エビデンスに基づいたロコモティブシンドロームの対策における簡便な確認・介入方法の確立と普及啓発体制の構築に資する研究

文献情報

文献番号
202109013A
報告書区分
総括
研究課題名
エビデンスに基づいたロコモティブシンドロームの対策における簡便な確認・介入方法の確立と普及啓発体制の構築に資する研究
課題番号
19FA1017
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
帖佐 悦男(宮崎大学 医学部 感覚運動医学講座 整形外科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 耕三(宮崎大学)
  • 藤野 圭司(藤野整形外科医院)
  • 大町 かおり(長野保健医療大学 保健科学部 リハビリテーション学科 )
  • 石橋 英明(医療法人社団愛友会伊奈病院 整形外科)
  • 村永 信吾(医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 リハビリテーション事業管理部)
  • 新開 省二(女子栄養大学 栄養学部)
  • 吉村 典子(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター ロコモ予防学講座)
  • 舩元 太郎(宮崎大学 医学部)
  • 田島 卓也(宮崎大学 医学部)
  • 中村 嘉宏(宮崎大学 医学部附属病院)
  • 荒川 英樹(宮崎大学医学部附属病院)
  • 山口 洋一朗(宮崎大学 医学部附属病院)
  • 鶴田 来美(宮崎大学 医学部)
  • 塩満 智子(東都大学 幕張ヒューマンケア学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康寿命延伸には運動器の健康が非常に重要であることが伺える。この運動器の障害であるロコモティブシンドローム(ロコモ)に関し、厚生労働科学研究としてロコモの疫学)、ロコモ度テストと他の評価法との関係を科学的に明らかにし、ロコモ予防のための基本的な運動・栄養プログラムの作成・評価、運動器の健康による経済的・社会的影響についてロコモ関連学会・団体と連携し明らかにしてきた。しかし今回の研究課題目標の通り、ロコモの確認手法が十分に普及しているとはいえず、認知度、ロコモに関する取組み状況、医療・介護が連携した取組み等の地域差や、効果的なロコモ対策事業に関し国内外でエビデンスのある報告が少ないなど、必ずしもロコモ対策が十分とはいえない。
従って本事業は、より効果的な都市規模を考慮した介入事業の実施・評価、より簡便なロコモ度確認手法の検討やフレイルやサルコペニアとの関係など文献レビューならびにコホート研究(J Bone Miner Metab 33:186-191,2015)の結果からロコモ対策を再検討する。その結果をもとに自治体の負担が少なく様々な自治体(地域)の希望に応じたロコモ対策(予防・介入方法など)モデルを提示し、モデル地域における実践・評価を行い、健康づくり、介護など関係部署が連携したロコモ対策モデルを構築する。ロコモ認知度の地域格差に関しては、認知度が低い都道府県への介入と認知度が上昇している都道府県へ聞き取り調査を行う。事業実施にあたりロコモ関連学会などとの連携がとれており、研究者はロコモ疫学、運動機能評価や介入事業に精通しており研究遂行が可能である。 
初年度は、文献レビューやこれまでのロコモ対策を再評価した。2年目における介入事業は、COVID-19による影響を受けたものの、可能な限りで自治体と共同で実施し事業の効率改善を行った。介入事業は運動機能評価の実施、実施者と自治体の体制構築状況の確認やロコトレ運動(栄養)介入を実施し、ロコモ対策のみならず、フレイル、サルコペニアへの影響についても検討した。2-3年目は新たな地域・自治体でモデル事業の妥当性を確認する。また、体制構築状況を確認し、普及に必要なツールの開発等含めロコモ予防を包括する地域包括ケアシステム構築への貢献を目指す。
研究方法
これまでに実施されている効果的な介入事業・検診事業を中心に実施方法の評価を行い、ロコモ確認のための簡便な確認手法の再検討やフレイルやサルコペニアとの関係など文献レビューならびにコホート研究の結果からこれまでのロコモ対策を再検討する。その結果をもとに自治体の負担が少なく様々な自治体(地域)の希望に応じたロコモ対策(予防・介入方法など)モデルを提示し、モデル地域における実践・評価を行い、健康づくり、介護など関係部署が連携したロコモ対策モデルを構築する。
結果と考察
先ずは、本研究で設定したモデル1では、FMIは男女ともに要介護および死亡リスクと関連せず、握力と歩行速度を追加調整したモデル2でも結果は変わっていない。SMIはモデル1においては要介護および死亡のリスクと負の量-反応関係を認めたが、握力と歩行速度を追加調整したモデル2では、男性は死亡との有意な関係は消失し、女性では要介護および死亡リスク両方で有意な関係性は消失した。また、握力は死亡リスクよりも要介護リスクと、歩行速度は死亡リスクよりも要介護リスクとの関連が強かった。またロコモの発生率は、ロコモ度1が、83.7/1,000人年、ロコモ度2は23.0/1,000人年、ロコモ度3においては18.6/1,000人であり、ロコモの発生率を検討した際、ロコモ度1では「女性」、ロコモ度2では「年齢」「女性」「肥満」、ロコモ度3では「年齢」「女性」が関連する要因とみられることが分かるなど、運動器事業対象者にすべき特徴も見られた。
様々な年齢や運動機能レベルの対象者に3ヶ月のロコトレ介入研究を実施したところ、運動機能の改善に効果が見られ、特に運動機能低下者においては、ロコトレに加え、栄養の介入が効果的であった。
結論
ロコモの発生率は、ロコモ度1が、83.7/1,000人年、ロコモ度2は23.0/1,000人年、ロコモ度3においては18.6/1,000人であり、全国で運動器疾患予防対策を進めることによって、国民の健康寿命や経済に大きな良い結果をもたらすエビデンスを得た。ロコモ対策における運動プログラムでは、骨格筋量・脂肪量が多い/少ないに関わらず、まずは筋力や移動能力の維持・向上を目標にすべきであることがうかがえる。すなわち、ロコモ体操などの運動を実践することにより、日常生活動作を円滑に遂行できるよう筋力や移動能力を保持することが重要で、特に運動機能低下者に対しては、ロコトレに加え栄養介入が機能改善に有益である結果を得た。

公開日・更新日

公開日
2022-09-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-09-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202109013B
報告書区分
総合
研究課題名
エビデンスに基づいたロコモティブシンドロームの対策における簡便な確認・介入方法の確立と普及啓発体制の構築に資する研究
課題番号
19FA1017
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
帖佐 悦男(宮崎大学 医学部 感覚運動医学講座 整形外科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 耕三(宮崎大学)
  • 藤野 圭司(藤野整形外科医院)
  • 大町 かおり(長野保健医療大学 保健科学部 リハビリテーション学科 )
  • 石橋 英明(医療法人社団愛友会伊奈病院 整形外科)
  • 村永 信吾(医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 リハビリテーション事業管理部)
  • 新開 省二(女子栄養大学 栄養学部)
  • 吉村 典子(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター ロコモ予防学講座)
  • 舩元 太郎(宮崎大学 医学部)
  • 田島 卓也(宮崎大学 医学部附属病院)
  • 中村 嘉宏(宮崎大学 医学部附属病院)
  • 荒川 英樹(宮崎大学医学部附属病院)
  • 山口 洋一朗(宮崎大学 医学部附属病院)
  • 鶴田 来美(宮崎大学 医学部)
  • 塩満 智子(東都大学 幕張ヒューマンケア学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康寿命延伸には運動器の健康が非常に重要であることが伺える。この運動器の障害であるロコモティブシンドローム(ロコモ)に関し、厚生労働科学研究としてロコモの疫学)、ロコモ度テストと他の評価法との関係を科学的に明らかにし、ロコモ予防のための基本的な運動・栄養プログラムの作成・評価、運動器の健康による経済的・社会的影響についてロコモ関連学会・団体と連携し明らかにしてきた。しかし今回の研究課題目標の通り、ロコモの確認手法が十分に普及しているとはいえず、認知度、ロコモに関する取組み状況、医療・介護が連携した取組み等の地域差や、効果的なロコモ対策事業に関し国内外でエビデンスのある報告が少ないなど、必ずしもロコモ対策が十分とはいえない。
従って本事業は、より効果的な都市規模を考慮した介入事業の実施・評価、より簡便なロコモ度確認手法の検討やフレイルやサルコペニアとの関係など文献レビューならびにコホート研究(J Bone Miner Metab 33:186-191,2015)の結果からロコモ対策を再検討する。その結果をもとに自治体の負担が少なく様々な自治体(地域)の希望に応じたロコモ対策(予防・介入方法など)モデルを提示し、モデル地域における実践・評価を行い、健康づくり、介護など関係部署が連携したロコモ対策モデルを構築する。ロコモ認知度の地域格差に関しては、認知度が低い都道府県への介入と認知度が上昇している都道府県へ聞き取り調査を行う。事業実施にあたりロコモ関連学会などとの連携がとれており、研究者はロコモ疫学、運動機能評価や介入事業に精通しており研究遂行が可能である。 
初年度は、文献レビューやこれまでのロコモ対策を再評価した。2年目における介入事業は、COVID-19による影響を受けたものの、可能な限りで自治体と共同で実施し事業の効率改善を行った。介入事業は運動機能評価の実施、実施者と自治体の体制構築状況の確認やロコトレ運動(栄養)介入を実施し、ロコモ対策のみならず、フレイル、サルコペニアへの影響についても検討した。2-3年目は新たな地域・自治体でモデル事業の妥当性を確認する。また、体制構築状況を確認し、普及に必要なツールの開発等含めロコモ予防を包括する地域包括ケアシステム構築への貢献を目指す。
研究方法
これまでに実施されている効果的な介入事業・検診事業を中心に実施方法の評価を行い、ロコモ確認のための簡便な確認手法の再検討やフレイルやサルコペニアとの関係など文献レビューならびにコホート研究の結果からこれまでのロコモ対策を再検討する。その結果をもとに自治体の負担が少なく様々な自治体(地域)の希望に応じたロコモ対策(予防・介入方法など)モデルを提示し、モデル地域における実践・評価を行い、健康づくり、介護など関係部署が連携したロコモ対策モデルを構築する。
結果と考察
先ずは、本研究で設定したモデル1では、FMIは男女ともに要介護および死亡リスクと関連せず、握力と歩行速度を追加調整したモデル2でも結果は変わっていない。SMIはモデル1においては要介護および死亡のリスクと負の量-反応関係を認めたが、握力と歩行速度を追加調整したモデル2では、男性は死亡との有意な関係は消失し、女性では要介護および死亡リスク両方で有意な関係性は消失した。また、握力は死亡リスクよりも要介護リスクと、歩行速度は死亡リスクよりも要介護リスクとの関連が強かった。またロコモの発生率は、ロコモ度1が、83.7/1,000人年、ロコモ度2は23.0/1,000人年、ロコモ度3においては18.6/1,000人であり、ロコモの発生率を検討した際、ロコモ度1では「女性」、ロコモ度2では「年齢」「女性」「肥満」、ロコモ度3では「年齢」「女性」が関連する要因とみられることが分かるなど、運動器事業対象者にすべき特徴も見られた。
様々な年齢や運動機能レベルの対象者に3ヶ月のロコトレ介入研究を実施したところ、運動機能の改善に効果が見られ、特に運動機能低下者においては、ロコトレに加え、栄養の介入が効果的であった。
結論
ロコモの発生率は、ロコモ度1が、83.7/1,000人年、ロコモ度2は23.0/1,000人年、ロコモ度3においては18.6/1,000人であり、全国で運動器疾患予防対策を進めることによって、国民の健康寿命や経済に大きな良い結果をもたらすエビデンスを得た。ロコモ対策における運動プログラムでは、骨格筋量・脂肪量が多い/少ないに関わらず、まずは筋力や移動能力の維持・向上を目標にすべきであることがうかがえる。すなわち、ロコモ体操などの運動を実践することにより、日常生活動作を円滑に遂行できるよう筋力や移動能力を保持することが重要で、特に運動機能低下者に対しては、ロコトレに加え栄養介入が機能改善に有益である結果を得た。

公開日・更新日

公開日
2022-09-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202109013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
・ロコモティブシンドローム(ロコモ度1・2・3)の発生率を推計した。
・ロコモ・フレイル・サルコペニアの関係整理は、フレイルの診断にはFriedらの基準、サルコペニアの判断基準にはAWGDの勧告(2014)を用いた結果、フレイル・サルコペニアに該当している者はほぼすべてロコモ度1に該当していることがわかった。またロコモは後期高齢期のフレイルの主要な原因となっており、高齢期にロコモを予防または改善することは、後期高齢期のフレイルの予防につながると考えられる。
臨床的観点からの成果
・ロコモの発生率を推計した結果、ロコモ度1は83.7/1000人年、ロコモ度2は23.0/1000人年、ロコモ度3は18.6/1000人年となった。
・フレイル・サルコペニアの診断基準の1つである歩行機能低下(1m/秒未満)は、ロコモ度判定基準よりもより重症であることが示唆された。
ガイドライン等の開発
ロコモ年齢の開発に寄与した。
その他行政的観点からの成果
フレイル・ロコモ改善のための複合プログラムの実施により、要介護発生のリスクが低減するとともに介護費が抑制できる可能性が示された。
ロコモ・フレイル・サルコペニアの予防や改善の基本は、規則正しい生活であるが、栄養は特に問題のある方が対象になるが、運動は全ての住民が対象となり自宅でも簡単に実施できるロコトレが介護予防の中心である。ロコトレは、体操教室などの参加者だけでなく、運動機能低下者でも運動機能の維持・改善効果がみられた。また運動介入に加えて栄養介入を行う必要性とその効果を示すことができた。
その他のインパクト
・令和2年度のロコモ認知度調査結果では、宮崎県全体は54.5%(理解度47.3%)、宮崎市86.4%(理解度63.5%)であった。運動器検診を実施している特定の自治体(宮崎市)では、認知度も高いが、理解度も毎年向上している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
44件
学会発表(国内学会)
60件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
29件
運動器検診(ロコモ検診)、サッカーJ3チームとのコラボゲーム、ロコモ予防啓発講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Noriko Yoshimura, Toshiko Iidaka, Chiaki Horii, et al
Epidemiology of locomotive syndrome using updated clinical decision limits: 6-year follow-ups of the ROAD study
J Bone Miner Metab . , 40 (4) , 623-635  (2022)
doi: 10.1007/s00774-022-01324-8.

公開日・更新日

公開日
2022-09-06
更新日
2024-06-17

収支報告書

文献番号
202109013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,657,000円
(2)補助金確定額
4,657,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,545,510円
人件費・謝金 2,197,992円
旅費 0円
その他 256,547円
間接経費 657,000円
合計 4,657,049円

備考

備考
自己資金:45円 利息:4円

公開日・更新日

公開日
2022-11-09
更新日
-