文献情報
文献番号
202112003A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性腎臓病患者(透析患者等を含む)に特有の健康課題に適合した災害時診療体制の確保に資する研究
課題番号
20FD1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
山川 智之(公益社団法人 日本透析医会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
今後、首都直下地震や南海トラフ巨大地震など透析医療に大きな影響を与えると思われる災害も想定され、これまでの経験や蓄積を生かしつつ、透析医療の災害時診療体制をより高いレベルで整備する必要がある。
令和3年度の本研究は、令和2年度の本研究の成果を踏まえて、災害時における実態調査を中心に行った。
令和3年度の本研究は、令和2年度の本研究の成果を踏まえて、災害時における実態調査を中心に行った。
研究方法
令和3年度の本研究においては、次の調査研究を行った。
1.日本透析医会支部に対しての災害対策に関する活動状況等についてアンケート調査
2.日本透析医会会員施設に対しての災害時における透析実施継続のための準備の現状についてのアンケート調査
3.NPO法人東京腎臓病協議会とNPO法人兵庫県腎友会を通じてそれぞれの会員を対象とした透析患者の災害に関する準備等に関してのアンケート調査
4.埼玉県と東京都における災害時透析医療提供確保体制の構築について、情報共有システムの構築やマニュアルの整備も含めて経緯と現時点の状況についての調査
5.災害時における医薬品および医療資材に関する供給体制の概要についての調査
6.都道府県をまたいだ災害対応に対する訓練事例についての調査
7.災害発生時の医療者と透析患者のメンタルヘルスについての事例の研究
8.都道府県日本臨床工学技士会が任命している災害情報コーディネーターに対しての災害時の情報共有ならびに行政との連携に関しての調査
1.日本透析医会支部に対しての災害対策に関する活動状況等についてアンケート調査
2.日本透析医会会員施設に対しての災害時における透析実施継続のための準備の現状についてのアンケート調査
3.NPO法人東京腎臓病協議会とNPO法人兵庫県腎友会を通じてそれぞれの会員を対象とした透析患者の災害に関する準備等に関してのアンケート調査
4.埼玉県と東京都における災害時透析医療提供確保体制の構築について、情報共有システムの構築やマニュアルの整備も含めて経緯と現時点の状況についての調査
5.災害時における医薬品および医療資材に関する供給体制の概要についての調査
6.都道府県をまたいだ災害対応に対する訓練事例についての調査
7.災害発生時の医療者と透析患者のメンタルヘルスについての事例の研究
8.都道府県日本臨床工学技士会が任命している災害情報コーディネーターに対しての災害時の情報共有ならびに行政との連携に関しての調査
結果と考察
都道府県透析医会(以下「支部」という。)に対する調査では、活動状況について支部間に大きな差がある。支部の役割は、当該地域における情報共有と集約を行うことと行政との協議を行うことであるが、これらを推進するためにも一層の災害対策事業に対する啓発、人材育成に取り組んでいく必要性がある。
透析施設に対する調査では、断水時の給水や緊急時の通信手段、規制除外車両などについては一層の周知が必要である。
透析患者に対する調査では、今後、施設と連携しながら患者に対する災害に対する備えの必要性と具体的な提案について、一層の啓発が必要である。
埼玉県と東京都については、先進的な取り組みをしており、本研究では先進事例として紹介したが、現在、支部の災害時透析医療対策事業の活動は、地域によって大きな差があるため、行政とも連携しながら支部の活動の活性化を促していきたい。
災害時における医薬品および医療機器・医療材料に関する供給については、今後の様々な災害想定に基づき検討、点検が必要である。
透析医療の災害時医療提供体制に係る地域連携については、地域差はあるものの全体として取り組みが遅れており、今後、先進事例を参考に連携を強化していく必要がある。
東日本大震災では、患者も医療従事者も被災者となり、メンタルヘルスを損ないやすい状況が生じたが、この点についても災害対策の中で遅れている分野であり、引き続き検討が必要である。
各都道府県臨床工学技士会の災害情報コーディネーターの活動状況や行政等との連携の状況については、かなり地域によって差が大きい。行政や他団体との連携についても、地域差が大きく、日本臨床工学技士会とともに啓発や人材育成に力を入れていく必要がある。
透析施設に対する調査では、断水時の給水や緊急時の通信手段、規制除外車両などについては一層の周知が必要である。
透析患者に対する調査では、今後、施設と連携しながら患者に対する災害に対する備えの必要性と具体的な提案について、一層の啓発が必要である。
埼玉県と東京都については、先進的な取り組みをしており、本研究では先進事例として紹介したが、現在、支部の災害時透析医療対策事業の活動は、地域によって大きな差があるため、行政とも連携しながら支部の活動の活性化を促していきたい。
災害時における医薬品および医療機器・医療材料に関する供給については、今後の様々な災害想定に基づき検討、点検が必要である。
透析医療の災害時医療提供体制に係る地域連携については、地域差はあるものの全体として取り組みが遅れており、今後、先進事例を参考に連携を強化していく必要がある。
東日本大震災では、患者も医療従事者も被災者となり、メンタルヘルスを損ないやすい状況が生じたが、この点についても災害対策の中で遅れている分野であり、引き続き検討が必要である。
各都道府県臨床工学技士会の災害情報コーディネーターの活動状況や行政等との連携の状況については、かなり地域によって差が大きい。行政や他団体との連携についても、地域差が大きく、日本臨床工学技士会とともに啓発や人材育成に力を入れていく必要がある。
結論
令和3年度の研究結果から、多くの透析施設や団体として積極的な活動や連携がなされている一方で、活動の地域差がかなり大きいことがわかった。
本研究で先行事例として取り上げた埼玉県や東京都の支部のように、急速に活動を充実させている支部のノウハウも紹介しながら、人材育成と災害対策事業の啓発によって地方組織の活動の活性化を目指していきたい。
厚生労働省や各自治体等の行政組織とも協力・連携して地域の災害対策事業を活性化していきたい。さらに都道府県間の連携、本会と日本臨床工学技士会の今後さらなる連携強化が必要である。
透析患者の災害に対する意識については、被災時に透析患者が施設にいる可能性は低く、被災時の初動については患者の意識や知識に左右されることが大きいのは自明である。今後、特に透析患者を含む慢性腎不全患者に対する啓 発が大きな課題である。
透析医療については、大規模災害時においては医療者主体での災害対応について限界があり、複数の施設が被災し透析の実施が不可能になった場合に、どうしても行政に頼らざるを得ない点として、一つは断水と停電といったインフラの問題に対する対応、二つ目は支援施設への患者搬送、三つ目は被災透析患者の避難場所の確保、四つ目は被災透析患者の生活支援である。
本研究では、災害時の透析医療継続のための様々な準備に関する調査を行うとともに、いくつかの先進事例について取り上げた。これらの結果から導き出された課題について、令和4年度の本研究において提言に結びつけていきたい。
本研究で先行事例として取り上げた埼玉県や東京都の支部のように、急速に活動を充実させている支部のノウハウも紹介しながら、人材育成と災害対策事業の啓発によって地方組織の活動の活性化を目指していきたい。
厚生労働省や各自治体等の行政組織とも協力・連携して地域の災害対策事業を活性化していきたい。さらに都道府県間の連携、本会と日本臨床工学技士会の今後さらなる連携強化が必要である。
透析患者の災害に対する意識については、被災時に透析患者が施設にいる可能性は低く、被災時の初動については患者の意識や知識に左右されることが大きいのは自明である。今後、特に透析患者を含む慢性腎不全患者に対する啓 発が大きな課題である。
透析医療については、大規模災害時においては医療者主体での災害対応について限界があり、複数の施設が被災し透析の実施が不可能になった場合に、どうしても行政に頼らざるを得ない点として、一つは断水と停電といったインフラの問題に対する対応、二つ目は支援施設への患者搬送、三つ目は被災透析患者の避難場所の確保、四つ目は被災透析患者の生活支援である。
本研究では、災害時の透析医療継続のための様々な準備に関する調査を行うとともに、いくつかの先進事例について取り上げた。これらの結果から導き出された課題について、令和4年度の本研究において提言に結びつけていきたい。
公開日・更新日
公開日
2022-05-24
更新日
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