網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究

文献情報

文献番号
200834034A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-019
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小椋 祐一郎(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 新家 眞(東京大学 大学院医学研究科)
  • 石橋 達朗(九州大学 大学院医学研究科)
  • 坂本 泰二(鹿児島大学 大学院医学研究科)
  • 白神 史雄(香川大学 大学院医学研究科)
  • 田野 保雄(大阪大学 大学院医学研究科)
  • 寺崎 浩子(名古屋大学 大学院医学研究科)
  • 村上 晶(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 山本 修一(千葉大学 大学院医学研究科)
  • 湯沢 美都子(日本大学 大学院医学研究科)
  • 吉村 長久(京都大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性・進行性で視力予後不良な疾患である加齢黄斑変性、網膜色素変性症などの網膜脈絡膜萎縮をきたす疾患群と視神経萎縮をきたす疾患群を対象としてその実態調査、病態解明、治療法開発を目的とする。
研究方法
(1)加齢黄斑変性は高齢者の主要な失明原因であり近年増加傾向にある重大疾患であるが、光線力学的療法(PDT)に加え、最近、抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法が導入され、併用療法を含めると治療方法に多様性が生じているため、いずれの治療がより有効であるか検討した。また病態解明のための基礎研究も進めている。(2)網膜色素変性症は遺伝性の網膜変性疾患であるが、日本人特有の遺伝子異常が報告されており、遺伝子治療や神経保護治療に向けての基礎となる遺伝子データベースの構築を目指す。また、遺伝子治療の開発を進めている。(3)視神経萎縮は緑内障を始めいろいろな病態で発症し、不可逆的障害を残す。視神経萎縮の進行阻止のための神経保護治療の開発と、失われた視機能の回復を目的とした幹細胞による網膜再生治療と人工視覚の開発を行っている。
結果と考察
(1)加齢黄斑変性:正常脈絡膜循環への影響を抑えるために低照射エネルギーPDTの有用であった。さらに、抗VEGF薬、ステロイド、PDTの併用療法は難治性のタイプにも有効である可能性が確認された。(2)網膜色素変性症:多施設で得た患者検体を1施設へ集約・解析するシステムを構築中である。長期発現型のサル由来レンチウイルスベクターによる遺伝子導入の動物実験における長期安全性が示され臨床試験の準備中である。(3)視神経萎縮や網膜変性:幹細胞から網膜の細胞への分化誘導や一定条件下での動物網膜への移植細胞の生着が可能となった。人工視覚については、埋植電極の耐久性、組織への安全性が示され今後も臨床応用に向けて開発を進める。
結論
加齢黄斑変性に対しては、PDT、抗VEGF療法を中心に一定の治療効果が得られるようになってきた。今後、さらに有効な治療法や予防法開発のための臨床研究、病態解明が進むものと思われる。網膜色素変性や視神経萎縮においては、原因遺伝子の解析やデータベースの構築が進められ、また、遺伝子導入療法も臨床応用に向けて開発中である。萎縮した網膜や視神経の再生医療や人工視覚の臨床応用は、失明患者が熱望するものであり、今後も進展を目指す必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-