糖尿病神経障害・糖尿病足病変の診断ガイドラインならびに管理法の確立

文献情報

文献番号
202109030A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病神経障害・糖尿病足病変の診断ガイドラインならびに管理法の確立
課題番号
20FA1017
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
中村 二郎(愛知医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 神谷 英紀(愛知医科大学 医学部)
  • 姫野 龍仁(愛知医科大学 医学部内科学講座糖尿病内科)
  • 下田 博美(愛知医科大学 医学部)
  • 麻生 好正(獨協医科大学 内科学(内分泌代謝))
  • 加瀬 正人(獨協医科大学 内分泌代謝内科学講座)
  • 出口 尚寿(鹿児島大学 医学部・歯学部附属病院 糖尿病・内分泌内科)
  • 有村 愛子(冨田 愛子)(鹿児島大学 医学部)
  • 水上 浩哉(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 村上 千恵子(鈴木 千恵子)(弘前大学 医学部)
  • 石橋 宏之(愛知医科大学 血管外科)
  • 折本 有貴(愛知医科大学 血管外科)
  • 佐々木 秀行(関西医療大学  保健医療学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病神経障害(DPN)は早期発症と高い有病率が特徴の糖尿病性合併症であり、また下肢切断等に至る糖尿病足病変(DF)の重要なリスクである。
 DPNの診断におけるゴールドスタンダードは標準的神経伝導検査(NCS)であるが、NCSにおいて90%以上の糖尿病患者が何らかの神経機能異常を呈することが知られている。しかしながら、現在、発症・進展を阻止するための成因に基づいた治療法は未確立である。その結果、DPNおよびDPNを背景とするDFは依然として解決すべき臨床課題として残されている。
 そこで本研究では、DPN・DFの諸評価法を用いて、各評価法の信頼性・有用性を検討し、得られた知見を基に診断ガイドライン・管理法案を作成し、その妥当性を検証する。また診断ガイドライン・管理法を策定後、2年間の縦断的研究により心血管イベントの予後調査を行い、DPN・DFの心血管イベントのリスク因子としての重要性を検証する。
研究方法
本研究は、第一段階の症例集積においては、目標症例数は2000例とし、評価項目には、一般身体所見、検体検査、神経伝導検査、心電図R-R間隔変動係数(CVR-R)等を含めた。解析は、DPNについては「糖尿病性神経障害を考える会」の簡易診断基準および馬場類等による層別化を行った後に、群間差の因子解析を行った。DFについては、IWGDF策定のSINBAD System等を用いて層別化を行いDPNと同様に解析した。解析の結果を用いて診断ガイドライン・管理法を策定する予定である。
第二段階として2年間の縦断研究を実施する。第一段階で集積した症例において2年間の心血管イベントの発生率を評価する。主要評価項目として、DPN・DFの層別の心血管イベント3-point major adverse cardiovascular events(3P-MACE)(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)発生率を解析する。副次評価項目として、DPN・DFの発症率・進展率を層別解析する。また、プロペンシティマッチング法により薬物療法の3P-MACE発生率への影響を解析する。
結果と考察
角膜共焦点顕微鏡(CCM)によるDPNの診断率については、簡易診断基準あるいは馬場分類を基準として解析した結果、比較的優良な結果でありCCMをDPNの診断に用いることの妥当性は概ね検証されたと考えられる。
 網膜が容易に観察しうる感覚神経組織であることに注目した検討を行った結果、フリッカー網膜電図によって得られる潜時・振幅はともに、DPNのパラメーターと相関を有した。潜時および振幅、また両者を用いた重回帰式により算出されたAUCは0.6以上を示しており、DPNについて一定程度の診断精度が示唆された。
 同じく網膜の構造的変化に着目した検討では、光干渉断層画像(OCT)の解析によって、DPN患者において特徴的な網膜各層の増加或いは減少を検出した。
 簡易NCS機器の適正な使用方法を検討した結果、機器に付属する重症度チャートは馬場分類と良好な相関を示したものの、診断精度は特異度に優れるものの感度は不十分であった。
簡易NCS機器によるDPN重症度の予測式を用いた診断能改善の試みにおいては、良好な診断能が得られた。

 DPNの診断に用いうる簡易的で新たな評価項目として心電図におけるQTcの可能性を評価したところ、適切なQTc補正式を用いることでNCSの各項目と有意な相関を有する傾向を認めた。
 網膜が容易に観察しうる感覚神経組織であることに注目した検討を行った結果、フリッカー網膜電図によって得られる潜時・振幅はともに、DPNのパラメーターと相関を有した。潜時および振幅、また両者を用いた重回帰式により算出されたAUCは0.6以上を示しており、DPNについて一定程度の診断精度が示唆された。
 同じく網膜の構造的変化に着目した検討では、光干渉断層画像(OCT)の解析によって、DPN患者において特徴的な網膜各層の増加或いは減少を検出した。
 簡易NCS機器の適正な使用方法を検討した結果、機器に付属する重症度チャートは馬場分類と良好な相関を示したものの、診断精度は特異度に優れるものの感度は不十分であった。
簡易NCS機器によるDPN重症度の予測式を用いた診断能改善の試みにおいては、感度90.1%、特異度89.4%と良好な診断能が得られた。
結論
 CCMによるDPNの診断率については、簡易診断基準あるいは馬場分類を基準として解析した結果、ROC解析ではAUC>0.7の比較的優良な結果であった。CCMをDPNの診断に用いることの妥当性は概ね検証されたと考えられる。
簡易NCS機器の適正な使用方法を検討した結果、同機器による馬場分類の予測式の運用において、肥満および他の臨床所見を考慮することで診断能が改善することが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
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公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202109030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,460,000円
(2)補助金確定額
5,460,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,704,340円
人件費・謝金 0円
旅費 372,436円
その他 123,224円
間接経費 1,260,000円
合計 5,460,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-11-25
更新日
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