難治性疾患に関する有効な治療法選択等のための情報収集体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
200834002A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性疾患に関する有効な治療法選択等のための情報収集体制の構築に関する研究
課題番号
H18-難治・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 翔二(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 永井 正規(埼玉医科大学医学部公衆衛生学・疫学)
  • 宮坂 信之(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科学分野)
  • 木内 貴弘(東京大学医学部附属病院大学病院医療情報ネットワーク研究センター)
  • 名川 弘一(東京大学腫瘍外科)
  • 針谷 正祥(東京医科歯科大学大学医歯学総合研究科薬害監視学)
  • 伊藤 高司(日本医科大学情報科学センター)
  • 吾妻 安良太(日本医科大学内科学講座呼吸器・感染・腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
根本的な治療法が確立しておらず、かつ後遺症を残すおそれが少ない自己免疫疾患や神経疾患等の不可逆的変性をきたす難治性疾患に対して、重点的・効率的に研究を行うことにより進行の阻止、機能回復・再生を目指した画期的な診断・治療法の開発を行い、患者のQOLの向上を図ることを目的として展開されてきた。その結果、難治性疾患の診断・治療等の臨床に係る科学的根拠を集積・分析し、医療に役立てられており、また、重点研究等により見出された治療方法などを臨床研究において、実用化につなげる等治療法の開発といった点において画期的な成果を得ている。このように、難治性疾患の対象である123疾患については、近年の医学研究の進歩等によってその予後は改善しつつあるが、その一方で、疾患に関するデータの収集及び疾患横断的な治療効果の客観的・定量的な評価が十分だとは言い難い。
このため、今後すべての難治性疾患についてデータベースを作成し、難治性疾患患者の予後等の実態の客観的・定量的な把握をし、体系的かつ組織的に行う治療の有効性等の評価を行うことにより、難治性疾患患者への適切な医療の提供などが可能になり、今後の難治医療行政にも大きく貢献すると考えられる。
研究方法
1.難治性疾患定点観測体制の構築に向けた検討
2007年度に123疾患の登録システムのデータフォーマットを作成するために、実際に稼動している難治性疾患およびその他の登録システムのヒアリング(郵送)をし、各システムの運用・セキュリティー・コスト・問題点等の項目の比較検討を行った38班のうち、継続的にデータ収集を行っている臨床研究班に実際にヒアリングを行い、現状調査を行う。


2.難治性疾患定点観測のデータフォーマットの検討
難治性疾患臨床研究班で独自に作成しているデータフォーマットについて検討した。
その上で疾患横断的な治療効果の評価項目(ADL/QOLおよび重症度)の指標について具体的な検討を
行う。
結果と考察
1.難治性疾患定点観測体制の構築に向けた検討
難治性疾患克服研究班臨床調査研究班5班および独自でデータベース登録している研究班の班長および班員にヒアリングをし、現状調査を行った。そこで、各班における情報収集体制の現状を、「2.難治性疾患定点観測のデータフォーマットの検討」を含め、各班独自の評価項目等も把握することができた。



結論
各臨床調査研究班の現状把握のため、ヒアリングを行い、情報収集体制のより具体的な現状を把握する事ができた。このようなデータ収集の現状把握は今まで行われていなかったことなので、これからのデータ収集体制を構築する第一歩になったのではないか。

公開日・更新日

公開日
2009-04-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200834002B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性疾患に関する有効な治療法選択等のための情報収集体制の構築に関する研究
課題番号
H18-難治・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 翔二(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 永井 正規(埼玉医科大学医学部公衆衛生学・疫学)
  • 宮坂 信之(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科学分野)
  • 木内 貴弘(東京大学医学部附属病院大学病院医療情報ネットワーク研究センター)
  • 名川 弘一(東京大学腫瘍外科)
  • 針谷 正祥(東京医科歯科大学大学医歯学総合研究科薬害監視学)
  • 伊藤 高司(日本医科大学情報科学センター)
  • 吾妻 安良太(日本医科大学内科学講座呼吸器・感染・腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定疾患研究事業は根本的な治療法が確立しておらず、かつ後遺症を残すおそれのある自己免疫疾患や神経疾患等の不可逆的、進行性、難治性疾患に対して重点的・効率的に研究を行うことにより進行の阻止、機能回復・再生を目指した画期的な診断・治療法の開発を行い患者のQOLの向上を図ることを目的として展開されてきた。その結果、難治性疾患の診断・治療等臨床に係る科学的根拠を集積・分析し医療に役立てられており、また重点研究等により見いだされた治療方法等を臨床調査研究において実用化につなげる等の成果が上げられてきた。
このような状況の中で事業の対象となっている疾患について研究成果や予後改善の程度、ADL改善の程度、またどの程度医療費が使われているのか等について統一的・横断的・客観的・定量的・定常的に評価するシステムを構築する必要がある。
本研究を遂行することによって123の難治性疾患患者のデータベースの作成すること自体が大きな研究成果である。これによって難治性疾患に対する正確な治療の適応や効果等を明らかにすることが可能となり、また長期的には本研究を通じて医療費の軽減に繋がることが期待される。さらに難治性疾患患者の予後等の実態の客観的・定量的な把握を体系的かつ組織的に行い、難治性疾患患者への適切な医療の提供等が可能になり今後の難病医療行政にも大きく貢献すると考えられる。
研究方法
本研究では難治性疾患123疾患を対象とし(1)調査項目や方法等を定点観測で入力できるようデータ登録システムの比較検討を行なう。(2)生命予後、ADL/QOL等の生活指標と大別し異なる疾患の個別指標を考慮しつつも疾患間の整合性をとり、共通指標の検討を行なう。
結果と考察
前項(1)および(2)のため現状の登録システムについて調査票を各臨床班に郵送し、調査を行なった。また回答が得られた臨床研究班の中から5班および難治性疾患以外で登録システムを導入している方から実際にヒアリングを行った。そこで各班ごとの調査項目や方法等の検討を行うことができ、またその中での課題を把握することができた。

結論
対象疾患の実態把握のため統一的・横断的・客観的・定量的・定常的に評価するシステムを構築するため、これまでに実施したアンケート調査をもとに疾患共通の生命予後調査ならびにQOL評価項目を設定し、また疾患特異的評価項目の選定のため特定疾患調査研究班との連携を模索した。

公開日・更新日

公開日
2009-05-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200834002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
123特定疾患に関する疾患横断的な情報収集体制の構築のために、現行難病認定・更新システムと「個人調査票」情報の研究活用状況、研究班独自の患者登録システム、オンライン疾患登録システムの技術的可能性、疾病横断的に共通するADL/QOL等基本情報項目と情報提供モチベーションの維持等について調査研究を行い、定点観測、発生源入力を基本とした特定疾患登録システムの基本要件を明らかにした。生命予後と医療費負担に関する情報収集は、別途の方法が必要とした。
臨床的観点からの成果
現在稼働中の6つのオンライン患者登録システムを調査し、技術レベル、コスト、データマネージメント機能、マネージメントコスト、医学関係知識の充実度、長期的管理からみた安定性、等を評価検討した結果、難治性疾患の情報収集をWebオンライン登録システムによって行うことがほぼ可能であると判断し、各システムの長所・短所を明らかにした。登録システムの維持には、公的な常設組織による運営と、情報入力者である医師のモチベーションを高めることの重要性を明らかにした。
ガイドライン等の開発
1)入力項目は障害の程度等疾患共通の基本情報に少数(10項目以内)の疾患別医学項目を加えたものが適当であり、障害の程度についてはADLやIADLのほか共通尺度としてPreformance Status、QOLについてはSF36Ver.2が適当と判断された。2)医療費負担を病院会計システムから算出するための特定疾患コード(ICD改良)を作成し、A大学病院で患者抽出を試行した。その結果、保険病名、疑い病名、併存疾患医療費の除外、および院外処方分の把握等の問題点が明らかとなった。
その他行政的観点からの成果
臨床班に対するアンケート調査によって、以下の点を明らかにした。
治療研究対象45疾患に関して、37班中(未回答1)16班で37疾患について「個人調査票」が調査研究に活用されており、欧文誌への研究成果の発表もなされていた。また、19班で36疾患に関して、班独自の患者登録が行われていたが、123疾患全体としては20%、予後調査にかかわる追跡調査の実施は12%に留まっていた。
その他のインパクト
38臨床班で行っている情報収集体制のうち、「継続的」に追跡調査を実施している5班、および独自の疾患で情報収集を行っている1班の聞き取り調査を行ない、システムの詳細とデータマネージメント体制等を把握した。その中で、1つの疾患に複数研究グループによる小研究テーマを集積し、その中に共通基本情報を包含させて必要な情報収集する積み上げ方式があり、研究班主体の今後の情報収集のあり方として評価された。

発表件数

原著論文(和文)
9件
臨床調査個人票を用いた情報収集および情報分析
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
坪井一哉,鈴木貞夫,永井正規 他
臨床調査個人票を用いたゴーシェ病の疫学像の解析
日本先天代謝異常学会雑誌  (2008)
原著論文2
川戸美由紀,橋本修二,永井正規 他
感染症発生動向調査に基づく検討(第3報) 医療施設数更新による罹患数推計値の変化
日本公衆衛生学会総会抄録集  (2008)
原著論文3
川戸美由紀,橋本修二,永井正規 他
感染症発生動向調査に基づく検討(第3報) 医療施設数更新による罹患数推計値の変化
日本公衆衛生学会総会抄録集  (2008)
原著論文4
永井正規,太田晶子,橋本修二 他
感染症発生動向調査に基づく検討(第1報) 警報・注意報の基準値の変更
日本公衆衛生学会総会抄録集  (2008)
原著論文5
黒沢美智子,稲葉裕,永井正規
稀少難治性皮膚疾患「膿疱性乾癬」の臨床疫学像 臨床調査個人票データを用いて
日本公衆衛生学会総会抄録集  (2008)
原著論文6
太田晶子,井戸正利,永井正規 他
都道府県における特定疾患臨床調査個人票の電子入力状況と課題
日本公衆衛生学会総会抄録集  (2008)
原著論文7
仁科基子,石島英樹,永井正規 他
特定疾患臨床調査個人票の電子入力状況
日本公衆衛生学会総会抄録集  (2008)
原著論文8
野島正寛,森満,永井正規 他
臨床個人調査票による劇症肝炎の臨床疫学像 成因と初発症状を中心とした検討
日本消化器病学会雑誌  (2009)
原著論文9
西内啓,青木則明,木内貴弘
【わが国における高血圧大規模臨床試験の現況】 わが国における臨床試験登録の現状と今後
循環器科  (2008)
原著論文10
Arisawa K,Uemura H,Nagai M etc al.
Dietary intake of PCDDs/PCDFs and coplanar PCBs among the Japanese population estimated by duplicate portion analysis: a low proportion of adults exceed the tolerable daily intake.
Environ Res  (2008)
原著論文11
Uemura H,Arisawa K,Nagai M etc al.
Associations of environmental exposure to dioxins with prevalent diabetes among general inhabitants in Japan.
Environ Res  (2008)
原著論文12
Uemura H,Arisawa K,Nagai M etc al.
PCDDs/PCDFs and dioxin-like PCBs: recent body burden levels and their determinants among general inhabitants in Japan.
Chemosphere  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-