ホルモン受容機構異常に関する調査研究

文献情報

文献番号
200834022A
報告書区分
総括
研究課題名
ホルモン受容機構異常に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
松本 俊夫(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所)
  • 森 昌朋(群馬大学医学部 第一内科)
  • 中村 浩淑(浜松医科大学)
  • 赤水 尚史(京都大学医学部附属病院探索医療センター)
  • 村田 善晴(名古屋大学環境医学研究所 生体適応・防御研究部門、発生・遺伝分野)
  • 大薗 惠一(大阪大学大学院医学系研究科生体統合医学小児発達医学)
  • 杉本 利嗣(島根大学医学部内科学講座 内科学第一)
  • 岡崎 亮(帝京大学ちば総合医療センター・第三内科)
  • 福本 誠二(東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科)
  • 皆川 真規(千葉大学大学院医学研究院小児病態学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
偽性副甲状腺機能低下症と関連疾患、ビタミンD抵抗性くる病と類縁疾患、甲状腺ホルモン不応症、TSH受容体(抗体)異常症などホルモン受容機構異常に基づく難病の患者実態を把握し原因・病態の解明、診断基準の作成、治療法の確立を行う。
研究方法
ホルモン作用の情報伝達系やモデル動物等の病態を解析した。遺伝子診断法やホルモン測定系を確立し、症例解析を基に診断基準・指針を策定した。
結果と考察
1)偽性副甲状腺機能低下症と関連疾患:常染色体優性低Ca血症のCa感知受容体活性型変異による機能亢進をcalcilyticsが抑制することを示した。特発性副甲状腺機能低下症でCa感知受容体抗体を認めた。GNAS遺伝子プロモーターのepigeneticな変化と転写制御との関係を解析した。
2)ビタミンD抵抗性くる病と類縁疾患: FGF23過剰症の診断指針が小児に適用できることを示した。含糖酸化鉄投与がFGF23の上昇を介し低リン血症を来すことを見出した。細胞外リンがFGF23と細胞内シグナルを共有し細胞外リンがFGF23応答性に影響を及ぼすことを示した。成人のビタミンD充足・不足症の基準値を策定した。ビタミンD によりDnmt3bが1α水酸化酵素遺伝子をメチル化し、PTHによりMBD4がDNAメチル化を解除することを見出した。FSHが骨密度を低下させることを症例で示した。
3)TSH受容体(抗体)異常症:甲状腺クリーゼ診断指針に基づき全国疫学調査を開始した。変異TSH受容体がdominant negative効果で甲状腺機能低下を来すことをモデル動物で示した。バセドウ病と眼症患者でIL-23受容体とIL-25の遺伝子多型が正常者と相違ないことを示した。バセドウ病悪性眼球突出症と粘液水腫性昏睡の診断・治療指針の作成に向けた検討を開始した。
4) 甲状腺ホルモン不応症(RTH):変異TRβ(Δ337T)ノックインマウスを作成し解析を進めた。TSH遺伝子転写の活性化と抑制に何れもGATA2が関与することを示した。SITSH症例にTRβの点突然変異を見いだした。

結論
ホルモン受容体シグナルと不全病態の解明はホルモン受容機構異常症の診断・治療開発に欠かせない。各種基準値の設定やホルモン受容機構異常症の診断指針の策定は、早期診断・治療による予後の改善に繋がるものと期待される。


公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
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