適切な睡眠・休養促進に寄与する「新・健康づくりのための睡眠指針」と連動した行動・習慣改善ツール開発及び環境整備

文献情報

文献番号
202109039A
報告書区分
総括
研究課題名
適切な睡眠・休養促進に寄与する「新・健康づくりのための睡眠指針」と連動した行動・習慣改善ツール開発及び環境整備
課題番号
21FA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
栗山 健一(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 兼板 佳孝(日本大学 医学部 社会医学系公衆衛生学分野)
  • 尾崎 章子(東北大学大学院医学系研究科 保健学専攻 老年・在宅看護学分野)
  • 田中 克俊(北里大学大学院医療系研究科)
  • 佐伯 圭吾(奈良県立医科大学 医学部 疫学・予防医学講座)
  • 三島 和夫(国立大学法人秋田大学 大学院医学系研究科医学専攻 病態制御医学系 精神科学講座)
  • 鈴木 正泰(日本大学医学部 精神医学系精神医学分野)
  • 角谷 寛(滋賀医科大学 精神医学講座)
  • 渡辺 範雄(京都大学大学院 医学研究科精神医学)
  • 岡田 清夏(有竹 清夏)(公立大学法人埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
  • 駒田 陽子(明治薬科大学 薬学部)
  • 志村 哲祥(東京医科大学 精神医学分野)
  • 井谷 修(日本大学医学部 社会医学系公衆衛生学分野)
  • 吉池 卓也(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部)
  • 橋本 英樹(株式会社プロアシスト R&D企画部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,380,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
適正な睡眠時間の確保とともに「睡眠休養感」の向上が健康寿命の延伸に貢献することが明らかとなり、「睡眠休養感」の悪化防止・改善に寄与する行動・習慣を明らかにし、国民一人ひとりがこれを確認し、健康増進に役立てるシステム構築が求められている。このために、本研究課題では、個人が使用可能な睡眠健康チェックボックスの開発と、これに基づく次期「健康づくりのための睡眠指針」の改定に資する資料作成を目標とする。
 働き盛り世代の健康増進を目指す上では、職場における取組が有効である。このため、労働者を対象とした、睡眠健康チェックと睡眠衛生指導を組み合わせた職域コホート研究を実施し、働き盛り世代の休養・睡眠健康を増進するための、職場における取組の基本的枠組み(モデル事業)を提案する。
研究方法
令和3年度は、既存の疫学データの解析および、先行研究のシステマティックレビュー、ナラティブレビューを実施し、次期「健康づくりのための睡眠指針」およびこれに基づく睡眠健康チェックボックスに格納する、生活習慣・睡眠衛生項目の抽出を進める。また職域コホート研究を開始し、令和4年度中に研究を完了させることを目指す。
上記目標到達のために、以下の4課題を「疫学調査班」「職域コホート班」「プラットフォーム開発班」の3チームに分配し、各チームが相互に補完しながら遂行する体制とした。
結果と考察
① 睡眠休養感の悪化・改善因子の検討
 土木健康保険組合員の健康診査データの解析結果から、不適切な食習慣(早食い、就寝時間近くの食事、夜食、朝食欠食)および、低い身体活動・能力(非定期的な運動、低い身体活動、および遅い歩行速度)が、睡眠休養感の悪化と関連し、これの改善により睡眠休養感の向上が期待できることが示唆された。また、船橋市の市民調査からは、上記に加え咀嚼機能や周囲のサポートの改善が睡眠休養感を向上させ、疾病数や未就労、ストレスの増加が睡眠休養感を低下させることが示唆された。
 米国NSRRデータの解析より、睡眠時間は主観・客観評価ともに睡眠休養感に影響し、相互促進的な関係性にあることが示唆された。さらに、睡眠時無呼吸の悪化が睡眠休養感の低下と関連し、両者の共存が総死亡リスクを高めることも示唆された。
睡眠休養感に関するシステマティックレビューでは7686件の研究が抽出され、このうち重複論文522件を除外し、合計7,164件の研究を探索対象とした。

② 次期「健康づくりのための睡眠指針」策定のための新たな睡眠健康要因
ナラティブレビューの結果、日中の光曝露量増加は良好な主観的、客観的睡眠指標と関連し、夜間の寝室環境における光曝露量増加は不良な客観的睡眠指標および高い睡眠障害有病率と関連した。夜間の騒音環境も睡眠を妨害する要因として重要であることが示唆された。温熱環境が睡眠に及ぼす影響に関しては、低室温より高室温による睡眠への悪影響がより問題となる可能性が示唆された。また、就寝前の入浴が速やかな入眠をもたらす可能性が示唆された。

③ 睡眠健康チェックボックスおよびオンラインプラットフォームの整備
令和3年度は睡眠健康チェックボックスのフォーマット作成に取り組んだ。本チェックボックスを社会実装するためには、質問項目の妥当性は勿論のこと、回答のしやすさ、誤解の生じにくさ、一貫性の確保等の工夫が求められる。一般住民を対象としたWeb予備調査の結果、多くの質問項目に正当な回答がなされていたが、質問項目の整理や統合等が必要な項目も確認された。本成果は、将来の睡眠休養感の変化を予測し、悪化予防・改善を促すためのオンラインアプリケーション開発に発展させる。

④ 職域における睡眠健康増進の取り組みの検討
 働き盛り世代の生活・睡眠衛生改善において、職場の果たす役割は大きい。このため、職域における睡眠衛生指導の有用性を検証するとともに、モデル事業として実装可能性も併せて検討可能なコホート研究を開始した。令和3年度中に倫理委員会の審査を受け、研究実施の承諾を得た。3つの職域サイトより実施承諾を得た。承諾が得られた職域サイトより順に、研究への組み入れを行い、研究データの取得を開始した。
結論
次期「健康づくりのための睡眠指針」およびこれに基づく睡眠健康チェックボックスに格納する、生活習慣・睡眠衛生項目が抽出されつつあり、従来用いられている睡眠時間に加え、睡眠休養感を核とし、これらを向上・充実させるために必要な生活習慣・睡眠衛生をさらに絞り込む。
 同時に、職域コホート研究を進めることで、働き盛り世代の休養・睡眠健康を増進するための、職場における基本的枠組み(モデル事業)が定まる。さらに、この研究課題を通じて、ウェアラブルデバイス等を用いた、睡眠状態の客観計測の有用性を検証し、これを用いた睡眠健康の自発的観察を実現する試みも進める。

公開日・更新日

公開日
2022-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-10-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202109039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
7,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
200,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,074,849円
人件費・謝金 1,460,124円
旅費 0円
その他 1,645,147円
間接経費 1,620,000円
合計 7,800,120円

備考

備考
研究分担者による返還金発生のため

公開日・更新日

公開日
2022-11-08
更新日
-