表皮水疱症の根治的治療法確立に関する研究

文献情報

文献番号
200834062A
報告書区分
総括
研究課題名
表皮水疱症の根治的治療法確立に関する研究
課題番号
H20-難治・一般-047
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 克人(大阪大学 医学系研究科遺伝子治療学)
研究分担者(所属機関)
  • 金倉 譲(大阪大学 医学系研究科血液腫瘍内科学)
  • 江副 幸子(大阪大学 附属病院未来医療センター)
  • 片山 一朗(大阪大学 医学系研究科情報統合医学・皮膚科学)
  • 橋本 公二(愛媛大学 医学系研究科皮膚科学)
  • 中神啓徳(大阪大学 医学系研究科遺伝子治療学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
表皮水疱症治療法としての骨髄間葉系幹細胞移植の妥当性を検証しつつ、先天性表皮水疱症の根治的治療法を確立することを目的として、研究班を組織した。
研究方法
玉井、中神は、栄養障害型表皮水疱症モデルマウス胎仔循環に骨髄細胞移植を施行し、移植骨髄細胞による表皮水疱症の病態改善効果を検討した。玉井、江副は、骨髄間葉系幹細胞移植による表皮水疱症治療臨床試験開始に向けて、実施計画書(案)を作成した。橋本は、骨髄細胞の採取・利用が困難な場合を想定し、骨髄以外の組織由来間葉系幹細胞を利用した治療法開発のための基礎的研究を進めた。今年度は、特に脂肪由来間葉系幹細胞の分離培養法を検討した。片山は、重症栄養障害型表皮水疱症で最も重篤な合併症である皮膚有棘細胞癌について、臨床症例における情報を基に病態を研究した。金倉は、他家間葉系幹細胞移植後の免疫応答制御のための基礎研究を進めた。特に今年度は、臍帯血由来造血幹細胞からBリンパ球への分化過程における間葉系幹細胞との相互作用を検討した。
結果と考察
玉井、中神は、栄養障害型表皮水疱症モデルマウスであるVII型コラーゲンノックアウトマウスに胎生循環骨髄移植を施行し、基底膜部位へのVII型コラーゲン供給と病態の改善を確認した。玉井、江副は、上述した研究内容を踏まえて、骨髄間葉系幹細胞移植臨床試験実施計画書(案)を作成した。橋本は、より安全かつ効率的に間葉系幹細胞を採取する方法論確立を目指して、脂肪組織由来間葉系幹細胞の採取・培養法を検討し、ヒト脂肪組織から10代以上の継代培養が可能な間葉系細胞の分離・培養法を確立した。片山は、皮膚有棘細胞癌を合併した重症栄養障害型表皮水疱症症例において、癌組織が産生する細胞増殖因子の探索を進め、癌組織でG-CSFおよびPTH-rPが極めて強く発現していることを明らかにした。金倉は、臍帯血由来CD34陽性細胞からBリンパ球への分化過程に対し、間葉系幹細胞が分化誘導作用を持つ因子を供給していることを明らかにした。
今年度の研究により、骨髄間葉系幹細胞移植による表皮水疱症治療の可能性が示された。これらの研究成果は、臨床試験実施計画書案の内容に反映された。
今後、これらの研究成果を現在作成中の臨床試験実施計画書作成により良く反映し、患者および骨髄細胞ドナーに対するより有効かつ安全な臨床試験を進める予定である。

結論
骨髄間葉系細胞移植が皮膚に線維芽細胞を供給し、表皮水疱症治療効果を発揮し得ることが初めて示されるとともに、臨床試験実施のために必要な基礎的研究情報が蓄積した。

公開日・更新日

公開日
2009-06-11
更新日
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