プロスタグランジン-I2合成酵素遺伝子を用いた肺動脈性肺高血圧症に対する新規治療法の開発

文献情報

文献番号
200834058A
報告書区分
総括
研究課題名
プロスタグランジン-I2合成酵素遺伝子を用いた肺動脈性肺高血圧症に対する新規治療法の開発
課題番号
H20-難治・一般-043
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
福田 恵一(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 徹(慶應義塾大学 医学部 )
  • 川上 崇史(慶應義塾大学 医学部 )
  • 片岡 雅晴(慶應義塾大学 医学部 )
  • 田邉 忠(慶應義塾大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肺動脈性肺高血圧症に対する遺伝子治療法確立を目的として、GMPレベルのPGIS-AAVベクターを工業レベルで生産する仕組みを確立した。ベクターの作成効率、安全性・有効性を検討し、前臨床試験として使用するコモンマーモセットサルの原発性肺高血圧モデルを安定的に作出する方法の確立を試みた。
研究方法
1)GMPレベルでのAAV-PGISの作成
AAV-PGISの作製は既にこれまでの実験室レベルで安定的に作製できるが、これをGMPレベルで作製するための条件整備を行う。GMPレベルの大量のベクター作製はディナベック株式会社の共同開発を行い、中国国内で安定してGMPレベルのベクター作製する会社を調査すると共に、実際に中国に行って工場、研究所を視察した。また、依頼した会社と生産量-コストの関係を明らかにし、作成価格の交渉を行った。

(2)サルを用いた肺動脈性肺高血圧症モデルの作成
エステル型モノクロタリンを用いてマーモセットサル10匹に肺高血圧モデルを作成した。経時的に心エコーを施行し、右室肥大の進行程度を観察した。1ヶ月および2ヶ月後にイソフルレンにて吸入麻酔下に、肺動脈圧、右室圧、左室圧を測定した。肺、心臓を摘出し、肺小動脈壁厚、右室重量、左室重量、心体重比等を計測した。右心肥大を呈した心筋の遺伝子発現を解析した。
結果と考察
(1)GMPレベルでのAAV-PGISの作成
工業レベルで遺伝子治療ベクターを作成するため、共同開発企業のディナベック社と中国北京にある本元正阻基因技術有限公司とGMPレベルでのベクター作成契約を行った。タイプ1型、タイプ2型のアデノ随伴ウイルスウイルスベクターを作成した。組織での発現効率を見るため、GFP発現ベクターを作成した。

(2)サルを用いた肺動脈性肺高血圧症モデルの作成
モノクロタリン自身は前駆物質であり、体内にはいるとエステル型に変化し、活性型になる。サルではモノクロタリンによる肺高血圧の出来方に大きな個体差があったが、エステル型を使用することにより安定して肺高血圧モデルの作出が可能となった。個体間に差が無く肺高血圧が出来るようになったが、エステル型モノクロタリンは作用が極めて強いため、投与量を減少する必要があることが明らかとなった。
結論
プロスタグランジンI2合成酵素のアデノ随伴ウイルスのGMP生産拠点を確保した。ベクター作成にはタイプ1型と2型の両者を用意し、作成効率、投与効果の評価を次年度以後に行うことにした。前臨床試験として使用するコモンマーモセットサルの原発性肺高血圧モデルを安定的に作出する方法を確立することに成功した。

公開日・更新日

公開日
2009-05-27
更新日
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