文献情報
文献番号
202113001A
報告書区分
総括
研究課題名
ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援に関する研究
課題番号
19FE1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
松井 利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
- 村島 温子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
- 森 雅亮(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 杉原 毅彦(聖マリアンナ医科大学 医学部)
- 川畑 仁人(聖マリアンナ医科大学 医学部)
- 川人 豊(京都府立医科大学 医学研究科)
- 小嶋 雅代(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部)
- 房間 美恵(宝塚大学 看護学部)
- 浦田 幸朋(つがる西北五広域連合 つがる総合病院 リウマチ科)
- 宮前 多佳子(東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター 医学部)
- 矢嶋 宣幸(昭和大学 医学部)
- 橋本 求(大阪市立大学 膠原病内科)
- 佐浦 隆一(大阪医科薬科大学 医学部 総合医学講座 リハビリテーション医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,385,000円
研究者交替、所属機関変更
なし
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、治療法の進歩により、関節リウマチ(RA)患者における疾患活動性の低下、関節破壊の抑制が認められている。その一方で、小児期から成人期への移行診療体制、職場や学校での生活や妊娠・出産に対する支援体制、高齢化が進む中での合併症対策など、ライフステージに応じた様々な課題への対処が求められている。最近改訂された「関節リウマチ診療ガイドライン2020」ではライフステージに関する記載が追加されたが、患者や家族に対する情報提供や支援体制の整備は十分でない。本研究の目的は、患者の社会的寛解をめざすために、医師、メディカルスタッフ、患者が協同し、RA患者の移行期、妊娠出産期、高齢期の各ライフステージにおける①診療・支援の実態およびアンメットニーズの把握、②患者支援を目的としたメディカルスタッフ向けガイドおよび資材の作成、③その普及活動を行うことである。
研究方法
本年度は、研究班全体として『メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド』の完成と普及活動を行うとともに、各ライフステージにおける課題の検討、および看護師のリウマチケアに関する課題の検討を行った。
結果と考察
主な結果は以下の通りである。
1)「メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド」(全144頁)が完成し、日本リウマチ学会のWebサイト上に無償で公開した(https://www.ryumachi-jp.com/medical-staff/life-stage-guide/)。
2)患者支援ガイド広報のための医療講演会『メディカルスタッフによるライフステージに応じた関節リウマチ患者支援を考える』をWeb開催した。また、日本リウマチ学会学術集会における関連シンポジウム開催や各種講演会の開催など様々な広報活動を行った。
3)患者支援ガイドおよびWeb講演会に関するアンケート結果より高い満足度と有益性を確認できた。
4) 今後都道府県に設立予定の「移行期医療支援センター」に、分野別拠点病院としての小児リウマチ担当施設を設置・併設するための基礎資料として有益なデータが得られた。
5)RA患者はRA罹患により希望する妊娠数を減らす可能性が示唆された。医療者サイドの認識不足・知識不足が影響した可能性も考えられるため、患者支援ツールや研修会などの教育体制構築が望まれる。
6) 高齢RA患者でも寛解達成が理想的治療目標であることが示唆されたが、グルココルチコイド継続による身体機能に関する負の側面は、中年期より前期高齢期、後期高齢期でより影響が大きくなると考えられ、ライフステージに応じた治療戦略の策定が重要であると考えられた。
7)早期の高疾患活動性高齢RAに対してMTXと分子標的薬を中心とした治療でT2Tを実践し疾患活動性をコントロールすることが高齢者においても重要であることを示す一方で、慢性肺疾患あるいは悪性腫瘍既往を有する高齢者の治療戦略を検討する必要があることが示された。
8)合併症を網羅的に評価し定量化することで、高齢RA 患者の身体機能を改善させるという観点から合併症の管理も重要であることが明らかとなった。
9) 悪性リンパ腫と固形腫瘍ではその既往により使用する生物学的製剤が異なっていた。腫瘍に対する薬剤の影響を推定して使い分けている可能性が考えられるが、今後その背景や影響を検討する必要がある。
10) 臨床現場でリウマチケア看護師が経験する困りごとは、コミュニケーション、理解、知識、システム、連携の5つの領域に分類された。患者、医療従事者、その他の関係者を含めた患者中心の多職種連携と協働の必要性が明らかとなった。
1)「メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド」(全144頁)が完成し、日本リウマチ学会のWebサイト上に無償で公開した(https://www.ryumachi-jp.com/medical-staff/life-stage-guide/)。
2)患者支援ガイド広報のための医療講演会『メディカルスタッフによるライフステージに応じた関節リウマチ患者支援を考える』をWeb開催した。また、日本リウマチ学会学術集会における関連シンポジウム開催や各種講演会の開催など様々な広報活動を行った。
3)患者支援ガイドおよびWeb講演会に関するアンケート結果より高い満足度と有益性を確認できた。
4) 今後都道府県に設立予定の「移行期医療支援センター」に、分野別拠点病院としての小児リウマチ担当施設を設置・併設するための基礎資料として有益なデータが得られた。
5)RA患者はRA罹患により希望する妊娠数を減らす可能性が示唆された。医療者サイドの認識不足・知識不足が影響した可能性も考えられるため、患者支援ツールや研修会などの教育体制構築が望まれる。
6) 高齢RA患者でも寛解達成が理想的治療目標であることが示唆されたが、グルココルチコイド継続による身体機能に関する負の側面は、中年期より前期高齢期、後期高齢期でより影響が大きくなると考えられ、ライフステージに応じた治療戦略の策定が重要であると考えられた。
7)早期の高疾患活動性高齢RAに対してMTXと分子標的薬を中心とした治療でT2Tを実践し疾患活動性をコントロールすることが高齢者においても重要であることを示す一方で、慢性肺疾患あるいは悪性腫瘍既往を有する高齢者の治療戦略を検討する必要があることが示された。
8)合併症を網羅的に評価し定量化することで、高齢RA 患者の身体機能を改善させるという観点から合併症の管理も重要であることが明らかとなった。
9) 悪性リンパ腫と固形腫瘍ではその既往により使用する生物学的製剤が異なっていた。腫瘍に対する薬剤の影響を推定して使い分けている可能性が考えられるが、今後その背景や影響を検討する必要がある。
10) 臨床現場でリウマチケア看護師が経験する困りごとは、コミュニケーション、理解、知識、システム、連携の5つの領域に分類された。患者、医療従事者、その他の関係者を含めた患者中心の多職種連携と協働の必要性が明らかとなった。
結論
以上、『メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド』が完成し、一般公開した。また、各ライフステージにおける課題および看護師のリウマチケアに関する課題が明らかとなった。医師、メディカルスタッフ、患者会が協働して、メディカスタッフを対象とした患者支援ガイドの作成および各ライフステージを意識した検討を行うことで、ライフステージに応じたRA患者支援、メディカスタッフに対する啓蒙活動の重要性および必要性を様々な視点で再認識し、共有することが出来た。
公開日・更新日
公開日
2022-05-27
更新日
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