難治性血管炎に対する血管再生療法の多施設共同研究

文献情報

文献番号
200834013A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性血管炎に対する血管再生療法の多施設共同研究
課題番号
H19-難治・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
池田 宇一(信州大学 大学院医学系研究科 循環器病態学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 弘明(京都府立医科大学 大学院医学研究科 )
  • 室原 豊明(名古屋大学 大学院医学研究科)
  • 簑田 清次(自治医科大学 医学部)
  • 天野 純(信州大学 医学部)
  • 相澤 義房(新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 石ヶ坪良明(横浜大学 大学院医学研究科)
  • 宮本 正章(日本医科大学 大学院)
  • 藤本 和輝(国立病院機構熊本医療センター心臓血管センター)
  • 堀江 卓(特定医療法人北楡会札幌北楡病院 外科)
  • 高橋 将文(信州大学 大学院医学系研究科 循環器病態学分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 難治性血管炎は、特定疾患の一つに指定されており、特定従来の治療法が無効で指趾切断に至る症例も少なくない。本研究では、臨床試験によりバージャー病や膠原病に関連する難治性血管炎患者に対する自己骨髄・末梢血単核球移植による血管再生療法の有効性と安全性を検証することを目的として研究を行った。
研究方法
 現在、全国9施設で研究班を組織て多施設臨床試験を継続している。これまで班員施設で計110例 (117肢)の難治性血管炎患者(バージャー病 64例 [67肢]、膠原病関連指趾虚血 46例 [50肢])にに自己骨髄・末梢血単核移植療法を施行した。膠原病の内訳は、強皮症 [SSc] 22例 [23肢]、全身性エイテマトーデス 9例、CREST症候群 2例、混合性結合組織病[MCTD] 4例、結節性多発性動脈炎 [PN] 3例、抗リン脂質症候群 [APS] 4例、SLE+APS 1例、その他 3例 [4肢]であった。評価項目としては、臨床症状(しびれ、冷感、疼痛レベル[VAS])や潰瘍サイズなどについて検討してその改善度を判定した。
結果と考察
 班員施設での症例におけるバージャー病の有効率は88.1%、膠原病関連指趾虚血の有効率は86.0%と非常に高い治療効果を認めている。膠原病の中で最も症例数の多い強皮症では治療経過の違いはあるが、22例中20例 (20/23肢:87.0%) で皮膚潰瘍や疼痛などの症状の改善を認めた。他の膠原病関連血管炎症例では症例も少ないことから、今後の症例の積み重ねが重要であると考えられる。本治療法による有害事象としては、強皮症の1例で移植後9ヶ月まで治療効果が持続したが、原疾患の増悪により指趾虚血が再燃した症例と、移植直後にめまいと咽頭痛のあった症例が強皮症で1例ずつ認められた。班員らが中心となって行っているTherapeutic Angiogenesis by Cell Transplantation(TACT)研究の長期予後調査では、ASOに比較してバージャー病では長期予後がよいことが示されており、本治療法はバージャー病のみならず膠原病関連指趾虚血、なかでも強皮症による難治性皮膚潰瘍に対して有効な治療法となる可能性が示された。

結論
バージャー病や膠原病による難治性血管炎による指趾の血行障害を有する患者に対して、自己骨髄・末梢血単核球移植による血管再生療法の多施設臨床試験を行い、その有効性と安全性を検証した。本研究により、難治性血管炎に対する日本発の新たな治療法が確立されるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-03-18
更新日
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