脳死下、心停止後の臓器・組織提供における効率的な連携体制の構築に資する研究

文献情報

文献番号
202114003A
報告書区分
総括
研究課題名
脳死下、心停止後の臓器・組織提供における効率的な連携体制の構築に資する研究
課題番号
20FF1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
横田 裕行(日本体育大学 大学院保健医療学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 横堀 將司(日本医科大学 大学院医学研究科救急医学分野)
  • 荒木 尚(埼玉医科大学 医学部)
  • 織田 順(東京医科大学 救急・災害医学分野)
  • 久志本 成樹(東北大学 大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学分野)
  • 朝居 朋子(藤田医科大学 保健衛生学部 看護学科)
  • 三宅 康史(帝京大学 医学部 救急医学講座)
  • 田中 秀治(国士舘大学体育学部スポーツ医科学科)
  • 名取 良弘(飯塚病院 脳神経外科)
  • 山勢 博彰(山口大学 大学院医学系研究科)
  • 渥美 生弘(社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院聖隷浜松病院救命救急センター)
  • 加藤 庸子(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院 脳神経外科)
  • 江川 裕人(東京女子医科大学 消化器外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦における臓器提供数は他の先進諸国と比較すると極端に少ない。臓器を提供する救急医療施設や脳神経外科施設等の視点からは、脳死とされうる状態になった患者家族に対して臓器提供に関する情報提供(いわゆる選択肢提示)が十分になされていないためと指摘されている。その要因は過去の我々の研究で脳死下臓器提供時の様々な負担であることが明らかになっている。その負担軽減や家族対応のために①重症患者対応メディエーターの育成、②臓器提供のための医療施設同士の連携体制構築、③法的脳死判定のVR技術を用いた教材作成、④社会への啓発活動、中高校生への教育のあり方について検討を行うことを目的とした。
研究方法
上記①については重症患者対応メディエーター育成のためのオンラインセミナーを2回開催した。重症患者対応メディエーターは救命が困難、あるいは重度の後遺症が残存すると入院当初から予想される急性期重症患者の家族に対して精神的支援、意思決定支援をする新たな職種である。②では臓器提供の経験が一定以上の施設を中心として周囲の五類型医療機関間で臓器提供への地域の連携・支援体制をモデルとなる基幹病院と連携病院から構築をした。また、法的脳死判定のための患者転院搬送に関する地域連携の課題検討をした。③ではVR技術を用いて、法的脳死判定の技術的な解説を行う教材を作成することとした。④では移植医療や臓器提供に対する社会への啓発活動、学校教育での推進と課題に関する検討を行い、本研究班の研究者が令和2年度に行った高校生に対する授業に関して教育を担当している教員に対して、アンケート調査を行った。
結果と考察
上記①の重症患者対応メディエーターの育成では当初は対面式セミナー開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の中、急遽オンラインセミナーの形式とした。そのための教材やプログラムを調整し、令和3年度内に2回、計71名の受講者に対して重症患者対応メディエーターの受講認定を研究班として行った。重症患者対応メディエーターは令和4年度から保険診療の中で、診療報酬も算定できるようになったが、急性期重症患者家族への心理的・精神的支援の役割を担い、患者家族の意思決定支援を行う新しい職種である。救命救急センターや集中治療室の中で重症患者対応メディエーターが活躍することで、例えば脳死とされうる状態となった患者家族の意思決定支援の中で、結果的に脳死下臓器提供数が増加することも期待されている。②では臓器提供の経験が一定以上の施設である静岡県浜松市聖隷浜松病院を基幹病院として、県内の五類型施設を連携施設としたモデルケースを設けて、臓器提供への地域の連携・支援体制の構築、症例の登録を行った。また、現在法的脳死判定のための転院搬送は実質的に困難であるが、それを可能とするための解決策についての検討を行った。③ではVR技術を導入した法的脳死判定の教材作成を見据えて、その基礎的な技術の確認を行い、最終年度の教材完成に向けて検討が進んでいる。④では移植医療や臓器提供に対する社会への啓発活動、特に中学生、高校生への教育について検討を行った。その中で、中高生に対しての実際のアンケートを行い、その意義について高い評価があることを明らかにした。またそれらの結果から臓器提供に関して教員がそれを生徒たちに教育する現状やその課題について検討を行った。どのようなにとってどのような課題があるかを検討した。研究班全体としては、例えば当研究班で育成している重症患者対応メディエーターの救命救急センターや集中治療室での配置が2022年4月からの診療報酬改定の中で算定ができるようになったなど、新型コロナウイルス感染拡大の影響は受けながらも、当初の目標を確実に達成しているものと考えている。
結論
本研究班では臓器・組織提供をする可能性がある患者家族への意思決定支援も視野に入れた重症患者対応メディエーター育成のためのセミナーを開催し、71名のセミナー受講者を研究班として当研究班のプログラム受講として認定した。また、臓器提供のための医療施設同士の連携体制構築や転院搬送に関する課題抽出と解決策の検討をした。さらに、臓器提供時の負担軽減、効率的な手順の推進のために法的脳死判定のVR技術を用いた教材作成を行っている。加えて中高校生を対象とした教育啓発活動に関する課題について検討し、中高生に対する教育の意義について明らかにした。新型コロナウイルス感染拡大の中、研究班全体としては当初の目標を確実に達成しているものと考えている。

公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202114003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,840,000円
(2)補助金確定額
8,136,000円
差引額 [(1)-(2)]
704,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,281,189円
人件費・謝金 550,550円
旅費 248,483円
その他 2,016,669円
間接経費 2,040,000円
合計 8,136,891円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
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