文献情報
文献番号
202114004A
報告書区分
総括
研究課題名
適切な末梢血幹細胞採取法の確立及びその効率的な普及による非血縁者間末梢血幹細胞移植の適切な提供体制構築と、それに伴う移植成績向上に資する研究
課題番号
20FF1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
日野 雅之(大阪市立大学 大学院医学研究科 血液腫瘍制御学)
研究分担者(所属機関)
- 宮村 耕一(中部臍帯血バンク 研究管理室)
- 上田 恭典(倉敷中央病院 血液内科・血液治療センター)
- 中世古 知昭(国際医療福祉大学 医学部血液内科)
- 熱田 由子(日本造血細胞移植データセンター)
- 矢部 普正(東海大学 医学部)
- 長藤 宏司(久留米大学 医学部 血液・腫瘍内科部門)
- 藤 重夫(大阪国際がんセンター 血液内科)
- 矢野 真吾(東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科)
- 杉田 純一(北海道大学病院 検査・輸血部)
- 難波 寛子(東京都赤十字血液センター 事業推進二部)
- 廣瀬 朝生(大阪市立大学 大学院医学研究科 血液腫瘍制御学)
- 梅本 由香里(大阪市立大学医学部附属病院 看護部)
- 折原 勝己(公益財団法人日本骨髄バンク 総務部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
非血縁者末梢血幹細胞移植(UR-PBSCT)を普及させ、最適な時期に最適なドナーから移植ができることで移植成績の向上を目指すため、ドナー選択に資する情報発信、ドナーの安全性向上に資する体制の整備、コーディネートの効率化、採取の効率化、ドナーの負担軽減、ドナープール拡大に向けたドナー適格性の再評価を行い、安全で希望に添う負担が少ない提供体制を確立し、移植後患者の慢性GVHDを含めた合併症対策、長期フォローアップ体制を確立し、厚生労働行政における課題と対策の提言・施策の迅速かつ効率的な実現が出来るよう研究を行なった。
研究方法
UR-PBSCT普及のためのアンメットニーズを発掘するため、G-CSF投与実態、アフェレーシスの実態、造血細胞移植患者手帳の運用状況やニーズ、UR-PBSCTに対する懸念についてアンケート調査を行った。持続型G-CSFのPBSCHへの適応拡大に合わせてドナー手帳の改訂、ドナーアプリの開発を行なった。ドナー安全講習の受講義務化に備えて講習会を実施した。
結果と考察
R3年度非血縁者骨髄採取866件(前年比102%)、非血縁者末梢血幹細胞採取(UR-PBSCH)305件(前年比116%)が実施され、PBSCHは徐々に増加している。PBSCH認定施設は佐賀県以外の46都道府県に130施設が設置された。多くの施設が、G-CSF投与後の有害事象に対する対応体制など安全への懸念のため入院でG-CSFを投与していた。R2年度作成したドナー安全教材を改訂し、骨髄バンクおよび造血幹細胞移植推進拠点病院でドナー安全研修を14回実施し、1322名が受講した。R2年度構築したドナー安全情報データベース、ドナー適格性判定基準システム、アフェレーシストラブルシューティング動画の認知度は58.4%、60.4%、14.3%で、認知度の低いトラブルシューティング動画ファイルを各施設に配布することとした。持続型G-CSFの適応拡大を受け、安全性情報収集調査票の改訂、ドナー手帳の改訂を行い、G-CSF投与後の症状登録ドナーアプリを開発し、検証を開始した。18-19歳と20-24歳の血縁ドナーの採取データを比較し、採取手技の遂行性とドナーの安全性に問題がないことを確認し、安全面では成人年齢引き下げに伴い、ドナー提供年齢を引き下げることが可能と思われる。一方、若年者では都合つかず・連絡とれずの割合が高く、新入学や就職など人生にとって重要な時期でもあり、コーディネートには配慮が必要である。アフェレーシスナースがPBSCH関連業務を担当している医療機関は少なく、60%以上の施設で医師が血液成分採血装置の操作、採取中のモニタリングを担当しており、タスクシフトが充分に完了していない。凍結に関するインシデント事例を受け、移植施設に対して凍結保存に関するアンケート調査を行った。
UR-PBSCTよりUR-BMTを優先する理由は慢性GVHDへの懸念が大半であった。慢性GVHDに対する新たな治療法が利用可能になりつつあり、体外フォトフェレーシス(ECP)の有効性が確認され、各地域のニーズに合わせた配置を検討していく必要がある。患者手帳についてのアンケートの結果、患者、医療スタッフとも半数がワクチン接種などで「役に立った」と回答したが、かかりつけ医への普及は不十分であった。「スマホのアプリ」化の要望は多かった。
UR-PBSCTよりUR-BMTを優先する理由は慢性GVHDへの懸念が大半であった。慢性GVHDに対する新たな治療法が利用可能になりつつあり、体外フォトフェレーシス(ECP)の有効性が確認され、各地域のニーズに合わせた配置を検討していく必要がある。患者手帳についてのアンケートの結果、患者、医療スタッフとも半数がワクチン接種などで「役に立った」と回答したが、かかりつけ医への普及は不十分であった。「スマホのアプリ」化の要望は多かった。
結論
骨髄バンクが策定したドナー適格性判定基準およびマニュアルに従ったUR-PBSCHは、安全に実施可能であった。ドナー安全研修を1322名が受講した。ドナー安全情報検索システム、ドナー適格性判定基準検索システムは50%以上で認知されていたが、PBSCH時のトラブルシューティング動画の認知度は14.3%であったため、動画ファイルを各施設に配布することとした。UR-PBSCH認定施設がない県は佐賀県1県のみとなり、設置に向けて働きかけていく。多くの施設が、緊急時の対応体制に対する不安のため、入院でG-CSFを投与していた。持続型G-CSFの適応拡大を受け、ドナー手帳の改訂を行い、G-CSF投与後の症状登録ドナーアプリを開発した。成人年齢引き下げに伴う採取年齢の引き下げは安全上問題ないものの、ライフイベントへの配慮は必要である。アフェレーシスナースがいる施設は27%のみで、医師のタスクシフトのための人材育成、配置が重要な課題である。非血縁UR-BMTを優先する理由はUR-PBSCTによる慢性GVHDへの懸念が大半であり、分子標的薬に加えて、ECPなど慢性GVHDに対する治療戦略が重要である。医療者、患者とも患者手帳はワクチン接種に有用であったが、かかりつけ医への普及は不十分であった。スマホのアプリ化の要望は多く、手帳の改訂を検討する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2023-03-07
更新日
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