スポーツ・運動の統合失調症の認知機能・高次脳機能障害に対する効果に関する研究

文献情報

文献番号
200833075A
報告書区分
総括
研究課題名
スポーツ・運動の統合失調症の認知機能・高次脳機能障害に対する効果に関する研究
課題番号
H20-こころ・若手-025
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 英彦(独立行政法人 放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 大久保 善朗(日本医科大学 精神神経科)
  • 加藤 元一郎(慶應義塾大学 精神神経科)
  • 松浦 雅人(東京医科歯科大学 保健衛生学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非定型抗精神病薬が広く使用されるようになり、それに特徴的な副作用である体重増加、血糖上昇に対する認識は、医療関係者だけでなく、患者やその家族の間でも高まっており、運動療法の関心や重要性は増している。しかし、概して統合失調症患者は運動量が少なく、運動学習が不得手で、運動プログラムの参加を中断してしまうことも見受けられる。これまで、前頭葉―線条体いった運動実行系の障害に着目した研究は多くなされてきた。ミラーニューロンシステム(MNS)の発見以来、運動実行系と運動認知系とは互いに影響し合い、オーバーラップする面も多いことがわかってきた。初年度は統合失調症の運動認知障害の神経基盤を明らかにし、認知リハビリテーションにも応用可能な運動療法の開発の手掛かりを得ることを目的とした。
研究方法
統合失調症患者群と健常対照群による横断的研究を行った。スポーツ関連動作として、バスケットボール関連動作の動画を作成した。スポーツに関連のない動作として、バスケットコート上で、バスケットボールのルールや文脈とは無関係な動作をしている動画を作成した。バスケットボール関連動作と無関連動作を交互に提示するブロックデザインでfMRIを撮像した。
結果と考察
健常者ではバスケットボールに関連した目的志向的な動作はバスケットボールに関連しない動作と比べて、superior temporal sulcus (STS)やinferior parietal lobule(IPL)などのMNSのほか、体の部分に反応するextrastriate body area(EBA)においてもより強く賦活した。患者では、STSやEBAの活動低下を認めた。さらに患者におけるEBAの活動の程度とPANSSの陰性症状点、一般的精神病理点との間に負の相関を認めた。MNSの一部であるIPLのほか、MNSの入り口に位置しているとも考えられるEBAの機能異常は、他者の運動をダイナミックにとらえることの困難さを反映していると考えられ、統合失調症の運動認知障害だけでなく、運動学習や他者の行動の理解といった機能の障害にもつながる可能性があると考えられた。
結論
EBAの機能異常は、統合失調症の運動認知障害だけでなく、運動学習や他者の行動の理解といった機能の障害にもつながる可能性があると考えられた。今後は、スポーツのMNSの活動や認知機能への影響を調べる予定である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-13
更新日
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