原発性高脂血症に関する調査研究

文献情報

文献番号
200834026A
報告書区分
総括
研究課題名
原発性高脂血症に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
山田 信博(筑波大学 大学院人間総合科学研究科 内分泌代謝・糖尿病内科)
研究分担者(所属機関)
  • 及川 眞一(日本医科大学 内科学)
  • 横山 信治(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 白井 厚治(東邦大学医療センター佐倉病院 糖尿病・内分泌・代謝センター)
  • 石橋 俊 (自治医科大学 内科学講座)
  • 太田 孝男(琉球大学医学部育成医学)
  • 武城 英明(千葉大学大学院医学研究院)
  • 山下 静也(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 後藤田 貴也(東京大学大学院医学系研究科)
  • 林 登志雄(名古屋大学医学部付属病院)
  • 荒井 秀典(京都大学大学院医学研究科)
  • 小林 淳二(金沢大学大学院医学系研究科)
  • 斯波 真理子(国立循環器病センター バイオサイエンス部)
  • 衛藤 雅昭(奥羽大学薬学部)
  • 曽根 博仁(お茶の水女子大学大学院人間文化創生科学研究科)
  • 鈴木 浩明(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
原発性高脂血症の実態調査と診断指針の作成および、原発性高脂血症に関連するゲノム解析を主要課題として研究を展開し、我が国の原発性高脂血症診療の標準化と患者の予後向上を目指す。
研究方法
新FH診断基準の感度・特異度、急性冠症候群(ACS)患者におけるFHの頻度、プロブコールがFHヘテロ接合体患者の心血管疾患(CVD)発症に与える影響について解析した。脂肪負荷後のトリグリセリド(TG)の増加量と冠動脈狭窄の有無との関係を検討した。また、日本人2型糖尿病(T2DM)コホートを用いて、non-HDL-Cについて検証を行った。小児検診受診児を対象に、血清脂質とインスリン抵抗性および肥満との関連について検討した。原発性高脂血症に関する遺伝子異常のデータベースのアップデートを行った。一遺伝子塩基多型(SNP)と脂質異常・動脈硬化との関連について検討した。
結果と考察
LDL受容体(LDLR)遺伝子変異を有する患者を対象とした場合、LDLR活性以外の項目でFHを診断する感度は約100%、特異度は50から60%であった。FHの定義をLDLR遺伝子異常とするのか、LDLR活性の低下による遺伝性の高コレステロール血症とするのか、今後検討が必要と考えられた。ACS患者におけるFHが疑われる症例は25%で、早期のFH診断治療がACSの予防に重要であることが示唆された。CVDの既往のあるFHヘテロ患者に対するプロブコールの投与は、CVD再発予防に有効である可能性が示唆されたが、前向きに検討する必要がある。冠動脈造影を施行された血清TG値が150mg/dl以下の症例で、冠動脈病変の有無で、両群の負荷前後のTG上昇量に有意差を認めず、空腹時TG値正常者に脂肪負荷試験を行うメリットは少ないと考えられた。日本人2型DMにおけるnon-HDL-CとLDL-Cの冠動脈疾患発症のハザード比は同等であった。日本人を対象としたゲノムワイド関連解析の結果、脂質異常に関連するSNPsには人種差が認められるものが存在することが明らかとなった。頸動脈硬化と脂質異常に関連するSNPsとの関連は小さく、実際に脂質異常が発症することが重要と考えられた。小児に発症する脂質異常には、インスリン抵抗性だけでなく遺伝因子も関与している可能性が示唆された。
結論
新しいFH診断基準は、LDLR活性を測定せずともLDLR遺伝子異常を感度良くスクリーニングすることが可能である。日本人2型DMの冠動脈疾患リスク評価指標として、non-HDL-Cは、LDL-Cとならぶ有用な臨床脂質指標となることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-13
更新日
-