ライソゾーム病に対するケミカルシャペロン療法の確立

文献情報

文献番号
200833072A
報告書区分
総括
研究課題名
ライソゾーム病に対するケミカルシャペロン療法の確立
課題番号
H20-こころ・一般-022
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 義之(国際医療福祉大学 大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 耕策(鳥取大学 医学部)
  • 松田 潤一郎(医薬基盤研究所 生物資源研究部)
  • 難波 栄二(鳥取大学 生命機能研究支援センター)
  • 榊原 康文(慶應義塾大学理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性ライソゾーム病に対するケミカルシャペロン療法の確立を目的とする。多種の化合物を対象として、新しいシャペロンを探索する。シャペロンと変異蛋白質の分子反応解析により、よりよいシャペロン効果の達成を図る。モデル動物実験で効果と毒性を調べ、最適の投与法を検討する。基礎的データの集積後、動物毒性試験、ヒト個体への臨床試験を開始する。
研究方法
NOVのマウス組織・体液内濃度測定を行った。さらに、NOEVとβ-ガラクトシダーゼ、NOVとβ-グルコシダーゼの結合動態を、分子動力学的シミュレーションにより計算した。新しい変異発現マウスの開発を試みた。NOEVのシャペロン効果を脳内遺伝子発現の側面からマイクロアレイ法により解析し、データのソフトウェア解析を行った。構造の異なる二環系アザ糖誘導体、1-N-イミノ糖誘導体の酵素阻害・シャペロン効果を調べた。
結果と考察
NOV投与後、脳内濃度が腎臓の5-10%に達した。シャペロンと変異酵素蛋白質の分子結合強度をシミュレーション実験により計算し、酸性条件で結合が減少し複合体が解離することを理論的に証明した。モデルマウス脳のマイクロアレイ解析で、多数の遺伝子発現がNOEV投与により正常化した。これまでより低い投与量でNOEVの臨床効果をたしかめた。疾患、病型、進行ステージにより、異なった検査項目の選択がマウスの臨床評価に有効であった。二環系アザ糖化合物がゴーシェ病細胞にNOVと同等のシャペロン効果を示したので、スペイン・日本共同の特許出願を行った。1-N-イミノ糖に極めて強力なβ-ガラクトシダーゼ阻害剤を発見した。この化合物は変異酵素分子に結合し、安定化した。
結論
新しいシャペロンとモデル動物を開発した。多面的な解析により、シャペロン治療に伴う細胞内分子動態の詳細を明らかにした。血液脳関門の存在のため、神経遺伝病一般を対象とする治療実験はこれまで極めて困難であった。低分子化合物によるシャペロン療法は、この問題の解決に大きな意味を持つ。この治療が多くの遺伝病に適用されるようになることを期待する。対象疾患の拡大により、心身障害児・者への予防・治療的対応が可能になるであろう。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
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