小児からの臓器提供にかかる基盤整備と普及・教育システムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
202114005A
報告書区分
総括
研究課題名
小児からの臓器提供にかかる基盤整備と普及・教育システムの開発に関する研究
課題番号
21FF1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
荒木 尚(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 瓜生原 葉子(同志社大学商学部)
  • 多田羅 竜平(大阪市立総合医療センター緩和医療科兼小児内科)
  • 西山 和孝(北九州市立八幡病院 小児科)
  • 種市 尋宙(富山大学学術研究部医学系小児科学 小児科学講座)
  • 日沼 千尋(東京女子医科大学 看護学部 )
  • 別所 晶子(埼玉医科大学総合医療センター小児科)
  • 笹月 桃子(西南女学院大学 保健福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における小児患者からの脳死下臓器提供は、改正法の施行後徐々に増加しているものの、先進諸国の実数に遠く及ばない現状である。臨床現場に於いて脳死下臓器提供を行うに当たり、小児特有の課題を抽出し、実効的な対策を検討することが重要であるが、今までの我々の研究により多面的な課題が明らかにされた。特に子ども本人や家族の臓器提供の意思を確認するプロセス、虐待の除外に関する方策、家族の悲嘆に寄り添うケア、等が主たるものとして挙げられた。従って、臓器提供を希望する権利が尊重されるために、各々の課題は確実に解決され、実務者への継続的な教育・啓発が行われなければならない。
我々は平成30年度から令和2年度に移植医療基盤整備研究事業「小児からの臓器提供に必要な体制整備に資する教育プログラムの開発」により、小児の脳死下臓器提供に関するテキスト(令和3年7月発刊予定)や被虐待児除外のプロセスに関する提案、患者家族支援体制等々多くの成果物を公表した。この研究班体制を継続し、特に小児関連学会の協力のもと上記の研究をさらに進めて行くものとする。
本研究は小児患者の家族や提供施設の課題を踏まえ、それぞれ支援するという視点から行い、さらに教育現場での教育をどのように展開すべきかを検討し、その解決策を提言することを研究目的とする。
研究方法
各々研究対象とする課題について現状を把握し問題抽出に努めた。家族の意思確認支援(笹月、西山、別所、日沼)、「被虐待児を除外するためのマニュアル」の検証および虐待除外支援(種市、荒木)、家族ケア(日沼、別所、多々羅)、教育と啓発(瓜生原、荒木)以上4つの視点に着目し、最新の医学的知見と照合して課題解決の方策を検討した。
結果と考察
第56回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会において「小児の臓器提供(虐待事例を除外する手順の明確化)」について、小児からの臓器提供に関する作業班で検討することが提案されたため、当研究班において「虐待事例を除外する手順の明確化」について早急かつ集中して研究を行った。ガイドライン、臓器提供手続に係る質疑応答集、被虐待児を除外するマニュアルの内容に不整合が生じないよう確認して作業を継続し、マニュアル改訂、質疑応答集の改訂の方向性が一致されるところと認識している。尚、改訂にあたっては、児童相談所への通告と照会の違いについて記載すること、実際に臓器提供に至った事例についてわかりやすく記載することについて十分配慮する。最終的にまとまった改定案は、新たに作業班において確認され、関係学会を通じて周知が行われる予定である。
一方、日常の虐待診療に習熟していない施設からの医療機関が専門家へ相談できる体制についても検討すること、日本臓器移植ネットワーク、都道府県コーディネーターの理解を通して、円滑に周知をさせていくことの方策についても引き続き検討することが重要であると考えられた。
結論
前年度までの研究結果をまとめ、総合報告書を作成した。また聞き取り調査に応じて頂いた医療機関の取り組みを多くの医療従事者と共有するため、小児脳死下臓器提供において重要なトピックスを編纂し、多数学術団体の編集協力を得て、へるす出版より「小児版臓器提供ハンドブック」を出版した。
知的障害者等の意思表示に関する検討の一環として、笹月分担班が小児の意思表示について研究を進めた。西山分担班は救命困難、重篤な急性期小児患者の発生頻度を明らかにし終末期判断や臓器提供の意思確認の具体的方策について、種市分担班では五類型医療機関における虐待除外判断への支援体制を構築について、多々羅分担班・日沼分担班、別所分担班では家族の悲嘆の理解と家族ケアを実践するための方策について指針を提示しつつある。瓜生原分担班では移植医療や臓器提供に関する社会への啓発、特に学校・家庭における命の教育のあり方について研究を継続した。本研究は小児特有の課題を踏まえ、支援する視点を活動指針として備え、解決策を提言すべく活動している。
当研究班は令和3年度の研究初年度に於いて、小児版テキストの発刊や被虐待児の除外マニュアル改訂を実施した。小児からの脳死下臓器提供が本邦において日常の医療として定着するために、本研究班体制をさらに継続し、小児関連学会の協力・支援のもとに上記の研究をさらに進める必要があると結論した。

公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202114005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,685,000円
(2)補助金確定額
9,567,000円
差引額 [(1)-(2)]
118,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,892,529円
人件費・謝金 1,545,753円
旅費 104,060円
その他 2,789,969円
間接経費 2,235,000円
合計 9,567,311円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-12-23
更新日
-