HLA多型が寄与する自己免疫疾患の発症機序の解明

文献情報

文献番号
200834011A
報告書区分
総括
研究課題名
HLA多型が寄与する自己免疫疾患の発症機序の解明
課題番号
H19-難治・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
反町 典子(国立国際医療センター(研究所) 消化器疾患研究部消化管疾患研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 前仲 勝実(九州大学生体防御医学研究所 ワクチン開発構造生物学分野)
  • 鈴木 春巳(国立国際医療センター(研究所) 臨床病理部)
  • 高木 智(国立国際医療センター(研究所) 地域医療保健研究部)
  • 伊藤 健司(国立国際医療センター(戸山病院) 第一病棟)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性疾患には、免疫システムの異常が病態に寄与する免疫難病が含まれ、その多くはヒトにおける主要組織適合抗原(MHC)であるHLAの特定の分子との高い相関が報告されている。本研究では、HLAの免疫制御における新たな機能を明らかにし、疾患関連HLAが免疫難病の発症にどのように関与するかを明らかにすることにより、新たな治療標的候補分子を同定することを目的とする。
研究方法
マウスHLAであるMHCに会合する受容体の遺伝子改変マウスを用いて、MHCの新しい免疫制御機構を解析した。また硬直性脊椎炎と高い相関を示すHLA-B27について、組み換え精製タンパク質およびビアコアを用い、構造および分子特性を解析した。また、ヒト造血系細胞を再構築したモデルマウスを樹立するための臍帯血由来造血幹細胞移植の条件検討、モデルマウスを用いて制御性T細胞の分化制御機構の解析を進めた。さらに、疾患関連HLAを保有する自己免疫疾患患者(当科の関節リウマチ通院者430人)について、詳細な診療データベースを作成した。
結果と考察
MHCクラスIの新規免疫制御機構として、MHC受容体を介してTLR9によるサイトカイン産生を制御することを見出し、この制御機構の異常によって感染炎症応答に異常が生じることを報告した。これは、MHCが抗原提示以外で多岐にわたって免疫応答に影響を及ぼしていることを示しており、HLAが相関する免疫難病の発症機構を考える上で、新しい視点を導入するものである。実際、強直性脊椎炎に相関を示すHLA-B27においては、HLA受容体との結合異常が見出され、このような疾患関連HLAとHLA受容体との結合異常が強直性脊椎炎の病態にどのような役割を果たしているかを理解することが重要である。
結論
(1) MHCクラスIとその受容体が、好中球の炎症巣への浸潤や抗原提示細胞のサイトカイン産生を制御することにより、感染炎症応答を制御していることを見出した。
(2) MHCクラスIとその受容体に対する抗体で、炎症性サイトカイン産生を抑制できることを見出した。
(3) MHCクラスIとその受容体の相互作用を阻害することにより、TLR9を介したサイトカイン産生を抑制できることから、治療標的としての可能性を見出した。
(4) 強直性脊椎炎関連HLA-B27は、抑制性HLA受容体との結合に異常を来すことを見出した。
(5) 自施設通院症例のデータベースを作成した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
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