スモンに関する調査研究

文献情報

文献番号
200834049A
報告書区分
総括
研究課題名
スモンに関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-034
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小長谷 正明(独立行政法人国立病院機構鈴鹿病院 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 昭久(市立札幌病院 神経内科)
  • 鈴木 裕(日本大学医学部 神経内科学分野)
  • 服部 直樹(名古屋大学医学部附属病院 神経内科)
  • 小西 哲郎(独立行政法人国立病院機構宇多野病院)
  • 井原 雄悦(独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター 臨床研究部)
  • 藤井 直樹(独立行政法人国立病院機構大牟田病院 神経内科)
  • 橋本 修二(藤田保健衛生大学医学部 衛生学講座)
  • 千田 圭二(独立行政法人国立病院機構岩手病院)
  • 乾 俊夫(独立行政法人国立病院機構徳島病院 神経内科)
  • 久留 聡(独立行政法人国立病院機構鈴鹿病院 神経内科)
  • 齋藤 由扶子(独立行政法人国立病院機構東名古屋病院 神経内科)
  • 武藤 多津郎(藤田保健衛生大学医学部 神経内科)
  • 矢部 千尋(京都府立医科大学医学研究科)
  • 山田 淳夫(独立行政法人国立病院機構呉医療センター 神経内科)
  • 野村 宏(財団法人広南会広南病院)
  • 寳珠山 稔(名古屋大学医学部 保健学科)
  • 朝比奈 正人(千葉大学医学部附属病院 神経内科)
  • 蜂須賀 研二(産業医科大学医学部 リハビリテーション医学)
  • 池田 修一(信州大学医学部内科学脳神経内科)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院 神経内科)
  • 藤村 晴俊(独立行政法人国立病院機構刀根山病院 神経内科)
  • 水落 和也(横浜市立大学附属病院 リハビリテーション科)
  • 溝口 功一(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター神経内科 )
  • 阿部 康二(岡山大学医歯学総合研究科神経病態内科学)
  • 糸山 泰人(東北大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 犬塚 貴(岐阜大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 上野 聡(奈良県立医科大学 神経内科)
  • 大井 清文(いわてリハビリテーションセンター 神経内科)
  • 大越 教夫(筑波技術大学保健学部 保健学科)
  • 大竹 敏之(東京都保健医療公社荏原病院 神経内科)
  • 岡本 幸市(群馬大学大学院医学系研究科 脳神経内科)
  • 片桐 忠(山形県立河北病院 神経内科)
  • 川井 元晴(山口大学医学部附属病院 神経内科)
  • 楠 進(近畿大学医学部 神経内科)
  • 熊本 俊秀(大分大学医学部 脳・神経機能統御講座)
  • 栗山 勝(福井大学医学部附属病院 神経内科)
  • 嶋田 豊(富山大学大学院 医学薬学研究部)
  • 杉浦 嘉泰(福島県立医科大学医学部 神経内科)
  • 杉本 精一郎(独立行政法人国立病院機構宮崎東病院)
  • 園部 正信(大津市民病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
84,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
スモン患者恒久対策のために全国検診を行い、神経学的および全身的病態、療養や福祉サービス状況を調査し、実態を明らかにする。対症療法の開発や療養状況の悪化予防、神経障害患者の予後の縦断的検討、および薬害防止の為の各種啓発活動を行う。
研究方法
各班員が検診を行い、検診結果を集計し、医学的・福祉的状況を解析し、問題点を抽出した。また、検診時に認知症スコアのMMSEを同時に測定し、スモン患者の認知症について全国的に集計し、解析した.
 キノホルム神経毒性の基礎的検討を、培養細胞を用いておこなった。
結果と考察
データ解析に同意した検診受診者911例は、男女比245:666、平均年齢76.1で、後期高齢者増加が顕著であった。高度視力障害7%、杖歩行以下の歩行障害55%、中等度以上の異常感覚72%であった。身体的合併症は99%にあり、精神徴候は54%、認知症は7%であった。障害度が極めて重度5%,重度22%であり、障害要因はスモン+合併症が60%以上を占めた。介護保険は44%が申請し、要介護4と5は5%であった.727例のMMSEは健常人より有意に低かったが、介護度への有意な影響は認知機能ではなく、ADL能力にあった.
 キノホルムの神経毒性はNGFのシグナル伝達系の抑制や、細胞増殖に必要なSuperoxide産生をするNOX4の発現抑制による可能性が示唆された。病理例では、中枢・末梢とも遠位優位の感覚神経軸索脱落が見られたが,特に末梢神経においては再生性の機転に乏しかった. MRIトラクトグラフィーでは、錐体路・視覚関連線維とも左右差なく描出された。
データベース化は、1988年から1991年までの延べ人数4252人分と2008年分のデータの入力を行い、20年以上の縦断的検討を可能とした.
 過去の検診データより、208人6.7%に230回の大腿骨頸部骨折が抽出され、60歳代以下では対照より高頻度であった。転倒恐怖尺度はBarthel Indexとの間に有意な負の相関を認め、日常生活動作の自立度低下には転倒恐怖の存在が関連していた。スモン患者のQOLには感覚障害と基本的ADL能力が関与している可能性が示唆された.
患者や医療/福祉従事者を対象に『スモンの集い』を行った。
結論
高齢化にともない、スモン患者での認知機能低下や四肢機能悪化例が増加しており、身体的、福祉的状況の維持には、医療はもとより基本的ADLを維持・向上するための生活指導やリハビリテーションの実施が重要である。また、今後、介護の必要性が高まると予想され、対応が必要である.

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-