健康寿命延伸を目指した禁煙支援のための研究

文献情報

文献番号
202109038A
報告書区分
総括
研究課題名
健康寿命延伸を目指した禁煙支援のための研究
課題番号
21FA1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
島津 太一(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 行動科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 順子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 行動科学研究部)
  • 渡邉 至(独立行政法人国立循環器病研究センター予防健診部)
  • 瀬在 泉(防衛医科大学校 医学教育部)
  • 谷口 千枝(愛知医科大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,420,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における喫煙率は、特に成人男性において約3~4割といまだに高い。有効性が確立された禁煙治療は、カウンセリングと薬物治療である。したがって、禁煙外来でこれらを組み合わせた治療を受けることが最も確実な禁煙方法となる。しかし、推定年間禁煙治療者数は喫煙者の約0.8%にとどまる (社会医療診療行為別統計, 2017)。そのため、禁煙希望者への支援を充実させ、禁煙外来の受診につなげることが今後の課題である。
禁煙の無関心層も含めた喫煙者にアプローチできる禁煙支援方法として、臨床や健(検)診の場で医療従事者が行う短時間禁煙支援がある。また、短時間禁煙支援で禁煙に関する情報提供や助言を行い、禁煙治療や無料禁煙電話相談へと禁煙希望者をつなげることで、禁煙成功がより高まることも報告されている (Wang, 2017; Vidrine, 2013)。この際に重要な点は、治療やサービス提供側から、禁煙希望者に能動的にアプローチすることである。しかし、その利用促進のための能動的アプローチの効果検証は、国内外において報告がない。
本研究は、我が国で普及可能な禁煙治療の利用促進戦略を明らかにし、禁煙治療利用割合および禁煙割合向上につなげることを目指す
研究方法
1. 国内の禁煙支援介入研究のエビデンスレビューと実践事例の収集
スコーピングレビューを実施し、日本の職場、地域における禁煙支援介入の研究と事例を特定した。レビューの手順は6段階のスコーピングレビューモデルに従い、(1) 研究疑問の特定、(2) 重要研究の特定、(3) 研究の選定、(4) データの抽出、(5) 結果の収集・要約・報告、(6) コンサルテーション、とした。対象文献は、日本の地域、職場、学校などあらゆるセッティングにおける禁煙支援対策についての論文または報告書とした。

2. 職域特定健診の場での短時間支援の効果についての観察研究
全国健康保険協会A支部において、支部の事業として短時間支援を実施している健診機関とそうでない健診機関の喫煙者で、ニコチン依存症管理料の算定や、一年後の禁煙割合を比較する観察研究を行う。主要評価項目は禁煙治療の初回受診とする。また、副次的評価項目は全5回の禁煙治療の完遂、喫煙割合、禁煙達成者の割合とする。
結果と考察
1. 国内の禁煙支援介入研究のエビデンスレビューと実践事例の収集
レビューの結果、4,308論文が抽出され、最終的に500件が該当論文として特定された。さらに、灰色文献にて特定された禁煙支援実施の企業および団体については、その促進要因および実装戦略を包括的に評価するため、アンケート調査を32企業/団体、インタビュー調査を11 企業/団体に実施した。これらのデータを、禁煙支援はSurgeon Generalの報告書に基づくカテゴリーで分類した。介入実施における促進阻害要因および実装戦略は実装研究のフレームワークに沿って整理した。英文原著論文のデータ抽出を完了した。
エビデンスレビューを通して職場や地域における禁煙支援について国内の知見を網羅的に整理した。現時点での結果からは、実装の促進阻害要因や実装戦略について記載している研究は限定的であった。

2. 職域特定健診の場での短時間支援の効果についての観察研究
禁煙のための短時間支援の効果について検討する観察研究実施に必要な倫理審査を受けるため、本研究についての研究計画書を作成した。職域特定健診の場での短時間支援の効果については、観察研究に研究デザインは変更されるものの、当初の研究目的、成果目標は問題なく達成される見込みである。チャンピックスの流通により禁煙外来が再開された際には、本研究で得られた効果量により介入研究のサンプルサイズ設計が可能となる。
結論
エビデンスレビューを通して職場や地域における禁煙支援について国内の知見を網羅的に整理した。今後、残りのデータ抽出を完了し、論文化をすすめる。また、レビュー結果を、効果的かつ持続的な禁煙支援方法の優良事例集としてとりまとめ、汎用モデルを提示するとともに、保険者や地域のステークホルダーに普及することを目指す。職域特定健診の場での短時間支援の効果については、作成した研究計画書に従い研究を実施する予定である。

公開日・更新日

公開日
2023-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-03-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202109038Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,446,000円
(2)補助金確定額
4,333,000円
差引額 [(1)-(2)]
113,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 3,094,713円
旅費 4,400円
その他 208,469円
間接経費 1,026,000円
合計 4,333,582円

備考

備考
自己資金582円

公開日・更新日

公開日
2022-11-15
更新日
-