1歳からの広汎性発達障害の出現とその発達的変化:地域ベースの横断的および縦断的研究

文献情報

文献番号
200833054A
報告書区分
総括
研究課題名
1歳からの広汎性発達障害の出現とその発達的変化:地域ベースの横断的および縦断的研究
課題番号
H20-こころ・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
神尾 陽子(国立精神・神経センター精神保健研究所 児童・思春期精神保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 小山 智典(国立精神・神経センター精神保健研究所 児童・思春期精神保健部 )
  • 稲垣 真澄(国立精神・神経センター精神保健研究所 知的障害部)
  • 土屋 賢治(浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター)
  • 高木 晶子(国立秩父学園 )
  • 川上 憲人(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 中井 昭夫(福井大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders: PDD)の一般児童母集団内での有病率や症状の分布および、注意欠陥/多動性障害、学習障害、発達性協調運動障害などPDD以外の発達障害症候群や情緒・行動の問題との合併を明らかにするわが国の児童における疫学データベースを構築することである。
研究方法
文献レビューの結果を踏まえて、疫学調査の最適な方法論を検討した。スクリーニングのバッテリーとして使用予定の評価尺度、SCDC、SRS、DCDQ’07、MOQ-T 、ECBQ短縮版などの日本語版の作成と妥当性検討を行った。診断評価に使用する自閉症評価面接尺度ADI-Rと、読字障害の検査課題RAN課題については、妥当性検討を行った。
幼児対象の疫学データは、縦断的アプローチで収集するため、自治体母子保健事業と連携して2歳時のスクリーニングと評価面接を開始した。さらに一般母集団児対象に、睡眠習慣や睡眠障害に関する項目、気質項目、そして親のストレス評価項目を含む独自の調査票を作成し使用している。
結果と考察
1. 発達障害の疫学研究の方法論については、先行研究では複数の方法が用いられており、実施する地域における診療・支援体制などの水準も含めて、精度を高く、かつコストを抑制した方法論を検討する必要があることがわかった。また、多段階のスクリーニングや複数の情報源からの情報収集が効率的でより精度の高い有病率の推定を可能にするようであった。
2. 発達障害児の多段階スクリーニングに必要なSCDC、SRS、DCDQ’07、MOQ-Tなどの日本語版評価尺度が完成した。診断以外に、症状パターンや適応に関連すると思われる、気質を評価するための、評価尺度の短縮版の検討が一定程度終了した。疫学研究の最終段階の評価に使用する、自閉症評価面接尺度ADI-Rと、読字障害の検査課題RAN課題についての検討が行われた。わが国では標準化や妥当性検証を経たアセスメント・ツールが乏しいが、これらの尺度の本邦での使用可能性が示され、今後、研究および臨床の客観性を高めるのに役立つと思われる。
3. 幼児における有病率を調べるために計画された縦断的研究は、自治体との協力体制の準備と研修を終了した後、実施された。疫学研究の準備過程で、副産物として地域の関連機関との連携が強化され、システム構築を推進することとなった。
結論
疫学調査は、幼児対象のデータ収集が始まったばかりであるが、学童の調査に使用可能な検査バッテリーの準備と地域関連機関との連携の整備がすすんだ。

公開日・更新日

公開日
2009-04-14
更新日
-