特発性肺線維症の予後改善を目指したサイクロスポリン+ステロイド療法ならびにNアセチルシステイン吸入療法に関する臨床研究

文献情報

文献番号
200834006A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性肺線維症の予後改善を目指したサイクロスポリン+ステロイド療法ならびにNアセチルシステイン吸入療法に関する臨床研究
課題番号
H18-難治・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 翔二(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 貫和 敏博(東北大学大学院医学系研究科呼吸器病態学分野)
  • 棟方 充(福島県立医科大学医学部呼吸器科内科学講座)
  • 杉山 幸比古(自治医科大学呼吸器内科)
  • 吾妻 安良太(日本医科大学内科学講座呼吸器・感染・腫瘍部門)
  • 本間 栄(東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科)
  • 吉澤 靖之(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科統合呼吸器病学)
  • 滝澤 始(帝京大学医学部附属溝口病院第四内科)
  • 金澤 實(埼玉医科大学呼吸器内科)
  • 鈴木 榮一(新潟大学医歯学総合病院 総合診療部)
  • 井上 義一(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)
  • 河野 修興(広島大学大学院 分子内科)
  • 西岡 安彦(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部呼吸器膠原病内科学分野)
  • 河野 茂(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座)
  • 菅 守隆(社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院呼吸器科)
  • 竹内 正弘(北里大学大学院薬学研究科臨床統計部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
稀少呼吸器難病IPFの生命予後を改善する画期的治療法の開発をめざし、4薬剤(Nアセチルシステイン(NAC), サイクロスポリンA (CyA)とサイクロフォスファミド (CPA)との比較試験, ピルフェニドン)のIPFに対する有効性・安全性を多施設共同研究で検証すること。
研究方法
全国規模の臨床試験を企画・実行するため、CROに委託し、web登録システム、情報管理システム、解析システムを構築した。臨床試験実施要項を作成し、IPFに対するNAC吸入療法ならびにCYA療法臨床試験を開始した。IPF重症度Ⅰ、Ⅱに対するNAC吸入療法ならびに重症度Ⅲを対象にCYA療法臨床試験を推進した。またIPF急性増悪に対するPMX-DHP療法を継続した。10月にPirfenidone製造承認を取得した。CyAとCPA比較試験は99症例登録が完了し、NAC吸入療法の無治療群との比較試験は100例の臨床試験を完遂した。
結果と考察
臨床試験医薬品はNAC, CyAを班研究費で購入し、医薬品保管ならびに各施設への配置について流通経路を確保し必要時に安定した医薬品供給を実現した。さらに構築したweb患者登録システムを駆使しNAC吸入療法試験 100症例、CyA vs CPA比較試験 99症例が登録され治療研究を継続した。
 以上のインフラは今後他の臨床試験にも流用が可能でありわが国における呼吸器疾患の多施設共同研究の基盤が構築された。
 pirfenidone第Ⅱ相臨床試験結果(Am J Respir Crit Care Med: 171, 1040, 2005)に基づき、再現性ならびに用量検証を目的とした第Ⅲ相臨床試験では主要評価項目の%VC下降が実薬群で有意に軽度であり、「無増悪生存期間」が実薬群で有意に改善した。これらの結果に基づいて平成20年10月16日製造販売承認(塩野義製薬)を取得した。
 約160症例のIPF急性増悪に対しポリミキシン吸着療法(PMX-DHP)を集積した。その結果、発症3ヶ月後の生存率に改善が見込まれた。詳細な解析を行っている。
結論
平成20年10月16日、Pirfenidoneの製造販売承認を得た。
重症度Ⅲ、また前向きの臨床試験を実行した。重症度Ⅰ、Ⅱを対象にNAC療法は100症例を完遂し、現在解析中.CYA療法は99症例登録し治療継続中。
IPF急性増悪症例においてPMX-DHP療法の約160症例を集積し解析した。

公開日・更新日

公開日
2009-05-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200834006B
報告書区分
総合
研究課題名
特発性肺線維症の予後改善を目指したサイクロスポリン+ステロイド療法ならびにNアセチルシステイン吸入療法に関する臨床研究
課題番号
H18-難治・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 翔二(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 貫和 敏博(東北大学大学院医学系研究科 呼吸器病態学分野)
  • 棟方 充(福島県立医科大学医学部呼吸器科内科学講座)
  • 杉山 幸比古(自治医科大学呼吸器内科)
  • 吾妻 安良太(日本医科大学内科学講座呼吸器・感染・腫瘍部門)
  • 本間 栄(東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科)
  • 吉澤 靖之(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科統合呼吸器病学)
  • 滝澤 始(帝京大学医学部附属溝口病院第四内科)
  • 金澤 實(埼玉医科大学呼吸器内科)
  • 鈴木 榮一(新潟大学医歯学総合病院 総合診療部)
  • 井上 義一(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)
  • 河野 修興(広島大学大学院 分子内科)
  • 西岡 安彦(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部呼吸器膠原病内科学分野)
  • 河野 茂(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座)
  • 菅 守隆(社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院呼吸器科)
  • 竹内 正弘(北里大学大学院薬学研究科臨床統計部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
有効なIPFの治療薬を開発するために、多施設共同臨床試験を実行した。このためweb登録システムを作成し実用化した。IPF急性増悪におポリミキシン吸着療法(PMX-DHP)を集積し解析した。
研究方法
臨床研究の実施にあたって、web登録システム、情報管理システム、解析システムを構築した。初年度の全国アンケート調査に基づいて、「臨床試験実施要項」を作成し、IPF重症度Ⅰ、Ⅱに対する「NAC吸入療法」ならびに重症度Ⅲを対象に「CYA療法」臨床試験を推進した。Pirfenidone治療研究は中等症を対象に展開した。新たにIPF急性増悪に対するPMX-DHP療法を継続した(約160症例)。
結果と考察
びまん班の26施設を中心に、NAC吸入療法、pirfenidone療法、CYA療法をそれぞれIPF軽症例、中等症例、進行例を対象に治療試験を、web登録システムを駆使して展開した。臨床試験医薬品は班研究費で購入、付随する医薬品の保管、流通経路の確保、医薬品の安定した供給を実現した。以上のインフラ構築は、わが国における多施設共同研究の基盤整備となった。pirfenidone第Ⅱ相試験(AJRCCM 171: 1040, 2005)に基づき、第Ⅲ相試験を展開した。実薬群で%VCの下降が有意に軽度で、無増悪生存期間が有意に改善し、平成20年10月16日、製造承認(塩野義製薬)を取得した。またIPF急性増悪にPMX-DHP療法を試み、生存率に改善が見込まれた。
世界初のpirfenidoneは国際的評価を得、当初の目標は達成した。100症例終了したNAC吸入試験、99症例登録終了のCYA療法は今後、高度医療評価制度へ繋げたいが、最終的に製薬企業の臨床試験を経た適応取得が必要である。IPFは治療評価指標の未確立な疾患で、指標の探索と平行して治療薬開発が進む現状では、まだしばらく混迷が続く。本研究が一つの礎になったと確信している。今後はNAC, CyAの適応拡大、pirfenidone市販後調査、PMXの評価、そして新たな医薬品開発へと繋げたい。
結論
・世界で初めてIPFにPirfenidoneを投与できるようになった。
・NAC吸入療法及びCYA療法の臨床試験を実行した。NAC療法は完遂し、実薬群でVCの悪化抑制が見込まれた。CYA療法は治療継続中である。
・web登録システムを作成し、実用化した。
・IPF急性増悪に、PMX-DHP療法を施行し、生存率に改善が見込まれた.

公開日・更新日

公開日
2009-05-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-04-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200834006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特発性肺線維症(IPF)に対する治療として、サイクロスポリン(CyA)療法、Nアセチルシステイン(NAC)吸入療法の2試験を計画した。それぞれ副腎皮質ステロイド(PSL)に加えて従来治療であるサイクロフォスファミド(CPA)との比較、また後者は無治療群との比較を行った。前者は数例の試験継続者が残っており、継続中である。後者は全体解析で有意差はでないものの、NAC群が常にVC下降が遅い傾向にあり、特にやや進行病期において差が出やすい傾向にあった。症例数を増やして検討する価値がある。
臨床的観点からの成果
これまで経験的に投与されてきた副腎皮質ステロイドならびにCyA治療薬の位置づけをより明確にして、治療の根拠を明示していく第一歩が達成された。NAC吸入療法は我が国から初めて発信できる治療方法であり、欧米でのNAC内服治療と同様に、エビデンスの提示につながる第一歩となった。この結果を基礎として、企業主導の治験へ進むことが臨まれる。
ガイドライン等の開発
米国胸部学会(ATS)/欧州呼吸器学会(ERS) consensus statementにおける標準療法、また日本呼吸器学会(JRS)ならびにびまん性肺疾患研究事業からの共同発行されている「特発性間質性肺炎の診断と治療の手引き」の改訂に向けて、我が国からのエビデンス収載を計画している。
その他行政的観点からの成果
臨床試験に先立ち、webを介して恒常的な特発性肺線維症患者の登録システムを整備したことにより、全国多施設規模で、また同一の尺度で薬剤の有効性・安全性を評価、比較することが可能となった。したがって呼吸器特定疾患領域において、医師主導の臨床試験を展開するにあたり、新たな候補薬剤が推薦された場合、今後も本評価系を駆使して有効性・安全性の比較検討が可能となった。
その他のインパクト
CyA+Steroid, NAC吸入療法と平行して行い、IPF軽症中等症を対象としたピルフェニドン臨床試験は本研究班事業の一環として症例を登録し、平成20年10月に製造承認が降りた。その臨床成績を報道発表し、臨床試験の有効性ならびに安全性を紹介した。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
152件
その他論文(和文)
232件
その他論文(英文等)
12件
学会発表(国内学会)
744件
学会発表(国際学会等)
219件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
YJ Li, A Azuma, S Kudoh, et al.
Disruption of Nrf2 enhances susceptibility to airway inflammatory responses induced by low-dose diesel exhaust particulate in mice
Clin Immunol , 128 (3) , 366-373  (2008)
原著論文2
M Yamaya, A Azuma, S Kudoh, et al.
Inhibitory effects of macrolide antibiotics on the hospitalization by exacerbations in COPD patients: a retrospective multicenter analysis
J Am Geriatr Soc , 56 (7) , 1358-1360  (2008)
原著論文3
Morimoto T, Azuma A, Kudoh S, et al.
Epidemiology of sarcoidosis in Japan
Eur Respir J , 31 (2) , 372-379  (2008)
原著論文4
Y Seo, A Azuma, S Kudoh, et al.
Beneficial effect of Polymyxin B-immobilized fiber column (PMX) Hemoperfusion Treatment on Acute Exacerbation of Idiopathic Pulmonary Fibrosis
Inter Med , 45 (18) , 1033-1038  (2006)
原著論文5
YJ Li, A Azuma, S Kudoh, et al.
EM703, A New Derivative of Erythromycin, Improves Bleomycin-Induced Pulmonary Fibrosis in Mice by Inhibition of TGF-β Signaling in Fibroblasts
Respiratory Res , 7 (1) , 16-  (2006)
原著論文6
Y Miyake, A Azuma, S Kudoh, et al.
Dietary Fat and Meat Intake and Idiopathic Pulmonary Fibrosis: A Case-control Study in Japan
Int J Tuberc Lung Dis , 10 (3) , 333-339  (2006)
原著論文7
A Azuma, T Nukiwa, S Kudoh, et al.
A Double Blind And Placebo-Controlled Clinical Study Of Pirfenidone In Patients With Idiopathic Pulmonary Fibrosis
Am J Respir Crit Care Med , 171 , 1040-1047  (2005)
原著論文8
K Kamio, A Azuma, S Kudoh, et al.
Promoter analysis and aberrant expression of MUC5B gene in diffuse panbronchiolitis
Am J Respir Crit Care Med , 171 , 949-957  (2005)
原著論文9
A Azuma, YJ Li, S Kudoh, et al.
Interferon-b Inhibits Bleomycin-Induced Lung Fibrosis by Decreasing TGF-b and Thrombospondin
Am J Respir Cell Mol Bio , 32 (2) , 93-98  (2005)
原著論文10
Inoue Y, Trapnell BC, Nakata K, et al.
Japanese Center of the Rare Lung Diseases Consortium. Characteristics ofA large cohort of patients with Autoimmune pulmonaryAlveolar proteinosis in Japan
Am J Respir Crit Care Med , 177 (7) , 752-762  (2008)
原著論文11
Kishi M,Miyazaki Y,Yoshizawa Y, et al.
Pathogenesis of cBFL in common with IPF? Correlation of IP-10/TARC ratio with histological patters
Thorax , 63 , 810-816  (2008)
原著論文12
Young LR,Inoue Y, McCormack FX
Diagnostic Potential of Serum VEGF-D for Lymphangioleiomyomatosis
N Engl J Med , 358 , 199-200  (2008)
原著論文13
Shoda H,Yokoyama A,Kohno N, et al.
A causal relationship between overproduction of collagen and diminished SOCS1 expression are causally linked in fibroblasts from idiopathic pulmonary fibrosis
Biochem Biophys Res Commun , 353 , 1004-1010  (2007)
原著論文14
Enomoto N,Suda T, Chida K, et al.
Quantitative Analysis of Fibroblastic Foci in Usual Interstitial Pneumonia
Chest , 130 (1) , 22-29  (2006)
原著論文15
Suda T,Fujisawa T, Chida K, et al.
Interstitial lung diseases associated with amyopathic dermatomyositis
European Respiratory Journal , 28 (5) , 1005-1012  (2006)
原著論文16
Nakano H,Chida K,Koide Y, et al.
Immunization with dendritic cells retrovirally transduced with mycobacterial antigen 85A gene elicits the specific cellular immunity including cytotoxic T-lymphocyte activity specific to an epitope on antigen 85A
Vaccine , 24 (12) , 2110-2119  (2006)
原著論文17
Naito T,Chida K, Nakamura H, et al.
validation and potential modification of the pneumonia severity index in elderly patients with community-acquired pneumonia
J Am Geriatr Soc , 54 (8) , 1212-1219  (2006)
原著論文18
Konno K,Yoshizawa Y,Miyake K, et al.
A molecule that is associated with Toll-like receptor 4 and regulates its cell surface expression
Biochemical and Biophysical Research Communications , 339 , 1076-1082  (2006)
原著論文19
Inase N,Ohtani Y,Yoshizawa Y, et al.
A clinical study of hypersensitivity pneumonitis presumably caused by feather duvets
Ann Allergy Asthma Immunol , 96 (1) , 98-104  (2006)
原著論文20
Homma S,Sakamoto S,Yoshimura K, et al.
Comparative clinicopathology of obliterative bronchiolitis and diffuse panbronchiolitis
Respiration , 73 , 481-487  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-