精神障害者喫煙禁煙対策総合研究事業

文献情報

文献番号
200833063A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者喫煙禁煙対策総合研究事業
課題番号
H20-こころ・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岸本 年史(公立大学法人 奈良県立医科大学 精神医学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 赤池 孝章(熊本大学大学院 医学薬学研究部微生物学分野)
  • 谷垣 健二(滋賀県立成人病センター研究所)
  • 伊藤 弘人(国立精神・神経センター 社会保健部)
  • 新貝 憲利(医療法人社団翠会成増厚生病院 精神医学研究所)
  • 高橋 裕子(奈良女子大学 保健管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は以下の3つである。
1)国内、海外の喫煙禁煙対策の現状と課題について調査し、禁煙外来をも含めた禁煙治療について成果と限界を明確にするとともに、より有効な治療体制や治療方法について検討し提言すること。
2)統合失調症と対象に臨床的、実験的研究から長期的なニコチン摂取が同症にとって有利に働くのか不利に働くのかを検証する。
3)その結果を踏まえて、統合失調症に関与する遺伝子のリストアップを行う。
研究方法
 統合失調症患者の喫煙の実態についての調査では、526病院で2004年4月から一年間に退院した全患者のうち、統合失調症で外来通院を続けていた21,317人から系統抽出法で抽出され、喫煙に関するデータが記載された3,721人を対象に行った。また、国内、海外での喫煙禁煙対策については、実際に禁煙対策を行っている病院を訪問し、問題点、あるいは現状の調査を行った。
 統合失調症へのニコチンの影響については、統合失調症患者に対して、禁煙、再喫煙の前後での感覚情報処理機能を指標に評価した。動物実験では、統合失調症モデルマウスにニコチンを急性投与、慢性投与したときのマウスの行動量を指標に検討を行った。また、統合失調症、喫煙、酸化ストレスとの関係についての研究では、C6ラットグリオーマ細胞を用い、酸化ストレスの適応応答に関わる細胞内のシグナル伝達機構について解析を行った。
結果と考察
 統合失調症患者の喫煙率は44.5%であり、男性の方が女性より喫煙率は高かった。また、喫煙患者は非喫煙患者と比較して、糖尿病あるいは境界型が有意に多いことが示された。国内、海外ともに禁煙化を実施した精神科病棟を有する病院の調査では、予想より問題が少ないことがわかった。
 感覚情報処理機能を指標に、ニコチンの影響を調べた臨床研究では、プレパルスインヒビションにおいて、禁煙後の再喫煙で変化はみられなかったが、P50抑制、P300では改善傾向がみられた。動物実験ではニコチンにより統合失調症モデルマウスの常同行動の亢進が増悪するという結果であった。また、一酸化窒素や活性酸素種に依存して生成する8-ニトロ-cGMPは、Keap1/Nrf2システムを活性化し、酸化ストレスに対する適応応答を誘導することが明らかとなった。
結論
疫学的研究では統合失調症患者の喫煙の実態、国内、海外での精神科病棟を有する病院での禁煙化の取り組みの現状、問題点が明らかになった。ニコチンの統合失調症に対しての影響についても動物実験及び臨床実験を通して、徐々に結果が出つつある。今後も引き続き研究を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2009-04-15
更新日
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