女性特有の疾病に対する健診等による介入効果の評価研究

文献情報

文献番号
202110001A
報告書区分
総括
研究課題名
女性特有の疾病に対する健診等による介入効果の評価研究
課題番号
19FB1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大須賀 穣(国立大学法人 東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 知行(国立大学法人 東京大学 医学部附属病院)
  • 五十嵐 中(横浜市立大学 医学群(健康社会医学ユニット))
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
  • 杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部看護学科)
  • 前田 恵理(秋田大学大学院医学系研究科衛生学・公衆衛生学講座)
  • 松崎 政代(大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻)
  • 吉原 愛(伊藤病院)
  • 平池 修(和田 修)(東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科)
  • 吉村 典子(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター ロコモ予防学講座)
  • 荒川 一郎(東京大学 大学院医学系研究科・医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 女性の健康の包括的支援政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の全年齢層における女性の労働力を活用することは、社会的に喫緊の課題であり、女性の社会経済活動を現状よりもさらに賦活化させるためには、女性の健康維持を推進すること、それを政策にも反映させるのであれば、経済学・社会学的視座から総合的に評価し推進することが必要である。本研究は、平成29年度に東京大学産婦人科学大須賀穣教授を班長として開始された「女性の健康の社会経済学的影響に関する研究事業」を発展させ、女性に頻度の多い疾患を多面的かつ医療経済学的に評価し、社会の健康支援体制構築に役立てることを主たる目的としており、医療経済、臨床、疫学など幅広い視点から多くの研究者に参画してもらい研究を遂行した。
研究方法
子宮内膜症の予防並びに治療に関して医療経済に与える影響について検討し、働く女性の労働生産性にどのような損失を与えているか試算しようと考えた。月経困難症患者はOC/LEPに代表されるガイドライン推奨治療よりも、疼痛緩和のために非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)などによる自己治療を一般的に使用しているが、本研究では疾患進行、卵巣がんを含めて、疾患予防を目的としてOC/LEPを使用することで医療経済的に影響があるのか検討した。
2.働く女性に対するアンケート調査結果を用いて、月経不順や月経随伴症状がQOLや生産性に影響を与える可能性について経済評価で広く用いられている効用値に対する月経不順と月経随伴症状の影響を明らかにした。
3.女性特有疾患である乳がん・子宮頸がんに焦点を当て、検診に対する需要行動の関連要因を明らかにするために、cross-sectionalに検討を行った。昨年度実施した乳がんと子宮頸がんを受検した女性1000名の調査データの詳細分析を行った。
4.月経随伴症状の中でも、月経前症候群PMSおよびPMSの重症型である月経前不快気分障害PMDDに関して、受診勧奨効果を検討するため、本研究では、インターネット調査会社が保有する一般国民パネルから無作為に抽出された25~44歳の働く女性約3090名を対象に、米国産婦人科学会によるPMS診断基準を元にしたスクリーニング検査、QOL(SF-36)および生産性損失の測定を行った。
5.一般住民を対象とした大規模住民コホートにおいて、過去13年間の追跡結果のデータリンケージで骨粗鬆症検診の効果を検証した。
6. 女性特有の疾病に予防における甲状腺異常を検出するための甲状腺機能(TSH , FT4)項目測定の有効性を解明するため、住民コホート女性参加者のTSH値、free T4値の測定とその解析おこなった。
結果と考察
1.子宮内膜症は女性の生活に大きな負担を与えていることが見込まれており、その要因は多くの場合早期に適切な治療を受けないことに起因すると予測されていた。したがって、早期に適切な治療を受けることで、労働生産性などの疾病負担の軽減が期待される。
2.自己式調査の解析の結果、効用値を下げる月経随伴症状、労働時間全体の中での生産性の低下率はかなり個人差が大きいこともわかった。
3.子宮頸がんに関しては、20-30歳代では、世帯収入、HR-QOLの身体的サマリースコア、40-60歳代では、がん検診の受検信念、ヘルスリテラシーとの関連が有意となった。乳がんに関しては、20-30歳代の女性では、HR-QOLの身体的サマリースコア、40-60歳代の女性では、がん検診の受検信念・ヘルスリテラシー(との関連が明らかになった。
4.受診勧奨効果は限定的であったが、受診者ではわずかながら月経随伴症状の改善傾向が示された。未受診者の多くは自身の症状を「受診するには軽すぎる」「病気ではない」と捉えていることから、医学的介入の必要性や効果に関するより詳細な情報提供が必要と考えられる。
5.過去13年間5回の検診結果のデータリンケージを実施し、データセットを完成した。このデータセットの解析を実施し、骨粗鬆症検診参加の有効性を明らかにした。
和歌山県山村、漁村における大規模住民コホート第3回調査の女性参加者において状腺機能検査を実施することが出来、これにより地域在住中高年女性における甲状腺機能の実態と要介護発生リスク、死亡リスクとの関連を把握することが出来た。
結論
本研究では様々な対象を標的としてアンケート・聞き取り調査、Systematic review、数理学的解析など多彩な手法を用いて解析を行っている。これまでに検討が不十分であった子宮内膜症、月経困難症、更年期障害、PMSおよびPMDDに加え、女性の視点で特化した骨粗鬆症、甲状腺機能障害などに対し、本研究では新たな視点をもって検討していることから、最新かつユニークな知見を得ることができたものと考えている。

公開日・更新日

公開日
2023-07-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202110001B
報告書区分
総合
研究課題名
女性特有の疾病に対する健診等による介入効果の評価研究
課題番号
19FB1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大須賀 穣(国立大学法人 東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 知行(国立大学法人 東京大学 医学部附属病院)
  • 荒川 一郎(東京大学 大学院医学系研究科・医学部)
  • 五十嵐 中(横浜市立大学 医学群(健康社会医学ユニット))
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
  • 杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部看護学科)
  • 前田 恵理(秋田大学大学院医学系研究科衛生学・公衆衛生学講座)
  • 松崎 政代(大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻)
  • 吉原 愛(伊藤病院)
  • 平池 修(和田 修)(東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科)
  • 吉村 典子(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター ロコモ予防学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 女性の健康の包括的支援政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、平成29年度に東京大学産婦人科学大須賀穣教授を班長として開始された「女性の健康の社会経済学的影響に関する研究事業」を発展させ、女性に頻度の多い疾患を多面的かつ医療経済学的に評価し、社会の健康支援体制構築に役立てることを主たる目的として、医療経済、臨床、疫学など幅広い視点から多くの研究者に参画してもらい研究を遂行した。
研究方法
子宮内膜症、月経がQOLや生産性に与える影響、がん検診における医療技術評価の有効性、骨粗鬆症、甲状腺疾患など様々な対象を標的としてアンケート・聞き取り調査、Systematic review、数理学的解析など多彩な手法を用いて解析を行った。
結果と考察
1.子宮内膜症は女性の生活に大きな負担を与えていることが見込まれており、その要因は多くの場合早期に適切な治療を受けないことに起因すると予測されていた。したがって、早期に適切な治療を受けることで、労働生産性などの疾病負担の軽減が期待される。
2.自己式調査の解析の結果、効用値を下げる月経随伴症状、労働時間全体の中での生産性の低下率はかなり個人差が大きいこともわかった。
3.子宮頸がんに関しては、20-30歳代では、世帯収入、HR-QOLの身体的サマリースコア、40-60歳代では、がん検診の受検信念、ヘルスリテラシーとの関連が有意となった。乳がんに関しては、20-30歳代の女性では、HR-QOLの身体的サマリースコア、40-60歳代の女性では、がん検診の受検信念・ヘルスリテラシー(との関連が明らかになった。
4.受診勧奨効果は限定的であったが、受診者ではわずかながら月経随伴症状の改善傾向が示された。未受診者の多くは自身の症状を「受診するには軽すぎる」「病気ではない」と捉えていることから、医学的介入の必要性や効果に関するより詳細な情報提供が必要と考えられる。
5.過去13年間5回の検診結果のデータリンケージを実施し、データセットを完成した。このデータセットの解析を実施し、骨粗鬆症検診参加の有効性を明らかにした。
和歌山県山村、漁村における大規模住民コホート第3回調査の女性参加者において状腺機能検査を実施することが出来、これにより地域在住中高年女性における甲状腺機能の実態と要介護発生リスク、死亡リスクとの関連を把握することが出来た。


結論
これまでに検討が不十分であった子宮内膜症、月経困難症、更年期障害、PMSおよびPMDDに加え、女性の視点で特化した骨粗鬆症、甲状腺機能障害などに対し、本研究では新たな視点をもって検討していることから、最新かつユニークな知見を得ることができたものと考えている。

公開日・更新日

公開日
2023-07-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202110001C

収支報告書

文献番号
202110001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
11,996,000円
差引額 [(1)-(2)]
4,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,225,464円
人件費・謝金 0円
旅費 104,540円
その他 1,966,304円
間接経費 2,700,000円
合計 11,996,308円

備考

備考
自己資金:308円

公開日・更新日

公開日
2022-12-07
更新日
-