文献情報
文献番号
200834004A
報告書区分
総括
研究課題名
炎症性腸疾患の画期的治療法に関する臨床研究
課題番号
H18-難治・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岡崎 和一(関西医科大学 内科学第三講座)
研究分担者(所属機関)
- 渡辺 守(東京医科歯科大学 消化器病態学)
- 日比 紀文(慶應義塾大学医学部 内科)
- 浅香 正博(北海道大学 分子病態制御学)
- 坪内 博仁(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学)
- 高後 裕(旭川医科大学 消化器血液腫瘍制御内科学)
- 中村 和彦(九州大学大学院 病態制御内科)
- 鈴木 健司(新潟大学医学部 消化器内科 )
- 竹田 潔(大阪大学大学院医学系研究科感染免疫医学講座免疫制御学)
- 千葉 勉(京都大学大学院 消化器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班は、難治性炎症性腸疾患に対しこれまでと異なる発想による病態遷延機構の解析を行い、それに基づく画期的治療法の開発とその臨床応用を目的とし、「粘膜局所免疫調節」および「組織再生誘導」を促す新規治療法開発を目指した。
研究方法
1) 上皮細胞再生のための分子療法、細胞移植療法の確立、2) 腸管特異的免疫調節機構を標的とした治療法開発、3) 選択的細胞除去療法開発、および4) 分子・細胞デリバリーシステムを用いた治療法確立、5)既存の薬剤を新しいコンセプトで適応外応用した治療法の開発、の5プロジェクト研究を進めた。
結果と考察
1)動物腸炎モデルでの組み換え型ヒト肝細胞増殖因子の局所投与により、十分な腸炎発症阻止効果を認め、今後臨床応用にむけた、「潰瘍性大腸炎に対する組換えヒトHGFの臨床試験」の開始予定である。ヒト腸管上皮でHath1は杯細胞に促進的であること、Hath1蛋白発現を増強するGSK-3β阻害剤が杯細胞の誘導が粘膜上皮再生につながることを示唆した。骨髄や臍帯血幹細胞に比較して安全かつ大量に摂取可能な皮下脂肪組織由来幹細胞による粘膜再生療法の可能性も明らかにした。2)基礎研究レベルで、遅期誘導型遺伝子のプロモーターのクロマチン構造変換に関わる自然免疫制御分子としてのIkBzetaを同定し、IL-6産生に関与することで腸炎発症に重要な機能をもつことを明らかにした。HD5のrecombinant ペプチドやレドックス制御を目指したチオレドキシン投与などの自然免疫系の制御による炎症性腸疾患の治療法開発の可能性も明らかにした。3)ヒト制御性T細胞を無菌的に大量に分離し、制御性T細胞移入療法の開発が進められた。4)高分子バイオマテリアルを用いたステロイド封入マイクロカプセルによる難治性潰瘍性大腸炎患者の臨床研究登録が開始され、またリポ化ステロイドを用いたドラッグデリバリーシステムによる多施設共同による無作為化並行群間試験も開始されている。5)PDE害剤の免疫細胞に対する効果が明らかにされ、新規治療剤としての可能性を示唆した。
結論
社会的インパクトの高い論文発表のみならず、臨床応用の点でも5件のプロジェクトが分担研究者の施設で臨床試験としてすでに承認あるいは承認間近となるなど、十分な成果が挙げられつつある。これら成果は、基礎研究の先進性を確保しつつ、かつ既存の炎症性腸疾患治療を凌駕し患者QOLの改善にも有効な画期的治療開発を可能にすることが予想され、国際的にも評価に耐え得る研究であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2009-03-18
更新日
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