文献情報
文献番号
202111065A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20FC2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
山田 正仁(国家公務員共済組合連合会 九段坂病院)
研究分担者(所属機関)
- 水澤 英洋(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
- 高尾 昌樹(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院臨床検査部)
- 齊藤 延人(東京大学医学部附属病院)
- 北本 哲之(東北大学 大学院医学系研究科)
- 阿江 竜介(自治医科大学医学部)
- 金谷 泰宏(東海大学医学部基盤診療学系臨床薬理学)
- 原田 雅史(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
- 佐藤 克也(長崎大学医歯薬総合研究科第一内科)
- 村山 繁雄(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
- 太組 一朗(聖マリアンナ医科大学 医学部脳神経外科学、てんかんセンター)
- 矢部 一郎(北海道大学大学院医学研究院)
- 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
- 小野寺 理(国立大学法人新潟大学 脳研究所脳神経内科学分野)
- 三條 伸夫(東京医科歯科大学医学部付属病院)
- 村井 弘之(国際医療福祉大学医学部神経内科学)
- 塚本 忠(国立精神・神経センター武蔵病院神経内科)
- 田中 章景(横浜市立大学 大学院医学研究科)
- 濱口 毅(金沢大学附属病院神経内科)
- 道勇 学(名古屋大学大学院医学系研究科)
- 望月 秀樹(大阪大学大学院医学系研究科)
- 山下 徹(岡山大学 脳神経内科学)
- 松下 拓也(九州大学大学院医学研究院神経内科学)
- 高橋 良輔(京都大学 大学院医学研究科・臨床神経学)
- 桑原 聡(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院神経内科学)
- 﨑山 快夫(自治医科大学 総合医学第1講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
59,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
稀少かつ致死性感染症であるプリオン病の発症・感染機序の解明・克服をめざし、①全例サーベイランスによる疫学的研究を通じて、わが国における発生状況や新たな医原性プリオン病の出現を監視し、②遺伝子・髄液検査の普及、画像診断の改良、患者・家族への心理カウンセリング等の支援を進め、③プリオン対応の滅菌法も含めた感染予防ガイドラインの改訂を進め、④手術後にプリオン病と判明した事例を調査して、二次感染対策をとるとともにリスク保有可能性者のフォローアップを行い、⑤プリオン病の臨床研究コンソーシアムJACOPと協力してプリオン病の自然歴を解明し、開発中の治療薬・予防薬の全国規模の治験研究を支援する。
研究方法
全国を10地区に分けて地区サーベイランス委員を配置し、脳神経外科、各種検査(遺伝子、髄液、画像、脳波、病理)とカウンセリングの専門委員を加えてサーベイランス委員会を組織し、各都道府県のプリオン病担当専門医と協力して全例調査をめざす。プリオン蛋白質遺伝子検索と病理検索、画像読影、髄液14-3-3蛋白質・タウ蛋白質の測定、RT-QuIC法などの診断支援を提供し、検査の感度・特異度、診断精度の向上を図る。インシデント委員会を組織し、疑い事例を評価し該当事例に対する対策とリスク保有可能性者のフォローを支援する。
結果と考察
サーベイランス委員会は、平成11年4月の発足より令和4年2月までに6312例を検討し4321例をプリオン病と認定し、本邦におけるプリオン病の実態を明らかにした。その内訳は、孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病 (Creutzfeldt-Jakob disease: CJD) 3289例(76%)、1例の変異型CJD、硬膜移植後CJD 93例 (2%)、遺伝性CJD 757例 (18%)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病 (GSS)158例 (4%)、致死性家族性不眠症4例であった。令和3年度プリオン蛋白質遺伝子解析を行った313例中80例に変異を認め、V180I変異が54例で最多であった。
脳波のPSD (周期性同期性放電)はプリオン病全体60%、孤発性CJD70%、遺伝性CJD 24%、硬膜移植後CJD 61%で出現し、PSD非出現群に比べて出現群ではMRI異常高信号が大脳皮質と基底核の両方に出現しやすかった。これまでに蓄積された4153症例の髄液研究では、孤発性CJDの髄液中のバイオマーカー (14-3-3蛋白質WB/ELISA、総タウ蛋白質、RT-QuIC法)の感度は79.3%/81.4%、80.1%、70.6%、特異度は81.2%,/80.4%、86.4%、97.6%で、RT-QUIC法での擬陽性が25例あった。
平成29年度に運用を開始した自然歴調査とサーベイランス研究の一体化を令和3年度も推進し、委員会での討議をすべてPCとタブレット端末によるWeb会議で行うことができた。未回収例の解消に努め、着実な進捗が見られた。新規インシデント事例は2件であった。いずれも脳生検術を行った事案であった。令和3年末までの全20件のうち11事例で10年間のフォローアップ期間が終了し、二次感染事例は確認されていない。
当研究で得られた最新情報は、学会や論文での発表だけでなく直ちにプリオン病のサーベイランスと感染対策に関する全国担当者会議あるいはホームページなどを通じて周知され、適切な診断法、治療・介護法、感染予防対策の普及に大きく貢献している。
脳波のPSD (周期性同期性放電)はプリオン病全体60%、孤発性CJD70%、遺伝性CJD 24%、硬膜移植後CJD 61%で出現し、PSD非出現群に比べて出現群ではMRI異常高信号が大脳皮質と基底核の両方に出現しやすかった。これまでに蓄積された4153症例の髄液研究では、孤発性CJDの髄液中のバイオマーカー (14-3-3蛋白質WB/ELISA、総タウ蛋白質、RT-QuIC法)の感度は79.3%/81.4%、80.1%、70.6%、特異度は81.2%,/80.4%、86.4%、97.6%で、RT-QUIC法での擬陽性が25例あった。
平成29年度に運用を開始した自然歴調査とサーベイランス研究の一体化を令和3年度も推進し、委員会での討議をすべてPCとタブレット端末によるWeb会議で行うことができた。未回収例の解消に努め、着実な進捗が見られた。新規インシデント事例は2件であった。いずれも脳生検術を行った事案であった。令和3年末までの全20件のうち11事例で10年間のフォローアップ期間が終了し、二次感染事例は確認されていない。
当研究で得られた最新情報は、学会や論文での発表だけでなく直ちにプリオン病のサーベイランスと感染対策に関する全国担当者会議あるいはホームページなどを通じて周知され、適切な診断法、治療・介護法、感染予防対策の普及に大きく貢献している。
結論
プリオン病サーベイランス事業の継続により、わが国におけるプリオン病の疫学的特徴を明らかにした。診断に必要な画像・脳波・遺伝子・髄液バイオマーカーの諸検査の重要性を明らかにし、インシデント事例の発生に対応し二次感染予防に努め、診療と感染予防の2つのガイドラインの普及啓発を進めた。自然歴調査とサーベイランス調査の一体化とともに、調査データのデジタル化を推進した。
公開日・更新日
公開日
2022-06-09
更新日
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