生活習慣及び社会生活等が健康寿命に及ぼす影響の解析とその改善効果についての研究

文献情報

文献番号
202109009A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣及び社会生活等が健康寿命に及ぼす影響の解析とその改善効果についての研究
課題番号
19FA1012
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 尚己(京都大学 大学院医学研究科 社会疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 細川 陸也(京都大学大学院 医学研究科)
  • 相田 潤(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
  • 近藤 克則(千葉大学 予防医学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
13,846,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康寿命の延伸は保健医療を超えた社会全体の課題である。加えて、その格差の縮小も求められる。これらの目標達成のためには、健康寿命延伸に資する個人の要因(生活習慣・医療・介護サービス利用状況・社会経済状況・社会活動参加等)に加え、地域環境の要因、すなわち社会資源(ソーシャルキャピタル)や物理環境(公園や運動施設、歩道など交通環境、買い物環境など)、そして公的サービスの役割等を明らかにする必要がある。これまで、大規模な政府統計や国際比較データ、全国 20 万人規模の縦断データ(日本老年学的評価研究:JAGES)等を用いて関連する研究を進めてきた(成果報告URL:www.jages.net/)。しかし、二次医療圏・市町村・包括圏域など、より行政活動に直結した単位での検討は十分なされていない。小地域で的確に健康寿命を算出する方法についても検討が必要である。そこで本研究では、小地域単位で健康寿命を算出する方法を検討し、また、個人の社会生活要因や地域環境と健康寿命やその地域間格差との関係を明らかにすることで国や自治体政府が取り組むべき効果的で公正な健康増進施策のあり方を提案することを目的とした。
研究方法
これまでに構築した高齢者のコホートデータ・パネルデータ(日本老年学的評価研究:JAGES)と政府統計データ(国民生活基礎調査)を用いて、小地域単位の健康寿命や個人の健康寿命(要介護認定を受けていない期間)や生存期間、それらの地域差に影響する要因についての実証分析を進めた。また、健康寿命の延伸が期待できる政策や介入の集団的効果(集団寄与危険population attributable fraction: PAF)を算出した。
結果と考察
都道府県レベルの失業率が高いほど健康寿命が短いことがわかった。臓器別の疾病リスクによる死亡や健康寿命に対するPAFを調べたところ口腔の健康(無歯顎)が死亡リスク削減に関する集団的効果が極めて高かった。また、二次医療圏単位の健康寿命を算出して社会活動・近隣環境・健康行動それぞれのPAFを算出した。いずれも健康寿命延伸を期待できる推計値であった。政府の統計データの分析からは、こころの健康が日常生活の制限に及ぼす人口寄与が50%程度あり、女性や若年層(40-64歳)で特に強いこと、無職の健康寿命が有職に比べて著しく短いこと、近年の社会的孤立者が増加していることが見いだされた。さらに、インターネットの利用や水平的な(メンバーの上下関係が少ない)活動をしている通いの場(趣味・スポーツなど)への参加が個人の健康寿命と関連していた。
結論
これら研究で示唆されたことを踏まえ、今後の健康寿命の延伸やその地域間格差の縮小に向けて、高い集団的効果が期待できる口腔の健康や社会活動への参加、就労の継続、インターネット等を通じた新しい社会関係の構築を進めるような介入が有望であり、さらなる研究と具体的な実装方法の検討を進めることを提案する。

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202109009B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣及び社会生活等が健康寿命に及ぼす影響の解析とその改善効果についての研究
課題番号
19FA1012
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 尚己(京都大学 大学院医学研究科 社会疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 細川 陸也(京都大学大学院 医学研究科)
  • 相田 潤(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
  • 近藤 克則(千葉大学 予防医学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保健対策は市町村や二次医療圏が主な活動の単位となっている。小地域単位で健康寿命を算出する方法を検討し、また、個人の社会生活要因や地域環境と健康寿命やその地域間格差との関係を明らかにすることで国や自治体政府が取り組むべき 効果的で公正な健康増進施策を提案する。次世代の健康推進プランの策定や、基礎自治体等小地域単位での評価方法等について、国際的な枠組みを踏まえつつ、具体的な提案につなげる。
研究方法
大規模な政府統計や国際比較データ、全国 20 万人規模の縦断データ(日本老年学的評価研究:JAGES)等を用いた疫学研究を行った。また、小地域単位で健康寿命を算出する方法を検討し、また、個人の社会生活要因や地域環境と健康寿命やその地域間格差との関係を明らかにした。分析結果をもとに、国や自治体政府が取り組むべき効果的で公正な健康増進施策のあり方を提案した。
結果と考察
地域のソーシャルキャピタル、居住地の農村的特徴、個人の社会参加状況(地域活動参加や就労)等、小地域単位の健康寿命と関連する要因を見出した。それら要因の偏在が健康格差の要因になっていることが示唆された。得られた結果をもとに、次期国民の健康づくり運動の目標策定に向けた政策提案を行った。すなわち、①市町村・社会階層間格差の視点からのモニタリングと対策、②ライフコースの視点からのモニタリングと対策、2)社会環境の整備の視点からは、①環境の改善(ゼロ次予防)、②建造環境(Built Environment)、③Health in All Policiesの重要性、3)評価の視点からは、①健康影響予測評価とプログラム評価の登録データベース、②多面的評価とロジックモデル、③データ収集・評価計画を組み込むことである。さらに、集団寄与危険当、集団レベルの効果評価や、都道府県等が活動を評価するための標準手法の提示(調査票作成など)、新型コロナウイルスのまん延に伴う社会変化を踏まえて、デジタル環境の公平性の確保することを追加した。
結論
近隣や社会全体といった様々なレベルの健康の社会的決定要因についての研究を進め、一層の理解を深めることで、より効果的な公衆衛生施策を考案し、展開することが可能になると期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202109009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
大規模な追跡データや政府統計の個票により、健康寿命やその地域格差に影響する社会的要因を複数明らかにし、成果は疫学・公衆衛生分野の国際的なトップジャーナルに複数掲載された。結果に基づき、国レベルの健康づくり運動(健康日本21)や関連する自治体の計画策定に向けた具体的な提案を行った。
臨床的観点からの成果
二次医療圏や市区町村といった小地域単位で健康寿命を算出し、関連する社会的要因を明らかにした。高齢者20万人の追跡調査等を用いた解明も進んだ。近年注目される、地域レベルのソーシャルキャピタルや地域の社会経済状況(失業率等)、その他の地域特性(農村度など)が、健康寿命その地域格差を強く予測することが明らかになった。関連する慢性疾患や精神疾患(抑うつ)の社会的要因も明らかになった。
ガイドライン等の開発
健康日本21の最終評価と次期プラン検討のための厚生労働科学研究班(辻一郎代表)と連携して、本研究班の成果に基づき、健康日本21の次期プランの目標項目設定に向けた政策提言を行った。
その他行政的観点からの成果
成果は令和4年度から開始された次期プラン策定のための班へと引き継いだ。成果は、健康日本21の次期プランにおける「社会環境整備」「健康格差の是正」に関する目標策定に向けた基礎資料として活用される予定である。その後、提案の一部が健康日本21(第3次)に実装され、関連する厚労科研事業2件に引き継がれた。
その他のインパクト
複数回メディアで報道された。日本農業新聞(2022.5.16)「都市部に比べて農村部では1.2倍うつが多い、ソーシャル・キャピタルが都市-農村格差を縮める可能性」、毎日新聞連載コラム「くらしの明日」私の社会保障論 孤独・孤立のゼロ次予防 (近藤克則)など。また、日本公衆衛生学会シンポジウム「社会環境整備によるヘルスプロモーション活動の目標設定」(R3.12.22東京)を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
58件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Gero K, Yazawa A*, Kondo N, et al
Comparison of three indices of relative income deprivation in predicting health status.
Soc Sci Med. , 294 , 114722-  (2022)
10.1016/j.socscimed.2022.114722.
原著論文2
Haseda M, Takagi D, Kondo K, et al
Effectiveness of community organizing interventions on social activities among older residents in Japan: A JAGES quasi-experimental study.
Soc Sci Med. , 240 , 112527-  (2019)
10.1016/j.socscimed.2019.112527.
原著論文3
Haseda M, Takagi D, Stickley A, et al
Effectiveness of a community organizing intervention on mortality and its equity among older residents in Japan: A JAGES quasi-experimental study.
Health Place , 74 , 102764-  (2022)
10.1016/j.healthplace.2022.102764.
原著論文4
Kanamori M, Hanazato M, Kondo K, et al
Neighborhood farm density, types of agriculture, and depressive symptoms among older farmers: a cross-sectional study.
BMC Public Health. , 21 (1) , 440-  (2021)
10.1186/s12889-021-10469-6.
原著論文5
Kanamori S*, Kondo N, Takamiya T, et al
Social participation and mortality according to company size of the longest-held job among older men in Japan: A 6-year follow-up study from the JAGES.
J Occup Health. , 63 (1) , e12216-  (2021)
10.1002/1348-9585.12216.
原著論文6
Kino S*, Nishioka D, Ueno K, et al
Changes in social relationships by the initiation and termination of public assistance in the older Japanese population: A JAGES panel study.
Soc Sci Med. , 293 , 114661-  (2021)
10.1016/j.socscimed.2021.114661.
原著論文7
Nakagomi A*, Shiba K, Kawachi I, et al
Internet use and subsequent health and well-being in older adults: An outcome-wide analysis.
Computers in Human Behavior , 130 , 107156-  (2022)
10.1016/j.chb.2021.107156
原著論文8
Nakazawa N, Kusama T, Cooray U, et al
Large contribution of oral status for death among modifiable risk factors in older adults: the JAGES prospective cohort study.
J Gerontol A Biol Sci Med Sci.  (2022)
10.1093/gerona/glac052.
原著論文9
Nishio M, Takagi D*, Shinozaki T, et al
Community social networks, individual social participation and dietary behavior among older Japanese adults: Examining mediation using nonlinear structural equation models for three-wave longitudinal data.
Prev Med. , 149 , 106613-  (2021)
10.1016/j.ypmed.2021.106613.
原著論文10
Okuzono SS*, Shiba K, Kim ES, et al
Ikigai and subsequent health and wellbeing among Japanese older adults: Longitudinal outcome-wide analysis.
Lancet Reg Health West Pac , 21 , 100391-  (2022)
10.1016/j.lanwpc.2022.100391.
原著論文11
Sato K*, Kondo N, Hanazato M, et al
Potential causal effect of physical activity on reducing the risk of dementia: a 6-year cohort study from the Japan Gerontological Evaluation Study.
Int J Behav Nutr Phys Act. , 18 (1) , 140-  (2021)
10.1186/s12966-021-01212-w.
原著論文12
Sato K*, Kondo N, Kondo K.
Pre-pandemic individual- and community-level social capital and depressive symptoms during COVID-19: A longitudinal study of Japanese older adults in 2019-21.
Health Place. , 74 , 102772-  (2022)
10.1016/j.healthplace.2022.102772.
原著論文13
Sato K, Amemiya A, Haseda M, et al
Post-disaster Changes in Social Capital and Mental Health: A Natural Experiment from the 2016 Kumamoto Earthquake.
Am J Epidemiol. , 189 (9) , 910-921  (2020)
10.1093/aje/kwaa041.
原著論文14
Sato K, Ikeda T, Watanabe R, et al
Intensity of community-based programs by long-term care insurers and the likelihood of frailty: Multilevel analysis of older Japanese adults.
Soc Sci Med. , 245 , 112701-  (2020)
10.1016/j.socscimed.2019.112701.
原著論文15
Takagi D., Kondo N., Tsuji T., et al
Parks/sports facilities in local communities and the onset of functional disability among older adults in Japan: The J-shaped spatial spillover effects.
Health Place. , 75 , 102801-  (2022)
10.1016/j.healthplace.2022.102801.
原著論文16
Tamada Y, Yamaguchi C, Saito M, et al
Does laughing with others lower the risk of functional disability among older Japanese adults? The JAGES prospective cohort study.
Prev Med. , 155 , 106945-  (2022)
10.1016/j.ypmed.2021.106945.
原著論文17
Tani Y, Fujiwara T, Kondo K.
Adverse Childhood Experiences and Dementia: Interactions With Social Capital in the Japan Gerontological Evaluation Study Cohort.
Am J Prev Med. , 61 (2) , 225-234  (2021)
10.1016/j.amepre.2021.01.045.
原著論文18
細川陸也, 近藤克則, 岡田栄作, 他
健康寿命および平均寿命に関連する高齢者の生活要因の特徴
厚生の指標 , 67 (7) , 31-39  (2020)
原著論文19
Okuzono, S.S*., Shiba, K., Lee, H.H., et al.
Optimism and Longevity Among Japanese Older Adults
J Happiness Stud , 23 (6) , 258-2595  (2022)
10.1007/s10902-022-00511-8
原著論文20
Yazawa A*, Shiba K, Inoue Y, Okuzono SS, et al.
Early childhood adversity and late-life depressive symptoms: unpacking mediation and interaction by adult socioeconomic status.
Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. , 57 (6) , 1147-1156  (2022)
https://doi.org/10.1007/s00127-022-02241-x

公開日・更新日

公開日
2022-11-16
更新日
2024-06-20

収支報告書

文献番号
202109009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,997,000円
(2)補助金確定額
17,997,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,753,315円
人件費・謝金 7,269,938円
旅費 257,650円
その他 3,565,097円
間接経費 4,151,000円
合計 17,997,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
-