骨髄異形成症候群に対する病態解明・治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200834014A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄異形成症候群に対する病態解明・治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-難治・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
三谷 絹子(獨協医科大学 内科学(血液))
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 俊哉(広島大学原爆放射線医科学研究所)
  • 小川 誠司(東京大学医学部附属病院がんゲノミクスプロジェクト)
  • 直江 知樹(名古屋大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)
  • 泉二登志子(東京女子医科大学 血液内科)
  • 大屋敷一馬(東京医科大学 血液内科)
  • 内山 卓(京都大学医学研究科 血液・腫瘍内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨髄異形成症候群(MDS)の新規分子標的療法の開発を目的として分子病態研究を行った。
研究方法
(1) ゲノム異常・miRNA発現異常・リン酸化蛋白発現異常の網羅的探索:定量的RT-PCR法・二次元展開リン酸化蛋白の同定を実施した。
(2) 変異遺伝子・分子の機能解析:t(12;17)の結果形成される新規アンチセンスキメラ遺伝子TEL-TAO1rを同定し、その機能解析を行った。また、7q-の責任遺伝子Titanの機能を発生工学的に解析した。さらに、経口除鉄剤(deferasirox)による抗白血病効果の分子基盤を検証した。
(3) 変異遺伝子の臨床的意義の検討:検体を用いて、高密度SNPアレイ解析と染色体分析の結果を比較した。
結果と考察
(1) ゲノム異常・miRNA発現異常・リン酸化蛋白発現異常の網羅的探索: miRNA発現解析の結果、RUNX1の翻訳を負に制御するmiR-9の発現が一部の症例で亢進していた。リン酸化蛋白の発現解析の結果、MDS/AMLのCD34陽性細胞で発現が増加するものとしてtropomyosin 3、減少するものとしてcofilin 1が同定された。
(2) 変異遺伝子・分子の機能解析:TEL-TAO1rは野生型TAO1 mRNAに対してアンチセンスとして働くことが示された。新生仔期のTitan遺伝子欠損マウスにレトロウイルス4070Aを感染させたところ、ほぼ全個体が骨髄性白血病を発症した。レトロウイルスの挿入部位から協調遺伝子Evi1とFbxl10が同定された。DeferasiroxはREDD1発現亢進、mTOR抑制、S6 キナーゼ抑制を介して白血病細胞株にアポトーシスを誘導した。
(3) 変異遺伝子の臨床的意義の検討:ゲノム異常の検出には染色体分析よりSNPアレイ解析の方が優れており、2.59倍の検出率であった。正常核型の症例の43%にもSNPアレイ解析でゲノム異常が認められた。特に、染色体分析で検出不可能なUPDは、SNPアレイ解析で約3割の症例で陽性であった。
結論
MDSの病型分類、予後予測、治療層別化に有用な遺伝子・分子マーカーが同定された。また、これらの異常遺伝子・分子の機能解析の結果は、新規薬剤の開発を目指した低分子化合物のスクリーニングの指標となる。MDSの病態研究の基盤整備を目的として、検体集積事業を展開している。

公開日・更新日

公開日
2009-03-18
更新日
-