食物経口負荷試験の標準的施行方法の確立と普及を目指す研究

文献情報

文献番号
202113007A
報告書区分
総括
研究課題名
食物経口負荷試験の標準的施行方法の確立と普及を目指す研究
課題番号
21FE1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 浩明(あいち小児保健医療総合センター 総合診療科部)
  • 緒方 美佳(国立病院機構熊本医療センター 小児科)
  • 岡藤 郁夫(神戸市立医療センター中央市民病院 小児科)
  • 小池 由美(長野県立こども病院 アレルギー科)
  • 鈴木 慎太郎(昭和大学 医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門)
  • 長尾 みづほ(独立行政法人国立病院機構三重病院 臨床研究部)
  • 福家 辰樹(国立研究開発法人国立成育医療研究センター アレルギーセンター 総合アレルギー科)
  • 福冨 友馬(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 三浦 克志(宮城県立こども病院 アレルギー科)
  • 矢上 晶子(冨高 晶子)(藤田保健衛生大学 医学部 総合アレルギー科)
  • 佐藤 さくら(国立病院機構相模原病院臨床研究センター 病態総合研究部)
  • 柳田 紀之(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
  • 高橋 亨平(独立行政法人国立病院機構相模原病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究課題では食物経口負荷試験(負荷試験;OFC)のより安全な標準的施行方法を確立し、医師向け診療サポートアプリケーション(アプリ)を開発・実用化することにより食物アレルギー診療の質の向上を目指す。
研究方法
研究課題1:医師向け診療サポートアプリ開発・実用化
 「初期アプリ作成」「予測結果モデルの検証」「アプリの実用化・普及」の3つの段階を経て実用化を目指す。
研究課題2:共通プロトコールを用いた負荷試験の検討
 研究代表者及び研究分担者の計6施設において、加熱鶏卵の定型負荷食を用いたOFC の陽性率及びアナフィラキシー発生率を主要評価項目として鶏卵OFCの実効性と安全性を検証した。
研究課題3:成人食物アレルギー診療の実態調査
 日本アレルギー学会 アレルギー専門医教育研修施設を対象とし、「施設状況に関する調査」、「診療状況に関する調査」、「診療実態に関する調査」の3つの調査項目に分け、IgE依存性食物・食物関連のアレルギー患者の診療実態について調査した。
研究課題4:「OFC の手引き」の妥当性検討
 研究代表施設および分担施設から2019年に実施したOFC症例の臨床データを集積し、フローチャートに沿って「一般の医療機関」、「日常的に実施している医療機関」、「専門の医療機関」を選択した場合のOFC陽性率、アナフィラキシー発症率を抗原別に求め、OFC陽性のリスク因子について検討した。
結果と考察
研究課題1:医師向け診療サポートアプリ開発・実用化
 前研究班で集積した2019年に実施したOFC症例(鶏卵、牛乳、小麦、ピーナッツ、ナッツ類、ソバ)の臨床データ(7941例)のデータクリーニングを行い、ロジスティック回帰分析によりOFCの結果予測に必要なモデルを作成した。得られた結果予測モデルをもとに初期アプリを作成し、動作確認を終了した。
研究課題2:共通プロトコールを用いた負荷試験の検討
 2021年9月~2022年3月に定型負荷食を使用したOFCを116例に実施した。84例(72%)が鶏卵を完全除去しており、68例(57%)が即時症状の既往があった。114例中18例(16%)にアレルギー症状が誘発され陽性と判定された。3例(3%)はアナフィラキシーを呈したが、治療により改善した。定型負荷食を自宅で摂取した結果の患者アンケートでは、陰性者96例のうち、43例(45%)から回答が得られ、43例全員が明らかな症状なく摂取可能であった。以上より、定型負荷試験食を用いたOFCは比較的安全に施行できることが明らかになった。
研究課題3:成人食物アレルギー診療の実態調査
 成人食物アレルギーの診療を行っているのは全体の約6割の施設であった。診療科別には、小児科ではすべての施設が、皮膚科では約9割の施設が食物アレルギーの診療を行っているのに対し、内科では約4割が食物アレルギーの診療を行っていなかった。食物アレルギー診療が行えない背景には、「経験のある医師がいない」ことやOFCを実施するための「マンパワー不足」などが理由として挙げられていた。調査結果から、内科における食物アレルギー患者の診療基盤の拡大が課題と考えられた。そのためには専門施設での研修やe-learningなどによる知識と技術の補完、さらに医師以外のパラメディカルスタッフの養成など、これらの問題点の解決策について検討が必要である。また内科で小児期発症の食物アレルギー患者を診療している割合が低いことから、多くは小児科で青年期以降もフォローされていると考えられた。食物アレルギー患者の移行期医療を考えるうえで、OFCが実施可能な施設を有する内科、皮膚科との連携も必要と考えられた。
研究課題4:「OFC の手引き」の妥当性検討
 鶏卵の少量OFC、小麦の少量以下OFCにおいて、「OFCの手引き2020」の「医療機関選択のフローチャート」は概ね妥当であった。一方牛乳の少量以下OFCにおいては「日常的に実施している医療機関」及び「専門の医療機関」に相当する症例の陽性率が高く、フローチャートの見直しについて検討を要する。いずれの抗原も「一般の医療機関」に相当する症例数が少ないため、引き続き検討が必要である。
結論
 成人食物アレルギーについてわが国ではじめて全国調査を行い、成人食物アレルギーの診療状況・診療実態を明らかにした。今回の調査結果を元に「成人食物アレルギー診療に関する提言」を取りまとめていく予定である。
 「OFCの手引き」の妥当性については、鶏卵の少量OFC、小麦の少量以下OFCにおいて、フローチャートは概ね妥当であったが、牛乳の少量以下OFCにおいてはフローチャートの見直しについて検討を要する。
 医師向け診療サポートアプリの開発・実用化、共通プロトコールを用いたOFCについては、当初の予定通りに研究を実施する予定である。

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202113007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
6,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 691,985円
人件費・謝金 4,194,000円
旅費 0円
その他 114,015円
間接経費 1,000,000円
合計 6,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-03-03
更新日
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