文献情報
文献番号
200834001A
報告書区分
総括
研究課題名
黄斑変性カニクイザルを用いた補体活性抑制剤による加齢黄斑変性の予防・治療法の確立と情報収集解析システムの開発
課題番号
H18-難治・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 岳(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター(感覚器センター) 分子細胞生物学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 安川 力(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
- 寺尾 恵治((独)医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センター)
- 吉川 泰弘(東京大学大学院・農学生命科学研究科)
- 溝田 淳(順天堂大学浦安病院眼科)
- 村上 晶(順天堂大学医学部眼科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
黄斑は角膜と水晶体によって収束した光が網膜上で結像する領域で、光を感じる視細胞が最も密に集中する。ここは視力を決定する重要な部位であり、障害されると著しい視力低下、ひいては失明に至る。代表的な疾患として難治性加齢疾患の加齢黄斑変性がある。黄斑は高解像度の視力を獲得した霊長類や一部の鳥類でのみ発達しており、通常の実験に使用されるマウス、ラット、モルモットなどには存在しない。医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターで発見された黄斑変性カニクイザルは生後2年でドルーゼンを発症する世界で唯一の霊長類モデルである。我々はこの霊長類モデルの病理学的、生理学的解析を行い、ドルーゼン成分に補体活性分子が含まれることから補体活性経路が合流するC3補体因子の抑制によってドルーゼンの蓄積を抑制し、加齢黄斑変性の予防法として利用できるか疾患サルを用いて薬効試験を行った。
研究方法
本研究では1)疾患サルの病理学的解析(局所ERG等)、2)補体因子C3bの抑制薬(Compstatin)による1年間の硝子体投与による薬効試験、3)加齢黄斑変性とポリープ状脈絡膜血管症について日本人を対象とした全ゲノム相関解析(Genome Wide Association Study)、4)質量分析計を用いた血漿プロテオーム解析による疾患バイオマーカーの探索を行った。
結果と考察
ドルーゼンが黄斑に多く観察される個体については黄斑の視機能が著しく低下していることが明らかになった。補体因子C3bの抑制によって投与後6ヶ月でドルーゼンが消失した。日本人の加齢黄斑変性とポリープ状脈絡膜血管症は全ゲノム相関解析によって日本では初めてARMS2とHTRA1遺伝子の遺伝子多型と最も強く相関することを発見した。血漿プロテオームによって疾患特有のタンパク質が同定された。
結論
本研究によって世界で初めて補体抑制によってドルーゼンが消失する現象が観察された。日本人の加齢黄斑変性とポリープ状脈絡膜血管症は全ゲノム相関解析によって日本では初めてARMS2とHTRA1遺伝子の遺伝子多型と最も強く相関することを発見した。血漿プロテオームによって疾患特有のタンパク質が同定された。これらの全ての内容について特許出願された。
公開日・更新日
公開日
2009-04-15
更新日
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