循環器病に関する適切な情報提供・相談支援のための方策と体制等の効果的な展開に向けた研究

文献情報

文献番号
202109036A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器病に関する適切な情報提供・相談支援のための方策と体制等の効果的な展開に向けた研究
課題番号
20FA1023
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 享(国立大学法人京都大学 医学研究科 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 恵宏(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター)
  • 平田 健一(国立大学法人 神戸大学 大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科学分野)
  • 小室 一成(国立大学法人 東京大学大学院 医学系研究科 循環器内科学)
  • 前村 浩二(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環病態制御内科学)
  • 野出 孝一(国立大学法人佐賀大学 医学部)
  • 橋本 洋一郎(熊本市立熊本市民病院 神経内科)
  • 冨永 悌二(東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経外科学分野)
  • 藤本 茂(自治医科大学内科学講座神経内科学部門)
  • 吉田 和道(京都大学 医学部)
  • 秋山 美紀(慶應義塾大学 環境情報学部)
  • 早坂 由美子(法 由美子)(北里大学病院 トータルサポートセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,277,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中および心疾患の患者・家族に対して, 急性期治療のみならず, リハビリテーション,生活支援や復職・復学支援,介護など, 長期にわたる医療・福祉の継続的な連携支援の充実が求められている. 本研究全体の目的は, 各地のPSC(脳卒中領域)および急性期病院・高度循環器専門病院(心臓病その他の循環器病)における相談窓口とそれに該当する部署の現状と課題を明らかにし,相談窓口をどのように設置し,体制を整備し、どのように支援を行っていくかに関して, モデル構築を行なうことである.
研究方法
3つのワーキンググループ(WG)に分かれて研究を進めた.
脳卒中WG
①令和2年度に実施したアンケート調査と文献レビューを基に, 特に既存の回復期・維持期施設の相談窓口との円滑な連携に留意しつつ, 必要な構成員と必須となる業務内容を定め, 急性期病院相談窓口設置に向けた要綱およびマニュアルを作成した.
②脳卒中相談窓口設置に向けての課題とロードマップについて検討した.
循環器WG
循環器疾患患者が入院あるいは通院する施設における相談窓口と相談支援, 施設内および施設間の連携体制の現状と課題を明らかにするため, 全国の日本循環器学会研修・研修関連施設1352施設を対象に, Webを用いたアンケート調査を行った.
患者支援WG
心理・社会的アセスメントと支援を適切に実施するため, インパクト理論を援用しながら,相談支援プログラムのゴールを構造化し,それにつながるプログラムの項目を抽出した.次に,それらの支援項目の実施状況および重要と考える度合いを把握するために,日本医療ソーシャルワーカー協会会員(5541名)を対象にウェブアンケートを実施した.
結果と考察
脳卒中WG
①脳卒中相談窓口における情報提供,相談支援の内容を具体的に定めた. それに基づいて多職種による「脳卒中相談窓口マニュアル (添付資料)」を作成した.
②脳卒中相談窓口は,一次脳卒中センターのコア施設から順次設置することとした.また, 脳卒中相談窓口の構成員について「脳卒中療養相談士」を1名以上配置することとし, その資格要件として, 2022年度は, 第47回日本脳卒中学会の会期中に主催した講習会「脳卒中相談窓口講習会」および, ライブシンポジウム「脳卒中相談窓口における多職種の役割と育成:人材育成セミナー「脳卒中相談窓口」」の両方を受講した者とした. 5月13日時点で, 13,075名の受講があり, 受講証を発行した.
脳卒中における現状の課題として,多職種による, 患者・家族・介護者への多面的な相談・支援体制の不足と,アスセスの困難さが指摘されている.一次脳卒中センターに脳卒中相談窓口を設置によりこれらの問題を改善できる可能性がある.
循環器WG
調査依頼を行った1352施設の内, 回答施設621施設であり, 回答率は45.9%であった.
循環器疾患患者が入院あるいは通院する施設における相談窓口と相談支援, 施設内および施設間の連携体制の現状が明らかになった.
アンケートで明らかになった, 相談支援窓口を設置している施設の特性や, 施設から出された課題を基に, 相談支援および情報提供を行う機能を有する部門に求められる体制と業務内容を検討した.
患者支援WG
心疾患患者と脳卒中患者のそれぞれについて, 課題を明らかにした上で, 36項目の相談支援プログラムの具体案を抽出した.相談支援の実施状況と重要度の認識に関して, アンケートの有効回答は1,339人(24.2 %)で, 平均年齢39.3歳(22-68),ソーシャルワークの経験年数の平均は13.6年(0-41)であった.
患者・家族に対する支援について, 脳卒中においては, 必要性が認識されているにもかかわらず実施率の低い項目が多岐にわたって存在し, また, 実施状況は医療機関のSW部門の職員数と有意な相関しており, 十分な相談支援専門職の配置が今後の課題と考えられた. 心疾患においては, 院内連携と中心としたミクロレベルでは比較的充実しているが, メゾ・マクロレベルの支援は不十分であり, 急性期のみでなく回復期・地域生活期へ活動の幅を広げていく実践や体制づくりが必要と考えられた.
結論
脳卒中の患者・家族支援に向けて, 一次脳卒中センターにおける脳卒中相談窓口の設置のための要綱および脳卒中相談窓口マニュアルを作成し, 心疾患の患者・家族支援に関して, 相談支援および情報提供を行う機能を有する部門のあり方を示した.
脳卒中の相談支援では患者の最終的なゴールを念頭において, 心疾患の相談支援では病状の悪化や再入院の予防対策を中心にして, 一人ひとりの多様なニーズに細やかに対応できる相談支援プログラムが求められる. そして, それらの実現のためには適切な相談窓口と人材配置が必要である.

公開日・更新日

公開日
2022-10-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202109036B
報告書区分
総合
研究課題名
循環器病に関する適切な情報提供・相談支援のための方策と体制等の効果的な展開に向けた研究
課題番号
20FA1023
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 享(国立大学法人京都大学 医学研究科 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 恵宏(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター)
  • 平田 健一(国立大学法人 神戸大学 大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科学分野)
  • 小室 一成(国立大学法人 東京大学大学院 医学系研究科 循環器内科学)
  • 前村 浩二(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環病態制御内科学)
  • 野出 孝一(国立大学法人佐賀大学 医学部)
  • 橋本 洋一郎(熊本市立熊本市民病院 神経内科)
  • 冨永 悌二(東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経外科学分野)
  • 藤本 茂(自治医科大学内科学講座神経内科学部門)
  • 吉田 和道(京都大学 医学部)
  • 秋山 美紀(慶應義塾大学 環境情報学部)
  • 早坂 由美子(法 由美子)(北里大学病院 トータルサポートセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は, 日本各地の一次脳卒中センター(PSC)および急性期病院・高度循環器専門病院(心臓病その他の循環器病)における相談窓口とそれに該当する部署の現状と課題を明らかにし,相談窓口をどのように設置し,体制を整備し、どのように支援を行っていくかに関して,モデル構築を行なうことである.
研究方法
3つのワーキンググループ(WG)に分かれ、以下の流れで研究を進めた.
① 脳卒中WG
1)医療・患者支援体制に関する海外先行論文のレビュー. 
2)班員のいる4府県から選別したPCSを対象にしたアンケートによる実態調査 .
3)相談窓口に必要な構成員と必須となる業務内容を定め, 急性期病院相談窓口設置に向けた要綱およびマニュアルの作成.
4)脳卒中相談窓口設置に向けてのロードマップ作成.
②循環器WG
1)相談内容・情報提供内容と相談窓口, 情報ニーズの実態を明らかにするための文献レビュー. 
2)文献レビューの結果を参考に, 施設調査を行うための調査票作成.
3)全国の日本循環器学会研修・研修関連施設1352施設を対象に, Webを用いたアンケート調査.
③患者支援WG(秋山美紀, 早坂由美子)
1)2015 年~2020 年に出版された英文誌のシステマティックレビューを収集とそれらの検討.
2)心理・社会的アセスメントと支援を適切に実施するため, 脳卒中・心疾患患者のニーズを踏まえた望ましい相談支援プログラムの項目の構造化.
3)相談支援プログラムのゴールの構造化とそれにつながるプログラムの項目の抽出.
4)日本医療ソーシャルワーカー協会会員(5541名)を対象にwebアンケート.
結果と考察
脳卒中WG
1)リハビリテーション,心理サポートは医療者側からのアプローチも患者側からのニーズも頻度が高かった.一方で, 就労,訪問サービスについては情報提供が不十分であることが判明した.
2)回復期・生活期(維持期)までを含めた情報共有や支援体制の充実を図ることが必要であり,非かかりつけ患者に対する行政や地域の相談窓口との連携体制構築の必要性が示唆された.
3)脳卒中相談窓口における情報提供,相談支援の内容を具体的に定め, 多職種による「脳卒中相談窓口マニュアル (添付資料)」を作成した.
4)脳卒中相談窓口は, PSCのコア施設から順次設置することとした.構成員について「脳卒中療養相談士」を1名以上配置することとし, 資格要件として, 2022年度は, 第47回日本脳卒中学会の会期中に主催した講習会とシンポジウムの両方を受講することとした. 5月13日時点で, 13,075名の受講があった.
脳卒中においては, 患者・介護者は医療サービスとソーシャルケアサービスの両方が不足しているのみならず,アクセスのし難さを感じており,PSCをはじめとする脳卒中患者の診療を行う施設に脳卒中相談窓口を設置することでこれらの問題を改善できる可能性がある.
循環器WG
1)入医療者が提供している情報と患者の情報ニーズが一致していない可能性が示唆された.
2)文献レビュー結果により, 患者の情報ニーズを考慮した情報提供内容の検討が必要であることが判明したため, 施設調査を行うための調査票を作成した.
3)本研究で作成した調査票を利用して実施したアンケート結果を基に, 相談支援および情報提供を行う機能を有する部門に求められる体制と業務内容の具体案をまとめた.
患者支援WG
1)退院後の困難やニーズは身体機能, 活動や参加, 環境ニーズなど多岐にわたっていた.
2)3)心疾患患者と脳卒中患者について, 課題を明らかにした上で, 36項目の相談支援プログラムの具体案を抽出した.
4)相談支援の実施状況と重要度の認識に関して, アンケートの有効回答は1,339人(24.2 %)で, 平均年齢39.3歳(22-68),ソーシャルワークの経験年数の平均は13.6年(0-41)であった.
脳卒中・心疾患患者の最終的なゴールは社会参加であることを念頭に, 相談支援においては個々人のニー ズにあった情報提供, サービスや地域資源との接続, さらにはアクセシビリティなど環境 改善も視野に入れた働きかけが重要である. 心疾患においては, 院内連携と中心としたミクロレベルでは比較的充実しているが, メゾ・マクロレベルの支援は不十分であり, 急性期のみでなく回復期・地域生活期へ活動の幅を広げていく実践や体制づくりが必要である.

結論
脳卒中および心疾患患者に対して, 個々の症例の病状・病期に応じたアクセスしやすい多面的サポートは, 退院後ケアの質的向上に有効であるが, 現状の体制は不十分である.
患者・家族支援に向けて, 適切な相談窓口と人材配置が必要であり, 行政によるサポートへの期待は極めて大きい.

公開日・更新日

公開日
2022-10-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202109036C

成果

専門的・学術的観点からの成果
一次脳卒中センター(脳卒中)および急性期病院・高度循環器専門病院(心臓病その他の循環器病)における患者・家族への退院後支援の現状と課題を明らかにするため、文献レビューと全国規模のアンケート調査を実施した。その結果、個々の症例の病状・病期に応じたアクセスしやすい多面的サポートが退院後ケアの質的向上に有効であること、相談支援においては患者および家族のニーズに即した情報提供が重要であることを明らかにするとともに、現状の支援体制はそれらの条件を満足するものではないことを示した。
臨床的観点からの成果
脳卒中の相談支援では患者の最終的なゴールを念頭において、心疾患の相談支援では病状の悪化や再入院の予防対策を中心にして、一人ひとりの多様なニーズに細やかに対応できる相談支援プログラムが求められる。
脳卒中の患者・家族支援に向けて、 一次脳卒中センターにおける脳卒中相談窓口の設置のための要綱および脳卒中相談窓口マニュアルを作成した。心疾患の患者・家族支援に関して, 相談支援および情報提供を行う機能を有する部門のあり方を示した。
ガイドライン等の開発
脳卒中の支援に向けて、一次脳卒中センターにおける脳卒中相談窓口の設置のための要綱および「脳卒中相談窓口マニュアル」を作成した。本ガイドラインは、第47回日本脳卒中学会(本年3月17日~19日)において開催された多職種講習会の参加者に配布した。本年中に、脳卒中学会のホームページで公開予定である。
その他行政的観点からの成果
一次脳卒中センター(脳卒中)および急性期病院・高度循環器専門病院(心臓病その他の循環器病)における患者・家族への退院後支援の現状と課題を調査した結果、適切な相談窓口と人材配置が必要であることを示した。その実現に向けて、学会を中心とした多職種で構成される団体による継続的な活動と、行政による十分なサポートが、両輪となって推進されるべきであることを明らかにした。本研究の成果は、脳卒中循環器病対策に関する厚生労働行政の基礎資料として活用されるものと期待される。
その他のインパクト
2022年度は、第47回日本脳卒中学会の会期中に講習会「脳卒中相談窓口講習会」および、ライブシンポジウム「脳卒中相談窓口における多職種の役割と育成:人材育成セミナー「脳卒中相談窓口」」を開催した。5月31日時点で、19910名の受講があり、受講証を発行した。また、多職種連携を推進するため、脳卒中に関連する多職種団体で構成される一般社団法人日本脳卒中医療ケア従事者連合を創設した。今後、脳卒中協会とも協同して多職種連携に関するWebinar等の啓発活動を予定している。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
脳卒中相談窓口マニュアル作成1件
その他成果(普及・啓発活動)
15件
講演12件、シンポジウム2件、ホームページ(作成中)1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-11-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
202109036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,260,000円
(2)補助金確定額
4,260,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,199,186円
人件費・謝金 338,970円
旅費 51,020円
その他 689,086円
間接経費 983,000円
合計 4,261,262円

備考

備考
自己資金1,262円

公開日・更新日

公開日
2022-11-08
更新日
-