新規拡張型心筋症モデルマウスを用いた拡張型心筋症発症機序の解明

文献情報

文献番号
200834059A
報告書区分
総括
研究課題名
新規拡張型心筋症モデルマウスを用いた拡張型心筋症発症機序の解明
課題番号
H20-難治・一般-044
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小室 一成(千葉大学大学院医学研究院 循環病態医科学)
研究分担者(所属機関)
  • 塩島一朗(大阪大学大学院医学系研究科 先進心血管治療学寄附講座)
  • 赤澤宏(千葉大学大学院医学研究院 循環病態医科学)
  • 東口治弘(千葉大学大学院医学研究院 循環病態医科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
拡張型心筋症の予後は、非常に不良であり、現在拡張型心筋症の最終的な治療法は心臓移植しかなく、新たな治療法の確立が切望されている。拡張型心筋症の原因の約30%が遺伝子変異であることが明らかとなってきたが、それらの遺伝子変異により収縮機能不全をきたす機序は未だ不明である。この発症機序の解明が新規の治療法の開発に必要であると考え、拡張型心筋症の発症機序を明らかにすることを本研究の目的とする。
研究方法
我々は最近、ヒトで報告されている変異型心筋αアクチン遺伝子を心臓特異的に過剰発現させた遺伝子改変マウスを作成し、拡張型心筋症モデルを確立した。これまでの予備的な研究で,拡張型心筋症モデルマウスでカルシウム依存性脱リン酸化酵素calcineurinとリン酸化酵素CaMKIIδの活性が亢進し、癌抑制遺伝子p53の発現量が増加していることを見いだしていた。これらの活性化および蛋白量の増加の重要性を検討するため、calcineurinとCaMKIIδのそれぞれの阻害薬の投与およびp53ヘテロノックアウトマウスとの交配を行った。
結果と考察
calcineurin阻害薬であるFK506の投与では、拡張型心筋症モデルマウスの心機能の低下は改善しなかったが、CaMKIIδ阻害薬であるKN-93の投与およびp53ヘテロノックアウトマウスとの交配により拡張型心筋症モデルマウスの心機能低下は改善した。また。変異型心筋αアクチン遺伝子を培養心筋細胞に遺伝子導入すると、CaMKIIδとp53の発現が増加した。以上の結果より、CaMKIIδとp53が遺伝子変異より拡張型心筋症発症にいたる分子機構に非常に重要であることが示唆された。しかし、CaMKIIδを活性化させる機序やp53を増加させる機序に関して、またそれぞれの因子が心機能を低下させる機序に関しても不明である。今後の2年間でこれらの機序を検討していく予定である。
結論
遺伝子変異による拡張型心筋症の発症にCaMKIIδの活性化とp53の蛋白量の増加が重要であることが明らかとなった。今後、両因子を標的とした治療が拡張型心筋症の治療となり得る可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-13
更新日
-