難治性膵疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
200834042A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性膵疾患に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-027
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
下瀬川 徹(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中雅夫(九州大学大学院医学研究院)
  • 武田和憲(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター)
  • 片岡慶正(京都府立医科大学大学院)
  • 竹山宜典(近畿大学医学部)
  • 広田昌彦(熊本地域医療センター医師会病院、熊本大学医学部附属病院 (兼務))
  • 伊藤鉄英(九州大学大学院)
  • 木原康之(産業医科大学)
  • 成瀬 達(三好町民病院)
  • 岡崎和一(関西医科大学)
  • 西森 功(高知大学医学部附属病院)
  • 乾 和郎(藤田保健衛生大学坂文種報德會病院)
  • 峯 徹哉(東海大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 重症急性膵炎、慢性膵炎、自己免疫性膵炎、膵嚢胞線維症の実態を疫学的に調査し、調査結果をもとに適切な診療指針を確立すること、また、これら難治性膵疾患の成因や病態を解明することを目的とした。
研究方法
 層化無作為抽出法により、重症急性膵炎、慢性膵炎、自己免疫性膵炎、膵嚢胞線維症の全国疫学調査を行う。多施設共同研究や介入試験を計画し、最適な診断法や治療法を確立するための科学的根拠を形成する。急性膵炎の重症化機序、慢性膵炎や膵嚢胞線維症の遺伝的因子、慢性膵炎の線維化機序、自己免疫性膵炎の病因について基礎的検討を行い、病因や病態の解明を目指す。
結果と考察
 急性膵炎の2007年の受療患者数を58,474人と推定し、2003年調査の35,300人に比べて顕著に増加していることを明らかにした。重症急性膵炎医療費受給者証交付申請状況の調査を行い、新規受給者数が増加、更新患者が減少していることを明らかにした。また、重症急性膵炎患者診療におけるDPC算定と出来高算定の比較を行い、重症例ではDPC算定が不利であることを明らかにした。急性膵炎の早期診断法確立のため尿中trypsinogen 2の有用性に関する多施設共同研究を計画し、壊死性膵炎の早期予知法としてperfusion CTの有用性に関する基礎検討を行った。急性膵炎の搬送基準、高次医療施設要件を提案し、急性膵炎の栄養と腸管対策に関する指針を提案した。
 慢性膵炎の2007年1年間の受療患者数を44,100人と推定し、2002年調査の45,200人に比べて大きな増減がないことを明らかにした。早期慢性膵炎の疾患概念を取り入れた臨床診断基準改訂案を提案した。膵性糖尿病全国調査の最終報告を行い、合併症の頻度と予後を明らかにした。また、膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドラインを作成した。慢性膵炎の遺伝的背景を解析し、新たにPRSS2遺伝子の関与を明らかにした。
 自己免疫性膵炎の2007年1年間の受療患者数を約3,000人と推定し、2002年に比べて約1.76倍に増加している可能性を示した。自己免疫性膵炎の診療ガイドラインを作成し、ステロイド維持療法の有用性に関する多施設共同ランダム化比較試験を計画した。
 膵嚢胞性線維症の第4回全国疫学調査の準備を進めた。
結論
 本研究班の初年度であったが、急性膵炎、重症急性膵炎、慢性膵炎、自己免疫性膵炎のわが国における最近の状況を明らかに出来た。また、最適な診療体系の形成に向けて、臨床診断基準の改訂、いくつかの診療ガイドラインの作成を進めることができた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-