文献情報
文献番号
202114001A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄バンクドナーの環境整備とコーディネートプロセスの効率化による造血幹細胞移植の最適な機会提供に関する研究
課題番号
19FF1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
福田 隆浩(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院造血幹細胞移植科)
研究分担者(所属機関)
- 岡本 真一郎(学校法人慶應義塾 慶應義塾大学 医学部)
- 日野 雅之(公立大学法人 大阪 大阪市立大学 大学院医学研究科 血液腫瘍制御学)
- 高梨 美乃子(日本赤十字社 血液事業本部)
- 吉内 一浩(東京大学 医学部附属病院)
- 黒澤 彩子(伊那中央病院 腫瘍内科)
- 大竹 文雄(大阪大学 経済学研究科)
- 下野 僚子(東京大学 総括プロジェクト機構「プラチナ社会」総括寄付講座)
- 後藤 秀樹(北海道大学病院 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,527,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
骨髄バンクドナーの環境整備とコーディネートプロセスの効率化によりコーディネート期間を短縮し、最適な時期での非血縁者間移植の機会提供を増やす。ソーシャルマーケティング手法を用いて若年ドナーにおける初期コーディネート進行率増加を目指す。ドナー都合の終了理由として「仕事の都合(43%)」が最も多かったため(黒澤, 日本造血細胞移植学会雑誌2019)、企業および従業員に対する幹細胞提供に関する意識調査を行い、ドナー休暇・助成制度を含めた施策の有効性を検討の上、ドナーが幹細胞を提供しやすい環境整備に取り組む。
研究方法
行動経済学的な質問項目を含む40歳未満ドナーの10,000人を対象とした「大規模アンケート調査」は3,261人より回答が得られ、様々な観点から分析を行った。本調査結果を基にして、ドナーの安全性に考慮しつつ行動変容へ繋がるメッセージの伝え方についての介入研究を行った。企業および個人向けの調査として「骨髄・末梢血幹細胞提供のための休暇取得に関わる個人特性の分析」を行った。
結果と考察
近畿地区では採取施設の最新の受け入れ可能情報を更新するWEBシステムの運用を行い、ドナー選定から採取までのコーディネート期間が短く、患者第一希望週での採取率が高いことを令和3年度に論文化した(日野, 日本造血・免疫細胞療法学会雑誌2022)。また厚労豊嶋班で構築した新規ドナーWEB登録システム(プロトタイプ)の実臨床への応用に向けた検証を令和3年度に10名の対象者で行った。「大規模アンケート調査」(大竹, 行動経済学2020)の解析結果を基にして、ドナーの安全性に考慮しつつ行動変容へ繋がるメッセージの伝え方についての介入研究を行った。骨髄バンクドナー確定後に「適合通知」を受け取るドナー候補者を対象にして、現行の適合通知メッセージと3種類の新規メッセージを1週間ごとにランダム送付した。令和3年9月から令和4年2月まで1群あたり約2400件の適合通知が送付され、令和4年度にコーディネート状況をアウトカムとした解析を行う予定である。ドナー休暇制度の導入へ向けた企業および個人に対する幹細胞提供に関する意識調査の分析を行った。個人向けの調査は日本骨髄バンクのSNSへ登録している就業者4,287名へ配信し、1,056名から回答が得られた。特別休暇制度の導入に関して、個人による強いニーズがあるものの、企業側と個人側では意識にギャップがあることが分かった。他方、企業側は、従業員がドナー候補者となることの頻度や休暇の必要日数を理解すれば、特別休暇制度の導入に前向きになることが示唆されるなど、制度導入に向けた対策として適切な情報提供が有用とみられることが分かった。
結論
令和2年度と令和3年度上半期の患者登録から移植日までのコーディネート期間中央値は、骨髄移植(BMT)が132日/129日、末梢血幹細胞移植(PBSCT)が122日/118日、全体で130日/126日で、新型コロナウイルス感染症拡大に伴うコーディネート期間の延長は最小限に止められ回復傾向であった。行動経済学の観点からドナーコーディネートの現状を解析した研究は初めてであり、今後、ソーシャルマーケティング手法を用いて、ドナープールの質向上を目指していく。またドナー都合の終了理由として最も多い「仕事の都合」へ対応するため、企業と従業員の意識調査で得られた休暇の取得しやすさに関わる企業特性、ドナー休暇制度の利点・障害を吟味し、今後、実施すべき介入策を検討していく。
公開日・更新日
公開日
2023-03-07
更新日
-