脱髄性ニューロパチーの病態解明と神経保護分子の解析

文献情報

文献番号
200833065A
報告書区分
総括
研究課題名
脱髄性ニューロパチーの病態解明と神経保護分子の解析
課題番号
H20-こころ・一般-015
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
馬場 広子(東京薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 犬塚 貴(岐阜大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 軸索障害が主体の免疫性ニューロパチーでは、抗神経抗体の関与が知られている。しかし、急性・慢性に経過する脱髄性ニューロパチーの多くの症例で未だ抗原は同定されず、病態も明らかではない。そこで本研究では、1)脱髄原因分子の探索と病態機序の解明、2)脱髄に伴う2次性軸索障害の病態解明、3)脱髄保護分子の探索を行い、脱髄性ニューロパチーの病態解明と予後の改善を目指す。
研究方法
1)ラット神経組織を抗原として岐阜大学のニューロパチー患者および正常人血清20例を解析した。陽イオン界面活性剤による2次元電気泳動を用いて血清が反応する蛋白スポットを決め、質量分析法で抗原を同定し、臨床型との関連性を解析した。2)髄鞘異常を伴うマウスで軸索側に集積する巨大ミトコンドリアのATP産生、融合・分裂や移動に関わる分子との関連をウエスタンブロット解析した。3)脱髄誘導マウスを作製し、アネキシンII (AXII) SiRNA導入による脱髄巣の変化を組織学的およびウエスタンブロット解析した。倫理面に配慮し血清は匿名化した。本研究は東京薬科大学ヒト組織等を研究活用するための倫理規程および動物実験指針に則って審査の上承認された。
結果と考察
1)患者血清では、正常人に比して神経の膜画分蛋白に対する抗体が高率に検出された。複数の患者血清が反応する蛋白抗原も見出された。神経系に豊富に存在し興奮発生に重要な膜蛋白やCharcot Marie Tooth病の原因遺伝子であるperiaxinなどが抗原として同定され、病態との関連性が示唆された。膜画分は髄鞘などの表面に存在する分子を含むため。患者血清中の抗体による蛋白抗原の機能阻害や脱髄の誘導が生じ得る。今後抗原の局在部位、病態への関与を調べることが重要と考えられた。2)髄鞘異常に伴って出現する軸索のミトコンドリア異常では、ミトコンドリアの移動に関わる分子に変化が認められた。3)脱髄誘導マウス坐骨神経では、AXIIは脱髄周囲の一見正常な髄鞘に増加する。SiRNAでAXIIの発現増加を抑えると脱髄巣が明らかに広範囲になり、脱髄保護効果が示唆された。
結論
 脱髄性ニューロパチー患者血清中には神経構成蛋白に対する抗体が存在することが明らかとなった。今後症例を増やし抗原の種類と臨床的特徴との関連性や病態への関与を検討する。脱髄保護候補分子のヒトの病態への関与を生検材料などで検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-11
更新日
-