者の口腔機能低下症の有病率をもとに、他の病態の有病率とも大きな乖離のない、新たな口腔機能低下症の定義を提案することとした(研究目的②)。
口腔機能低下のパターンに応じた効果的・効率的な管理方法の提案:口腔機能低下症診断アルゴリズムの提案
口腔機能低下症のアウトカムを、低栄養、フレイル、サルコペニアをアウトカムとして検討した結果、従来の7項目モデルと、「舌口唇運動機能低下」「低舌圧」「咀嚼機能低下」「咬合力低下」の4項目モデルで識別能の差は無いことを確認した。「口腔機能低下症」(4項目モデル)において、3項目以上の低下が認められたケースを口腔機能低下症と設定し、診断アルゴリズムの考案を目的とした。
研究方法
地域在住高齢者コホートデータを用いた「口腔機能低下症」の検証
群馬県草津町、東京都板橋区において大規模コホートを実施し、地域在住高齢者2,503 名の統合データベースを作成し、口腔機能低下症を定義可能な者1,611 名を対象に、検討を行った。
口腔機能低下のパターンに応じた効果的・効率的な管理方法の提案:口腔機能低下症診断アルゴリズムの提案
4 項目モデルにおいて3 項目以上基準値を下回ったケースを口腔機能低下症該当者とし、5 つのGroup で類型化を行い、その特性を検討した。
群馬県草津町、東京都板橋区において大規模コホートを実施し、地域在住高齢者2,503 名の統合データベースを作成し、口腔機能低下症を定義可能な者1,611 名を対象に、検討を行った。
口腔機能低下のパターンに応じた効果的・効率的な管理方法の提案:口腔機能低下症診断アルゴリズムの提案
4 項目モデルにおいて3 項目以上基準値を下回ったケースを口腔機能低下症該当者とし、5 つのGroup で類型化を行い、その特性を検討した。
結果と考察
地域在住高齢者コホートデータを用いた「口腔機能低下症」の検証
潜在クラス分析の結果、2 つのクラス(クラス1:口腔衛生状態不良を除く、口腔機能がクラス2 と比較して良好な群、クラス2:口腔衛生状態不良を除く、口腔機能がクラス1 と比較して不良な群)が抽出された。項目反応理論による解析の結果、口腔機能低下症各項目の識別力の絶対値が0.75 以上の項目は「咀嚼機能低下」「咬合力低下」のみであった。
次に、サルコペニア、フレイル、低栄養を精度よく識別できる口腔機能低下状態を新たに定義した。フレイル、低栄養をアウトカムとする場合、4項目モデルと7項目モデルの間に差は認められなかった。サルコペニアをアウトカムとする場合、7項目モデルより4項目モデルの方がC統計量が大きく、識別能が優れていた。4項目すべて該当する場合を「重度」とした場合、口腔機能低下症が13.0%、重度口腔機能低下症が5.4%であった。
口腔機能低下のパターンに応じた効果的・効率的な管理方法の提案:口腔機能低下症診断アルゴリズムの提案
➀4項目モデルの重複類型別解析
重複類型は4項目モデルにおいて3項目以上基準値を下回ったケースを口腔機能低下症該当者とし、その類型は以下とした。Group 1:舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能が低下、Group 2:舌口唇運動機能、舌圧、咬合力が低下、Group 3:舌圧、咀嚼機能、咬合力が低下、Group 4:舌口唇運動機能、咀嚼機能、咬合力が低下、Group 5:舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能、咬合力のいずれも低下とした。4項目モデル口腔機能低下症該当者は、19.8%(335人/1,693人)であった。
②4項目モデル診断アルゴリズム考案
i.口腔機能低下症が重度化した症状を摂食嚥下障害とする。
ii.Group1~5の現在歯数は不可逆なスコアであるため、作業初動時に整理する。
iii.Group1~5の口腔情報以外の年齢を含む特性を踏まえ、症状→原因の形に整理する。
iv.作成したアルゴリズム案の臨床との整合性を確認し、適宜作成作業を繰り返す。
以上の作成工程を経て、4項目モデル診断アルゴリズムを考案した。
潜在クラス分析の結果、2 つのクラス(クラス1:口腔衛生状態不良を除く、口腔機能がクラス2 と比較して良好な群、クラス2:口腔衛生状態不良を除く、口腔機能がクラス1 と比較して不良な群)が抽出された。項目反応理論による解析の結果、口腔機能低下症各項目の識別力の絶対値が0.75 以上の項目は「咀嚼機能低下」「咬合力低下」のみであった。
次に、サルコペニア、フレイル、低栄養を精度よく識別できる口腔機能低下状態を新たに定義した。フレイル、低栄養をアウトカムとする場合、4項目モデルと7項目モデルの間に差は認められなかった。サルコペニアをアウトカムとする場合、7項目モデルより4項目モデルの方がC統計量が大きく、識別能が優れていた。4項目すべて該当する場合を「重度」とした場合、口腔機能低下症が13.0%、重度口腔機能低下症が5.4%であった。
口腔機能低下のパターンに応じた効果的・効率的な管理方法の提案:口腔機能低下症診断アルゴリズムの提案
➀4項目モデルの重複類型別解析
重複類型は4項目モデルにおいて3項目以上基準値を下回ったケースを口腔機能低下症該当者とし、その類型は以下とした。Group 1:舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能が低下、Group 2:舌口唇運動機能、舌圧、咬合力が低下、Group 3:舌圧、咀嚼機能、咬合力が低下、Group 4:舌口唇運動機能、咀嚼機能、咬合力が低下、Group 5:舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能、咬合力のいずれも低下とした。4項目モデル口腔機能低下症該当者は、19.8%(335人/1,693人)であった。
②4項目モデル診断アルゴリズム考案
i.口腔機能低下症が重度化した症状を摂食嚥下障害とする。
ii.Group1~5の現在歯数は不可逆なスコアであるため、作業初動時に整理する。
iii.Group1~5の口腔情報以外の年齢を含む特性を踏まえ、症状→原因の形に整理する。
iv.作成したアルゴリズム案の臨床との整合性を確認し、適宜作成作業を繰り返す。
以上の作成工程を経て、4項目モデル診断アルゴリズムを考案した。
結論
地域在住高齢者コホートデータを用いた「口腔機能低下症」の検証
「低舌圧 + 咀嚼機能低下 + 舌口唇運動機能低下 + 咬合力低下」4 項目モデルが現在の口腔機能低下症とアウトカム識別能に遜色がなく、有病率は18.4%であり、さらに重症度の定義も可能になることが示された。
口腔機能低下のパターンに応じた効果的・効率的な管理方法の提案:口腔機能低下症診断アルゴリズムの提案
口腔機能低下症4 項目モデルを用い、当該モデルで類型される5 つのGroup 該当者の特性を整理し、口腔機能低下症4 項目モデルの診断アルゴリズムを考案した。
「低舌圧 + 咀嚼機能低下 + 舌口唇運動機能低下 + 咬合力低下」4 項目モデルが現在の口腔機能低下症とアウトカム識別能に遜色がなく、有病率は18.4%であり、さらに重症度の定義も可能になることが示された。
口腔機能低下のパターンに応じた効果的・効率的な管理方法の提案:口腔機能低下症診断アルゴリズムの提案
口腔機能低下症4 項目モデルを用い、当該モデルで類型される5 つのGroup 該当者の特性を整理し、口腔機能低下症4 項目モデルの診断アルゴリズムを考案した。
公開日・更新日
公開日
2022-06-10
更新日
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