小児から若年成人での生物学的製剤の適正使用に関するエビデンスの創出

文献情報

文献番号
202113006A
報告書区分
総括
研究課題名
小児から若年成人での生物学的製剤の適正使用に関するエビデンスの創出
課題番号
21FE1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
滝沢 琢己(国立大学法人 群馬大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤澤 隆夫(独立行政法人国立病院機構三重病院 臨床研究部)
  • 足立 雄一(富山大学 学術研究部医学系小児科学)
  • 長瀬 洋之(帝京大学 医学部 内科学講座 呼吸器・アレルギー学)
  • 植木 重治(秋田大学 大学院医学系研究科総合診療・検査診断学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高用量吸入ステロイド薬でもコントロール困難な重症喘息は、重大な疾病負担であり、多くの医療資源を消費する。これに対して、生物学的製剤が保険適用され、難治性喘息の患者にとっての福音となりつつある。しかしながら、エビデンスは未だ十分でなく、明確な層別化指標がないこと、 投与開始後の中止時期が不明であること、移行期医療の時期の適正使用の指針がないこと、喘息長期予後への影響が不明であること、などの課題が残る。
 本研究では、これらの課題にアプローチするために、重症喘息の新たな治療手段となった生物学的製剤の有効かつ適正な使用について、ライフスパンを通しての指針を確立することを目的とする。とくに、長期予後改善のために重要である小児期から成人期前半にフォーカスする。
研究方法
① まず、日本小児アレルギー学会と日本アレルギー学会と連携、全国のアレルギー疾患医療拠点病院の協力を得て、小児期から若年成人期の重症喘息患者をデータベースに登録、生物学的製剤の使用実績データを解析する。第一段階では横断的解析を行うが、レジストリーとして確立して、今後の長期観察に備える。
令和3年度は、EDCでのレジストリシステムを構築し、登録を開始する。
令和4年度は引き続き登録を継続、
令和5年度にも登録を継続し、データを解析する。
② また、これまで知られていないライフスパンを通してのエビデンスについてシステマティックレビューを行い、上記横断的研究結果と合わせて、ガイドライン改訂に資する。
令和3年度は、システマチックレビューを行う参加者の応募やクリニカルクエスチョンの選定を行う。
令和4年度、5年度は、システマチックレビューを実施する。
③ さらに、重症喘息患者のためのウエブサイトを構築、適切な治療に必要な情報を興味のもてる形で提供するとともに、患者が抱える問題をPatient Reported Outcomeとして現実の生活から収集して、真の患者の立場に立った治療指針に活かす。
令和3年度は、ウェブサイトの内容を各自で執筆、原稿を完成されると共に、サイト作成業者の選定を行う。
令和4年度に小児アレルギー学会の協力を得て、ウェブサイトをアレルギーポータルに掲載する。患者のPROは、①のレジストリと歩調を合わせ、令和3年度に患者入力システムを構築し、令和3年度の後半から登録ができるようにする。
結果と考察
①に関して、研究計画書の作成並びに予備調査を行った。予備調査として、日本小児アレルギー学会、ならびに日本呼吸器学会の学会員にアンケート調査を行った。合計292名から回答が得られ、うち203名が生物学的製剤の使用経験があった。②に関しては、クリニカルクエスチョンの候補を挙げ、次年度のシステマチィックレビューに備えた。③に関しては、①の研究の一部として、患者入力用のフォームを作成した。また、患者向けの生物学的製剤の情報提供パンフレットの概要を決めた。
 日本小児アレルギー学会、日本呼吸器学会へのアンケート調査では、処方医から生物学的製剤の有効性が高く評価されていることが分った。使用薬剤に関しては、どちら両学会の会員(前者は小児科医、後者は内科医が主たる構成員)ともに、小児期、成人期ともにゾレアの処方割合が最も高かった。これは、ゾレアが上市されてからの期間が最も長いことが影響しているのかも知れない。一方、デュピクセントの適応年齢は12歳以上であるが、日本小児アレルギー学会の回答で、6-15歳でもゾレアについて処方が多かった。年齢的に適応のある患児は最も少ないにもかかわらず、選択が多いが、その理由としては、小児に使用可能な生物学的製剤として最初に在宅自己注射が認められたことが挙げられる。加えて、小児の難治性喘息ではアトピー性皮膚炎を合併していることが多いが、デュピクセントがアトピー性皮膚炎への適応を有することも影響していると考えた。一方処方をためらう理由としては、医療費の増加が、小児期では2番目に、成人では最も高く、生物学的製剤の価格が治療への障壁となる可能性が改めて示された。
 小児アレルギー学会へのアンケートによる都道府県別の対象患者の数には、大きな地域差が存在した。学会員を対象としたアンケートであるため、会員の偏在、専門医の偏在の影響があると思われる。喘息のコントロール状態の地域差は、不明であるが、生物学的製剤を使用するような患者がいない地域は存在しないと類推される。従って、今回の調査からは、投与が必要な幹事に十分な治療を届けられていない可能性が示唆された。
小児から若年成人まで同じEDCを用いて生物学的使用について調査した研究は少なく、ACAGIスタディで得られる結果は臨床的に重要となると考えられる。
結論
学会へのアンケート調査により、今後の本格的調査のための、基礎となるデータを得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2022-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202113006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,500,000円
(2)補助金確定額
1,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,356,923円
人件費・謝金 2,348,497円
旅費 0円
その他 294,580円
間接経費 1,500,000円
合計 7,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-06-03
更新日
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