市民によるAED等の一次救命処置のさらなる普及と検証体制構築の促進及び二次救命処置の適切な普及に向けた研究

文献情報

文献番号
202109028A
報告書区分
総括
研究課題名
市民によるAED等の一次救命処置のさらなる普及と検証体制構築の促進及び二次救命処置の適切な普及に向けた研究
課題番号
20FA1014
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 哲也(帝京大学 医学部 救急医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 丸川 征四郎(医療法人医誠会 医誠会病院)
  • 畑中 哲生(救急振興財団 救急救命九州研修所)
  • 石見 拓(京都大学 保健管理センター)
  • 横田 裕行(日本体育大学 大学院保健医療学研究科)
  • 田邉 晴山(財団法人救急振興財団救急救命東京研修所 )
  • 森村 尚登(東京大学大学院医学系研究科 外科学専攻 生体管理医学講座 救急科学分野)
  • 黒田 泰弘(香川大学 医学部)
  • 中原 慎二(帝京大学医学部 救急医学講座)
  • 太田 邦雄(金沢大学医薬保健研究域医学系)
  • 西山 知佳(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 臨床看護学講座 クリティカルケア看護学分野)
  • 玉城 聡(帝京短期大学 専攻科 臨床工学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成16年の市民によるAED使用の認可以降、市中で利用可能なAED(PAD)の設置が広がりBLSの普及もみられた。しかし救急蘇生統計によると、市民により心停止が目撃された際のBLSやAED実施使用の割合は高いとは言えず、救命講習の内容改善、MC体制における検証などの課題がある。またBLSに続いて医療機関等で行われるALSについても各地域での普及は一律ではなく、またその充足状況を測る指標もない。
そこで本研究では、基礎データとしてのAED販売・設置台数把握に関する調査、内部情報を含む市民による使用事例の検証に関する検討、心理的阻害因子をふまえた教育プログラムに関する検討、心停止発生通知システムの実地調査における検討、小児・乳児における院外心停止の調査、ALS実施体制の整備状況の指標についての検討ECPRの実地医療での検証と教育法構築に向けた検討を実施した。
研究方法
AEDの普及状況に係わる調査では、製造販売業者の協力のもと当年度のAED販売台数(PAD・医療機関・消防機関別)、把握されている廃棄台数の取りまとめを継続し、耐用年数をふまえた設置台数の推計を行った。
内部情報を含めた市民によるAED使用事例の検証に関する検討では内部情報の提供と活用について専門家より意見聴取を行った。加えて製造販売業者より提供された内部情報の解析によりAED使用状況について客観的な把握を試みた。
心理的阻害因子をふまえた教育プログラムに関する検討として、CPR講習会を受講した市民に対して、受講後に残る心理的障壁についての質問紙調査の計画を検討した。調査項目として、自分が救助者/傷病者である場合、相手の性別、年齢区分ごとの身体的接触への躊躇や、CPRへの知識、手技に関する理解などを予定している。
心停止発生通知システムの実地調査における検討では、モデル地域で継続されている実運用を通じて検討を進めた。
児童生徒の院外心停止についての全国調査を継続するとともに、乳児CPR講習におけるオンライン化の実効性を調査した。
ALSに関しては診療実施体制の整備状況の指標について救急診療の質に関する専門家の討議にて検討するとともに、ECPRの実地医療における検証において多施設登録データからの解析を終えた。
結果と考察
AEDの普及状況に係わる調査では、2021年12月現在わが国の累計販売台数はおよそ141万台で、うちPADが84%を占めた。2021年のPAD用途の新規販売は10万台余であった。設置台数の把握には販売台数から廃棄台数、耐用期間を勘案しての推定が必要となる。AEDは薬事法上の高度管理医療機器及び特定保守管理医療機器であり、わが国全体でより正確に設置台数を把握できる体制構築が望まれる。
内部情報を含めた市民によるAED使用事例の検証に関する検討では、心電図、音声情報の提供に関して個人情報保護上の管理責任者はAEDの管理者(設置者)となり、第三者への提供は原則本人了解が必要だが、検証を含め公衆衛生の向上のために必要で本人の同意を得ることが困難な場合には、了解がなくとも提供可能であることが確認された。提供を受けた内部情報の解析では、AEDの自動心電図解析中及び電気ショック施行時に胸骨圧迫が継続されていたり解析の際に接触のため誤判定が生じる事象が確認された。
心停止発生通知システムの実地調査における検討では、モデル地域のうち感染症拡大の影響で運用停止していた地域で再開がなされた。また登録ボランティアの講習のオンライン化を試行した。
学校管理下の心停止の発生状況の把握においては、2015年以降に小中高校生心原性院外心停止180例が集積され、発生状況、場所、現場での対応など詳細な二次調査のための登録を進めている。また乳児CPR講習におけるオンライン化の評価は良好であった。
ALS診療実施体制の整備状況の指標については、ECPRなどのALSの診療内容の評価領域に対してストラクチャー、プロセス、アウトカムの各類型ごとの指標案について検討した。ECPRの多施設登録データの解析結果について誌上発表され、各施設における適応や管理状況の調査結果を含めてECPRの安全な実施に向けての教育の構築に向け検討を進めている。
結論
以上の研究結果より、市中におけるAEDの設置台数と稼動状況の正確な把握、AED使用事例における内部情報を活用した検証、心理的障壁をふまえた教育プログラムの改善、心停止発生通知システムの活用によるAED実施の行動促進と迅速化、児童生徒の院外心停止対策と乳児への蘇生の一層の普及、ALSの診療実施体制に関する指標を活用した各地域での診療体制の充実やECPR等の教育の充実などを通じ、医療計画における救急医療体制のアウトカム指標である心原性院外心停止の転帰をより一層改善させることができるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202109028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,499,000円
(2)補助金確定額
5,499,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 297,880円
人件費・謝金 1,641,949円
旅費 97,100円
その他 2,193,071円
間接経費 1,269,000円
合計 5,499,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
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