糖尿病の実態把握と環境整備のための研究

文献情報

文献番号
202109029A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病の実態把握と環境整備のための研究
課題番号
20FA1016
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
山内 敏正(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 祐一郎(関西電力病院)
  • 菊池 透(埼玉医科大学病院 小児科)
  • 村田 敏規(信州大学 医学部)
  • 赤澤 宏(東京大学医学部附属病院)
  • 東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター  がん対策研究所 がん登録センター)
  • 後藤 温(公立大学法人 横浜市立大学 学術院 医学群 データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 田中 哲洋(東京大学 医学部腎臓・内分泌内科)
  • 大杉 満(国立国際医療研究センター糖尿病情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
10,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病は健康日本21(第二次)や医療計画においても重点疾患として扱われている、我が国の行政上も重要な疾患である。近年、電子化レセプトの悉皆情報であるレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)等の大規模データの研究が進んでおり、糖尿病患者における糖尿病診療の質として検査の実施割合等が明らかになってきている。そこで本研究は、NDB等の各種調査を用いて日本全体における糖尿病及び合併症の更なる実態把握を行い、その重症化予防における課題を抽出し、解決策を検討する。また、患者へ調査を行うことで、医療受給者側としての患者の視点も包含した望ましい医療提供体制への課題の抽出と解決策を検討することを目的とする。本年度は2年目であり、以下の通り研究を進めた。
研究方法
本研究は、【糖尿病及び合併症の実態把握に関する研究】、【糖尿病患者からの視点に関する研究】の大きな2つのテーマにわけ、研究を推進した。
今年度は、全体班会議2回、研究班員間で月1回以上の打ち合わせなどを行い、議論を深めた。
結果と考察
【1. 糖尿病及び合併症の実態把握に関する研究】
(1)匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベースを用いた研究 
2014下半期~17年度に単剤の初回外来糖尿病薬処方(インスリンを除く)があった成人2型糖尿病患者は約113万人で、処方割合は、ビグアナイド薬が増加、DPP-4阻害薬が減少していた。薬剤開始後1年間の総医療費はビグアナイド薬で治療を開始した患者で最も安く、DPP-4阻害薬およびビグアナイド薬の選択には一定の地域差、施設差があることが明らかとなった。我が国における初回外来糖尿病薬の処方実態をNDBデータで算出しており、今後診療ガイドラインや診療手引き、医療連携のあり方など、糖尿病診療の質を向上する方策につながることが期待される。
(2)糖尿病に対する適切な医療提供体制や指標の検討 
第8次医療計画の糖尿病対策指標案について、研究班メンバーを評価員とした修正デルファイ法にて検討し、抽出した27指標項目について定義案をとりまとめた。本研究の成果は医療計画の議論への貢献が期待される。
(3)国民健康・.栄養調査による糖尿病有病者数推計について
厚生労働省健康局からの要請があり、平成24年~令和元年国民健康・栄養調査結果に基づいて、令和2年の「糖尿病有病者等」の人数の推計を本研究班で試行した。現在進められている健康日本21(第二次)最終評価)や各種計画の進捗フォローのために代替の算出方法の議論への貢献が期待される。

【2. 糖尿病患者からの視点に関する研究】
(1)糖尿病患者における診療・療養体験の調査研究
患者会(日本糖尿病協会)を通じて糖尿病患者11名(男性5名・女性6名、40〜70歳代、糖尿病型1型6名・2型5名)にインタビューを行い、その結果を基としてアンケート調査票を作成した。その後患者会を通じてアンケート調査を実施し、2022年3月の途中経過時点で約7000枚配布し、2500枚以上が回収されており、解析を進める予定である。糖尿病の診療・療養について、既存データではアプローチが困難な患者の主観的意見・生活の実態や困難について調査し課題を抽出することで、糖尿病患者における医療提供体制の見直しや、診療・療養の質の向上への貢献が期待される。

(2)1型糖尿病患者に関する研究
インスリン治療研究会第5コホートに登録した1168名を対象に、登録時~3年後のインスリン投与方法、血糖モニタリング方法、血糖コントロール状況(HbA1c)の状況・推移について検討した。3年間の推移は、頻回注射法が漸減、CSIIが漸増していた。血糖モニタリング方法では、従来器機が減少し、isCGMが増加した。しかし、Sensor Augmented Pumpに変化はなかった。血糖コントロールでは、HbA1c 7.5%未満が約30%で推移していたが、9.0%以上は、約17%から約20%へ漸増していた。先進医療のさらなる普及と思春期患者への支援が必要と考えられた。1型糖尿病の検証については、小児1型糖尿病患者の治療の現状を明らかにすることで、社会、特に学校社会において小児期発症1型糖尿病に対する正確な理解と支援が広まるような対策に資する資料となることが期待される。
結論
本研究は、【糖尿病及び合併症の実態把握に関する研究】、【糖尿病患者からの視点に関する研究】の大きな2つのテーマに分け、研究を推進した。
本年度は、昨年度決定した計画に沿って各研究を推進しつつ、新たに厚生労働省からの要請に従って国民健康・栄養調査に関する解析に取り組んだ。来年度も引き続き我が国の糖尿病対策の医療政策に資する成果を目指して研究を進める。

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202109029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,000,000円
(2)補助金確定額
12,984,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,016,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,509,569円
人件費・謝金 1,124,770円
旅費 114,410円
その他 6,005,978円
間接経費 3,230,000円
合計 12,984,727円

備考

備考
727円は自己資金

公開日・更新日

公開日
2022-11-09
更新日
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