免疫アレルギー疾患対策に関する研究基盤及び評価基盤の構築

文献情報

文献番号
202113009A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫アレルギー疾患対策に関する研究基盤及び評価基盤の構築
課題番号
21FE2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
森田 英明(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 玉利 真由美(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 足立 剛也(京都府立医科大学 大学院医療レギュラトリーサイエンス学教室)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 天谷 雅行(慶應義塾大学 医学部 皮膚科学教室)
  • 藤枝 重治(福井大学 学術研究院医学系部門)
  • 松本 健治(国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部)
  • 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 中山 俊憲(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 貝沼 圭吾(国立病院機構三重病院 臨床研究部)
  • 二村 昌樹(国立病院機構 名古屋医療センター 小児科)
  • 坂下 雅文(福井大学 医学部 耳鼻咽喉科)
  • 正木 克宜(慶應義塾大学 医学部 内科学(呼吸器))
  • 佐藤 さくら(国立病院機構相模原病院臨床研究センター 病態総合研究部)
  • 倉島 洋介(千葉大学 国際高等研究基幹)
  • 福田 憲(高知大学 医学部)
  • 緒方 大聡(国立病院機構福岡病院 臨床研究部)
  • 神尾 敬子(九州大学 九州大学病院呼吸器科)
  • 猪俣 武範(順天堂大学 医学部)
  • 中島 沙恵子(京都大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では免疫アレルギー疾患の罹患者は非常に多く社会問題となっている。平成26年にアレルギー疾患対策基本法が成立し、これらの推進に関する基本的な指針では長期的かつ戦略的な研究推進の必要性が示された。その後、免疫アレルギー疾患研究10か年戦略が令和元年に示された。本研究班は効果的で有意義な免疫アレルギー疾患の研究を推進するため、研究戦略の実装および進行状況の把握を目的とする。
研究方法
以下の3つの点を柱とし研究を進めた。
① 我が国における免疫アレルギー研究分野の進捗評価に資する調査研究
世界で初めて、「厚み」指標による長期的な影響や論文概要の自然言語解析を組み合わせ、アレルギー領域の研究成果のインパクト解析を行った。
② 医療の現状及び経年的変化を把握するための研究基盤の構築
レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用し、免疫アレルギー疾患の罹患者数、診療状況、経年的変化の把握を試みた。重点項目の一つである重症アレルギー疾患(アナフィラキシー)の治療実態と、アレルギー性鼻炎の治療法の一つであるアレルゲン免疫療法の治療実態に関する調査を行なった。
③ 異分野連携、産官学民連携及び国際的な研究開発を進められる仕組み作り
産官学連携に向けた研究ハッカソンイベント「Hacking Dermatology」、留学推進シンポジウム「留学のすゝめ」、各診療科とコメディカルの垣根を越えるバーチャル教育事業「出前授業」、海外の最先端の研究を進める日本人研究者の発掘に向けた「UJA論文賞」のを実施した。
結果と考察
① 我が国における免疫アレルギー研究分野の進捗評価に資する調査研究
世界で初めて日米欧の免疫アレルギー研究分野のインパクト解析を行い、AMED、NIH、MRCの本領域の研究プロジェクトの強み・弱み・可能性を明らかにした。日本からはアレルギーの臨床研究や、精密医療、微生物叢などの外的因子と宿主因子との相互関係、さらに幼少児に関連した研究成果が多く生み出されており、これは、AMEDが研究開発を推進していること、厚生労働省が免疫アレルギー疾患研究10か年戦略の中で重点を置いて推進していることなどが理由と考えられた。
② 医療の現状及び経年的変化を把握するための研究基盤の構築
アドレナリン自己注射製剤は成人より小児の処方率が高いことが明らかになった。これは小児において食物アレルギーの有症率が高いことが一番の理由と推定された。また今回の研究でははじめて地域別のアドレナリン自己注射製剤の処方実態が明らかになった。地域毎にアレルギー診療の傾向や質が異なる可能性も示唆され、標準的なアナフィラキシー診療の均てん化を図ることが重要性であると考えられた。また、アレルギー性鼻炎の治療法の一つであるアレルゲン免疫療法の治療薬の処方が、2018年から急激に増加していることが明らかとなった。これは、2018年に同治療薬の適応が12歳未満まで拡大されたことで、小児科領域での処方が増加したことが背景にあると考えられた。
③ 異分野連携、産官学民連携及び国際的な研究開発を進められる仕組み作り
「Hacking Dermatology」には33名が参加し、その内訳は、医師11名、研究者9名、企業家7名、企業4名、学生2名だった。参加者からは高い満足度を示すフィードバックがなされた。第4回日本眼科アレルギー学会において、留学推進イベント「留学のすゝめ」を開催した。5名の海外留学中の医師・研究者より留学の生の声を届けてもらい、迅速な留学に繋がる事例の創出に至った。「各診療科の垣根と参加者の敷居をできるだけ低くしたバーチャル教育事業(出前授業)」を企画し、各大学・地域・医師会・薬剤師会およびSNSによる周知を行った。合わせてのべ約2000人・回がライブ視聴し、YouTube限定公開アーカイブ動画へのアクセスも2000回以上を数えた。メーリングリストへの登録者数は約1000人となり、地域・診療科・職種を超えた情報共有のプラットフォームとして出前授業企画終了後も機能している。
結論
免疫アレルギー疾患研究10か年戦略2030〜「見える化」による安心社会の醸成〜について、AMED, NIH, MRCの研究助成プログラムの比較解析結果をAllergy誌に発表し、研究戦略の立案・見直し・進捗評価を行う上で重要な多元的多元的なインパクト解析の基盤を構築した。また、NDBを用いてアナフィラキシーの治療薬であるアドレナリン自己注射製剤の処方実態調査結果をAllergology International誌に発表し、アレルギー疾患に対する医療の均てん化・医療政策の評価に資する解析基盤を構築した。さらに、研究ハッカソン、留学推進シンポジウム、出前授業、海外成果表彰式を開催し、連携推進基盤を構築した。

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202113009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,934,000円
(2)補助金確定額
4,932,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 546,864円
人件費・謝金 42,900円
旅費 50,410円
その他 3,158,691円
間接経費 1,134,000円
合計 4,932,865円

備考

備考
委託費の一部が削減できたため

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-