文献情報
文献番号
202113005A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患の多様性、生活実態を把握するための疫学研究
課題番号
20FE2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
足立 雄一(富山大学 学術研究部医学系小児科学)
研究分担者(所属機関)
- 吉田 幸一(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)
- 福家 辰樹(国立研究開発法人国立成育医療研究センター アレルギーセンター 総合アレルギー科)
- 福冨 友馬(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
- 高橋 亨平(独立行政法人国立病院機構相模原病院 小児科)
- 今野 哲(北海道大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野)
- 後藤 穣(日本医科大学医学部耳鼻咽喉科)
- 田中 暁生(広島大学大学院 医系科学研究科 皮膚科学)
- 手塚 純一郎(福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科)
- 松﨑 寛司(国立病院機構福岡病院 小児科)
- 長尾 みづほ(独立行政法人国立病院機構三重病院 臨床研究部)
- 中村 好一(自治医科大学 地域医療学センター公衆衛生学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2015年にアレルギー疾患対策基本法が成立し、国はアレルギー疾患対策を総合的に推進している。2017年のアレルギー疾患対策の推進に関する基本指針では、疫学研究によるアレルギー疾患の長期にわたる推移(自然史)の解明等良質なエビデンスの蓄積とそれに基づく定期的な診療・管理ガイドラインの改訂が必要であると示されており、アレルギー疾患の疫学調査は国の施策として重要である。これまで行われた厚生労働省研科学研究や学会等で全国規模の調査は疾患別・年齢別の調査であり、またアレルギー疾患が個々の患者で複数の疾患を合併することから、日本全体での有病率や年齢による有病率の推移について既存の疫学調査では明らかにすることができない。そこで、本研究では、新たな手法を用いて全年齢層を対象とした疫学研究の実効性ならびに有効性を明らかにするとともに、長年継続している西日本の小児を対象とした疫学調査を実施する。
研究方法
本研究班では、都道府県アレルギー疾患医療拠点病院と連携し、その職員とその家族を対象とした全年齢層におけるアレルギー疾患(気管支喘息、アレルギー性鼻炎結膜炎[花粉症]、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど)の有病率および合併率を明らかにし、我が国におけるアレルギー疾患の現状を把握すると共に、今後同手法を用いて経時的に評価することで有病率の推移を評価可能な疫学調査のベースを作成する。また、40年前から10年毎に行っている西日本小学児童調査を2022年に実施することで、日本における小児アレルギー疾患の長期的な推移を検討する。
結果と考察
調査は2021年12月15日から2022年1月29日にウェブアンケート形式で、調査開始時で拠点病院として登録されていた74施設のうち協力すると返答のあった56施設で実施した。回答者数は6973名で、回答率は15.3%であった。登録者は18887名で、解答が不十分であった181名を除く18706名を解析対象者とした(有効回答率99%)。女性がやや多く(56%)、職種では看護師、医師、事務職の順であった。また、年齢分布では、50代以下が多く、年齢の中央値は36歳であった。
全体の62.2%が何らかのアレルギー疾患に罹患しており、各疾患の有病率(医師に診断された/医師に診断された+されていないがそう思う)は、気管支喘息 12.9/14.7%、アトピー性皮膚炎 12.7/15.6%、食物アレルギー 4.1/11.4%、通年性アレルギー性鼻炎 19.4/27.5%、花粉症 27.0/39.0%、アレルギー性結膜炎 13.9/19.5%であり、金属アレルギーならびに薬物アレルギーの有病率(医師に診断された)はそれぞれ1.9と4.6%であった。疾患別の期間有症率は、喘息では10歳以下の小児と30~50代のピークが認めら、アトピー性皮膚炎では小児期にピークがあってそれ以降徐々に低下傾向であり、食物アレルギーでは20~40代にピークがあった。アレルギー性鼻炎(通年性+花粉症)では小児期と30~50代にピークがあり、季節としては春が多く、次いで秋にも小さいピークがあった。また、アレルギー性結膜炎ではアレルギー性鼻炎と同様の傾向であった。
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎・花粉症、アレルギー性結膜炎の期間有症率の結果は概ね過去の結果と一致し、本調査で用いた調査方法が妥当と考えられた。一方、食物アレルギーについては、鶏卵や牛乳に対する即時型食物アレルギーと口腔アレルギー症候群(花粉関連食物アレルギー)を合わせた結果となった。この両者はしばしば合併するため、どのように判別するのかが課題である。金属ならびに薬剤アレルギーについては、今回の調査では有病率(医師によって診断された)のみを調査した。金属アレルギーは20代から急増し、40代をピークにその後低下傾向を示し、多くは女性であった。また、薬物アレルギーは小児でも少数存在し、成人では4~7%台(40~50代がピーク)であった。過去に金属ならびに薬物アレルギーに関する全国的なデータはなく、今回の調査結果は貴重と考える。
西日本小学児童アレルギー有症率調査では、現時点での回収率は90%を超えており、有意義な結果が示せると考える。
全体の62.2%が何らかのアレルギー疾患に罹患しており、各疾患の有病率(医師に診断された/医師に診断された+されていないがそう思う)は、気管支喘息 12.9/14.7%、アトピー性皮膚炎 12.7/15.6%、食物アレルギー 4.1/11.4%、通年性アレルギー性鼻炎 19.4/27.5%、花粉症 27.0/39.0%、アレルギー性結膜炎 13.9/19.5%であり、金属アレルギーならびに薬物アレルギーの有病率(医師に診断された)はそれぞれ1.9と4.6%であった。疾患別の期間有症率は、喘息では10歳以下の小児と30~50代のピークが認めら、アトピー性皮膚炎では小児期にピークがあってそれ以降徐々に低下傾向であり、食物アレルギーでは20~40代にピークがあった。アレルギー性鼻炎(通年性+花粉症)では小児期と30~50代にピークがあり、季節としては春が多く、次いで秋にも小さいピークがあった。また、アレルギー性結膜炎ではアレルギー性鼻炎と同様の傾向であった。
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎・花粉症、アレルギー性結膜炎の期間有症率の結果は概ね過去の結果と一致し、本調査で用いた調査方法が妥当と考えられた。一方、食物アレルギーについては、鶏卵や牛乳に対する即時型食物アレルギーと口腔アレルギー症候群(花粉関連食物アレルギー)を合わせた結果となった。この両者はしばしば合併するため、どのように判別するのかが課題である。金属ならびに薬剤アレルギーについては、今回の調査では有病率(医師によって診断された)のみを調査した。金属アレルギーは20代から急増し、40代をピークにその後低下傾向を示し、多くは女性であった。また、薬物アレルギーは小児でも少数存在し、成人では4~7%台(40~50代がピーク)であった。過去に金属ならびに薬物アレルギーに関する全国的なデータはなく、今回の調査結果は貴重と考える。
西日本小学児童アレルギー有症率調査では、現時点での回収率は90%を超えており、有意義な結果が示せると考える。
結論
全国のアレルギー疾患医療拠点病院の職員ならびに家族2万人弱を対象として各アレルギー疾患に関する全国規模の全年齢調査を実施した。その結果の多くは、過去の断片的(特定の年齢群や特定の疾患、また一部の地域に限定)調査で得られた結果と同等であり、紙ベースでの大規模疫学調査が実施困難な現状では、今回の手法は新たな調査方法として有効であると考える。アレルギー疾患の発症予防、増悪予防、OQLの改善などを考える上では、定期的に得られた疫学データが不可欠であり、今後も継続的な調査が必要である。
公開日・更新日
公開日
2022-05-27
更新日
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