HTLV-Iの生体内感染拡大機序の解明とその制御によるHAM治療法の開発

文献情報

文献番号
200833070A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-Iの生体内感染拡大機序の解明とその制御によるHAM治療法の開発
課題番号
H20-こころ・一般-020
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
出雲 周二(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科附属 難治ウイルス病態制御研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 白木 洋(横浜薬科大学 健康薬学科)
  • 星野 洪郎(群馬大学 医学系研究科)
  • 中村 龍文(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 )
  • 久保田龍二(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 )
  • 梅原 藤雄(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 )
  • 齊藤 峰輝(琉球大学大学院 医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HAMはHTLV-1の慢性感染がひきおこす難治性神経疾患で、国内に約1500名の患者が慢性進行性の痙性対麻痺、膀胱直腸障害に苦しんでいる。既存の治療法は効果不十分で根治療法の確立は急務である。ウイルス量の増大はHAM発症および症状増悪の最大のリスクで、より適切な治療及び発症予防には感染者体内のHTLV-1感染細胞を減少させることが重要である。本研究の目的は感染レセプターを同定し、生体内でのウイルス感染拡大の機序を明らかにし、その制御による治療法の開発をめざす。
研究方法
本研究の柱として、1)マイクロアレー、レクチンアレーなどの網羅的解析法をもちいたウイルスシナプス形成に関与する分子の同定、2)感染に関与するウイルス分子の解析、3)感染細胞でのウイルス産生放出機構の解析、4)HAM発症機序の解析、の研究テーマを設定し、分担研究をおこなった。
結果と考察
ウイルスレセプター同定のため、HTLV-1非感染者および感染者のCD4陽性リンパ球の共培養により、高率に感染が成立する感染系の探索を行ない、HAM患者リンパ球の感染効率の違いを定量的に評価する実験系の確立をめざした。HAM患者、健常キャリアのPBMCを用いた培養系では非感染細胞株との合胞体形成はほとんどみられず、膜融合促進剤添加でも増強効果はみられなかった。抗体産生細胞の除去や接着分子の処理が必要であることが明らかとなった。一方、ウイルス分子の解析により、HTLV-1 エンベロープ蛋白を構成するgp46とgp21のS-S結合が37℃処理により切断され、gp46が離脱することがウイルス粒子の感染性の消失に関与していること、gp46の197Asp-205Proの領域(Asp-His-Ile-Leu-Glu-Pro)が感染に重要であることを明らかにした。また、感染細胞の分子機構の解析から、small GTPaseの一つであるRap1の活性化により感染効率が有意に上昇すること、ペントサン多硫酸ナトリウムがgp46の標的細胞上のヘパラン硫酸プロテオグリカンへの接着を阻止し、強い感染阻害活性を持っていることを明らかにした。発症病態の解析からはIL-17の発現、Bcl-3 、PI3キナーゼ-AKT経路の活性化が関与し発症にかかわっており、治療の標的分子となりうることを示した。
結論
HTLV-1の生体内での感染拡大阻止が治療の標的として有用であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-