統合失調症の未治療期間とその予後に関する疫学的研究

文献情報

文献番号
200833060A
報告書区分
総括
研究課題名
統合失調症の未治療期間とその予後に関する疫学的研究
課題番号
H20-こころ・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
水野 雅文(東邦大学 医学部 精神神経医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 道雄(富山大学大学院 医学や苦学研究部神経精神医学講座)
  • 下寺 信次(高知大学 医学部 神経精神科学教室)
  • 松岡 洋夫(東北大学大学院 医学系研究科 医科学専攻神経・感覚器病態学講座精神神経学分野)
  • 小澤 寛樹(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 精神神経科学)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部 社会医学講座 医療政策・経営科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神病未治療期間(Duration of Untreated Psychosis: DUP)は、統合失調症を始めとする精神病の治療の開始の遅れを示す指標であり、脱施設化を終えた諸国において90年代から注目され研究されてきた。わが国においてはDUPおよび初診者の受診経路に関する系統的研究は殆どない。そこで統合失調症の未治療期間と予後の関係を疫学的手法により明らかにするとともに、未治療期間に影響する要因を検討する。
研究方法
本研究は、東邦大学、富山大学、高知大学、東北大学、長崎大学の5大学の医学部精神医学講座が中心となり多施設で共同で、同一のプロトコールを用いて、前向き追跡研究を行なう。これらの参加施設を受診した統合失調症初回エピソード症例で、年齢は初診時において16歳から55歳までの者である。診断は主治医(初診医)により、国際疾病分類ICD-10により統合失調症、統合失調型障害および妄想性障害(F2)と診断された者。出生地、国籍、発症年齢、家族歴などでの制限はもうけない。研究期間は、2008年7月1日?2010年6月末を登録期間とする。
結果と考察
本年度はまず本研究のプロトコールを完成させ、また関連する調査資料ならびに回答用紙などを作成した。 本報告書執筆時点において、予後研究追跡のための登録症例数は全体で38例、(東邦6、富山12、高知4、東北12、長崎4)となっている。初回エピソード統合失調症患者の未治療者の最初の診察場面において研究参加を促すことになる本研究では、参加者の申請への理解が不可欠である。研究参加同意者は予想外に少なく、本研究が研究参加への同意が得にくいことを示している。その解決には、無理の無い調査パターンを作る必要があり、研究参加がたとえば丁寧なアセスメントを含んでいることなど治療上のメリットがあることを説明する必要があろう。
結論
本研究は3年計画の1年目にあたり、未だアウトカムを得る時点にはない。班会議におけるプロトコールの作成段階においても本研究が対象とする初回エピソード統合失調症の患者・家族が抱える様々な問題を明らかにし、それに対する方略を考える中で、DUPの長さや受診経路に関する検討の中で多数の検討課題が得られた。今後本前方視研究の実施により治療反応性やアドヒアランスに関する詳細な検討がなされることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-