加熱式タバコの急性影響を評価する疫学実証研究

文献情報

文献番号
202109021A
報告書区分
総括
研究課題名
加熱式タバコの急性影響を評価する疫学実証研究
課題番号
20FA1005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
田淵 貴大(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター がん対策センター疫学統計部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀 愛(筑波大学 医学医療系)
  • 財津 將嘉(産業医科大学)
  • 谷上 博信(大阪国際がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,116,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現状では、加熱式タバコの能動喫煙及び受動喫煙による急性健康影響の実態は十分には把握されていない。加熱式タバコが発売されてからの期間が短く、長期追跡が困難な現状において、周産期および周術期などの比較的短期間の喫煙関連曝露とアウトカムの関連を観察できる研究デザインが有効であると考えられた。そこで本研究では、加熱式タバコによる急性影響の実態把握を行うことを目的とした。
研究方法
加熱式タバコの能動喫煙及び受動喫煙の曝露の実態および肺炎や周産期アウトカム、周術期アウトカム等の急性症状・急性疾患との関連について、インターネット調査及び患者調査の2つの調査研究デザインを主に採用し、データ収集および分析を行った。
結果と考察
インターネット調査研究では、2021年度には、JASTIS研究データから加熱式タバコの能動喫煙及び受動喫煙への曝露の割合をそれぞれ疾患の有無および曝露の場所に注目して計算した。JASTIS研究2019年調査データ15-73歳男女合計9,008人において、 HTP使用、紙巻タバコとHTPの併用の割合は、全体(慢性疾患の有無に関わらず)でそれぞれ9.0%と6.1%であり、疾患別では、高血圧で10.2%と7.4%、糖尿病で15.9%と12.3%、CVDで 19.2%と15.7%、COPD で40.5%と33.3%、癌で17.5%と11.9%であった。JASTIS2022年調査で、過去一か月に加熱式タバコの受動喫煙があったと回答した割合(重み付け後)は全体で36.5%であり、JASTIS2021年の22.7%よりも増加していた。加熱式タバコの受動喫煙が最も多かった場所は職場であり、全体で16.0%(2021年は13.5%)であった。次いで家庭で14.0%(2021年は12.2%)であった。2021年6-7月に実施されたインターネット調査JACSIS研究妊産婦調査データを用いて、2020年は低出生体重児、2021年は在胎不当過小児(SGA児)と加熱式タバコ使用の関連を調べたところ、妊産婦を介した加熱式タバコは胎児成長に悪影響を及ぼしている可能性が示唆された。加熱式タバコ使用の急性健康影響を評価する上で、妊産婦調査データを活用することが有用だと考えられ、今後も継続的に分析していく。
患者データ研究では、2020年9月~2022年2月に手術を受けた大阪国際がんセンターのがん患者4850人における加熱式タバコの使用率は4.6%であり、紙巻タバコの使用率は11.4%だった。平均入院日数は、患者全体で12.2日、加熱式タバコの現在使用者で11.2日、過去使用者で12.4日、一度も使用したことがない者で12.3日であり、統計学的有意差は認めなかった。今後、加熱式タバコの問診項目が導入されている全国各地の労災病院等の入院患者データの将来のデータ活用に向けて調整を続け、さらなる症例集積を進めていく。労働者データの分析からは、office worker(いわゆるホワイトカラー職)の方がそうでない人よりも加熱式タバコの喫煙率が高いことが分かった。
結論
本研究は、たばこ規制・対策に関わる主要課題として近年急浮上してきた加熱式タバコ問題について、政策立案・提案につながるエビデンスの構築を目的としている。2021年度は研究2年目であるが、すでに研究成果がPublishされてきており、加熱式タバコの急性健康影響を評価するために役立つ今後のさらなる研究成果が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202109021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,050,000円
(2)補助金確定額
4,050,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 250,586円
人件費・謝金 838,454円
旅費 0円
その他 2,033,146円
間接経費 934,000円
合計 4,056,186円

備考

備考
自己資金:6,186円

公開日・更新日

公開日
2022-11-08
更新日
-