軟骨炎症性疾患の診断と治療体系の確立

文献情報

文献番号
202111016A
報告書区分
総括
研究課題名
軟骨炎症性疾患の診断と治療体系の確立
課題番号
20FC1009
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 登(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 花岡 洋成(慶應義塾大学 医学部 リウマチ・膠原病内科)
  • 宮村 知也(独立行政法人国立病院機構 九州医療センター)
  • 村上 孝作(京都大学大学院医学研究科)
  • 東 直人(兵庫医科大学 医学部 内科学 糖尿病内分泌・免疫内科)
  • 田中 良哉(産業医科大学 医学部 第1内科学講座)
  • 佐藤 正人(東海大学 医学部 外科学系 整形外科学)
  • 峯下 昌道(聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科)
  • 川畑 仁人(東京大学医学部附属病院 アレルギー・リウマチ内科)
  • 仁木 久照(聖マリアンナ医科大学整形外科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,420,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 再発性多発軟骨炎(RP)など軟骨炎症性疾患は、希少性ゆえに本邦における疫学臨床情報は不十分であり、診断・治療のための指針も作成されていない。RPでは呼吸器、心血管系、中枢神経系の臓器病変を持つ患者は予後不良であり、診断および治療法の標準化・広報が急務である。
 我々はH21年度においてRPの全国疫学調査を行い、本邦での実態を報告した。同時に国際多施設共同研究を行い疾患活動性指標「RPDAI」を提唱した(Autoimmun Rev 2012)。この両者よりRP重症度分類(案)の構築を試み、日本リウマチ学会で公表した(2014-2019年度)。
 本研究は上記同様に主に疫学研究を通して、RPに加えてTietze症候群と離断性骨軟骨炎の、軟骨炎症性3疾患における診断・治療のガイドライン作成を第一の目的とする。
研究方法
 我々は2009年度施行のRP第1回全国疫学調査データの解析を通じて、疫学的に本邦RPでは大きく「気道軟骨炎のある患者群」と「気道軟骨炎のない患者群」に二分され、前者の予後が悪いことが判明した。心血管合併症、中枢神経合併症、侵襲臓器数なども予後不良因子であることを明らかにしている。さらに、発症時の症状に着目すると、耳介軟骨炎にて発症した患者においては全般に良好な予後が認められたが、そのうち1/3程度が気道軟骨炎を合併し予後が悪化することも判明した。これらの我々のデータをもとに、10年後の2019年度にRP第2回全国疫学調査を実施し、病態推移の明確化を試みた(論文発表1)。
 同時に患者検体バンクの末梢血を利用して、病態進展のバイオマーカーを探索した。
 ティーツェ症候群と離断性骨軟骨炎の全国疫学調査を同時に実施した。
結果と考察
 第1回と第2回の全国疫学調査の比較においては、気道、皮膚、中枢神経の侵襲頻度と死亡率が10年間で有意に減少していた。治療においては、免疫抑制剤と抗体医薬品(特にインフリキシマブ)の使用頻度が、気道軟骨炎のある患者群でのみ有意に上昇していた。これらの医薬品が予後改善に関与している可能性がある。以上より、治療の実際を含めた臨床像からは、RPにおける気道軟骨炎の特異性が明らかになった。
 末梢血を用いた基礎的研究においても、気道軟骨炎保有患者の特徴が判明した。具体的には、RP患者においては蛋白分解酵素の血清MMP3が高値であり病態関与が疑われているが、特に気道軟骨炎保有患者において顕著であった。さらに、その血清MMP3が気道軟骨炎保有患者においてのみ末梢血の炎症性サイトカイン(IL-1βとIL-6)の産生量と正相関を示すことを発見した。
 また、ティーツェ症候群と離断性骨軟骨炎の全国疫学調査では、それぞれ希少な疾患であることが明らかであったが、それぞれの臨床的特徴を抽出することが可能であった。一部は重症例であり論文報告することが適当と判断した。
結論
 これまでの研究によって、本邦RPの病態と治療反応性の時間的変遷の概略が判明した。現在までの研究において、予後不良グループのひとつと考えられる気道軟骨炎保有患者において抗体医薬品が多く使用され、結果としてその予後を改善していることは、診断・治療ガイドラインの作成に向け貴重な所見となりうると考察する。このRPにおける気道軟骨炎の特異性に関しては、フランスのRP研究グループも近年指摘している。
 また、気道軟骨炎保有患者においてのみ、末梢血炎症性サイトカイン発現と血清MMP3の間に正相関を観察したが、軟骨局所での炎症反応を反映するものと推察している。この反応をさらに研究することで、病態進展・治療反応性のバイオマーカーとして使用できる可能性を示すものと考えている。このアイデアを総論としてまとめ、論文報告した。
 当研究班では上述の研究データをもって診断・治療ガイドラインの作成を試みるべく、CQ作成および統合的レビュー実施のための体制作成に着手した。その研究体制と当研究班にて、国際共同研究にて計画されている前向き観察研究も、本邦向けにアレンジしたのちに実施する予定としている。前述のようにティーツェ症候群と離断性骨軟骨炎においては研究結果の論文報告を試みる。

公開日・更新日

公開日
2023-05-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202111016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,446,000円
(2)補助金確定額
4,446,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,055,730円
人件費・謝金 1,213,672円
旅費 0円
その他 150,598円
間接経費 1,026,000円
合計 4,446,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-12-12
更新日
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