行動経済学を用いた健康無関心層の類型化に基づく効果的な保健指導手法の確立

文献情報

文献番号
202109046A
報告書区分
総括
研究課題名
行動経済学を用いた健康無関心層の類型化に基づく効果的な保健指導手法の確立
課題番号
21FA1009
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
山本 精一郎(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 平井 啓(大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター/大学院医学系研究科生体機能補完医学講座/人間科学研究)
  • 水野 篤(聖路加国際大学 急性期看護学)
  • 岡 浩一朗(早稲田大学 スポーツ科学学術院)
  • 佐々木 敏(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 中谷 英仁(静岡社会健康医学大学院大学)
  • 佐藤 洋子(静岡社会健康医学大学院大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定保健指導の無関心者に対して健康行動を促すために、無関心者の類型化を試み、類型ごとに行動経済学的アプローチを中心とした行動変容方法を開発・評価することが本研究の目的である。
研究方法
1. 特定保健指導の無関心層の特徴を明らかにするために、これまでの研究のレビューを行うとともに、無関心期の対象者に対し、インタビュー調査を行う。これまでの研究のレビューとして、無関心層の特徴および行動意図に影響を与える行動科学・行動経済学的なアプローチについて調べる。インタビュー調査では、無関心者の特徴の洗い出しを行う。
2. これまでの研究のレビュー及びインタビュー調査に基づいて、無関心層の類型化を行うためのインターネット調査(セグメンテーション調査)を行う。項目として、将来の健康リスクの認識、これまでの疾患経験、疾患に対する知識、行動経済学的概念(健康の参照点、現在バイアス、など)を調べる。調査結果をもとに、クラスター分析、因子分析等の統計的な手法も利用し、無関心層の類型化を行い、各類型毎に行動経済学的特徴を調べる。
結果と考察
まず最初に、行動経済学的アプローチが有効とされる類型化についてシステマティックレビューを実施した。システマティックレビューの結果では、大きく3つの要素:対象・チャンネル・背景理論が重要であり、これらを複合的に考慮した類型化が行動経済学的アプローチを有効に活用できると考えられた。
システマティックレビューやインタビューの結果などをもとに、類型化の仮説を立て、それを確認するためにインターネット調査を行い、1125名の回答を得た。トランスセオレティカルモデルの各ステージと各因子の関連を調べたところ、決断力、現状満足、将来への不安がない、疾患リスクの認識が低いといった項目で無関心期と維持期の回答者で似た傾向を示した。逆に無関心期のほうが維持期よりも回答割合が少なかった項目は、自分の将来への期待、本気になれば健康状態を改善できる、自分の将来への期待、疾患の重大性の認識などであった。無関心期と関心期については、決断力の有り・無し、現状満足有り・無し、将来への期待無し・有り、本気になっても健康行動ができない・できる、重大な病気にならないと思う・思わないといった差異が見られた。
 無関心期の対象者は、ヘルス・ビリーフモデルの概念の中で「疾患の重大性の認識」が低い傾向にあること、行動経済学的な特徴の中で、「病気にならないと思っている者が多い」傾向にあることから、健康現状維持の参照点を持っているものが他のステージよりも多いことが示され、これらが行動変容のコミュニケーショントリガーとして使える可能性があることが示された。
 無関心期及び関心期の類型化のために因子分析を行ったところ、人生の満足度や将来への期待、自分の行動に対する自信、行動することによる利得への信頼などと関連する「自分の行動に対する自信」といったような因子と、将来の生活に対する不安のなさ、将来の病気への易罹患性や重大性に関する認識の薄さといった項目と関連する「楽観的」とでもいえるような因子が抽出された。しかし、この2因子ではあまり明確に類型化できなかったため、家族歴(家族ががんや認知症になった)や、独自の健康法の実践者などといった項目も含めて類型化をさらに検討する予定である。今後、それぞれの類型化によるセグメントに対し、他の因子との関連を調べてセグメントの特徴を洗い出すとともに、行動科学的・行動経済学的概念との関連を調べることにより、コミュニケーションストラテジーを立てる予定である。
結論
過去研究のレビューより、行動経済学的なアプローチに関しての類型化可能性が高い要素として、対象・チャンネル・背景理論の3つの要素が挙げられた。これまでの研究ではこれらの要素を複合的に選択し、介入可能性を検討していることが明らかとなった。
 インターネット調査の結果から、TTMのステージと多くの健康行動に関連する要因との関連が明らかになった。今後は類型化をさらに進め、類型毎のコミュニケーション戦略を立てる予定である。

公開日・更新日

公開日
2023-03-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202109046Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,940,000円
(2)補助金確定額
3,672,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,268,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 25,330円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 2,507,285円
間接経費 1,140,000円
合計 3,672,615円

備考

備考
自己資金:615円

公開日・更新日

公開日
2022-12-08
更新日
-