候補遺伝子DISCIの機能解析による統合失調症の病態理解と治療戦略の構築

文献情報

文献番号
200833049A
報告書区分
総括
研究課題名
候補遺伝子DISCIの機能解析による統合失調症の病態理解と治療戦略の構築
課題番号
H19-こころ・若手-025
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
久保 健一郎(慶應義塾大学医学部 解剖学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,463,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
統合失調症の候補遺伝子の一つ、Disrupted-In-Schizophrenia 1 (DISC1)は、スコットランドの精神疾患多発家系の遺伝学的研究で発見された。本研究では、発生段階マウス胎児脳への時期・部位特異的遺伝子導入技術を駆使して、脳の発生過程におけるDISC1の機能を明らかにすることを目的とする。DISC1の機能異常が統合失調症に結びつくこと考えられていることから、統合失調症における脳の病態を理解するため、DISC1およびその関連分子の機能異常で生じる分子病態・神経病態を明らかにし、それ対する治療戦略の構築を目指す。
研究方法
大脳皮質の興奮性神経細胞が脳室近傍で生まれて放射状方向に移動するのに対し、抑制性神経細胞が大脳基底核原基で生まれて接線方向への移動を行う性質を利用し、蛍光蛋白GFP(Green Fluorescent Protein)発現ベクターを子宮内マウス胎児脳電気穿孔法により発生期マウス脳の大脳基底核原基特異的に導入することを試みた。様々な条件検討の結果、大脳基底核原基へGFPの遺伝子導入を行う事に成功した。
結果と考察
DISC1に結合する分子としてpericentriolar material-1(PCM1)およびBardet-Biedl syndrome-4 protein (BBS4) を同定し、機能的関連を証明した。また一方で、抑制性神経細胞における統合失調症候補遺伝子DISC1の機能に注目し、抑制性神経細胞特異的に遺伝子導入を行って、抑制性神経細胞におけるDISC1の機能を解析した。抑制性神経細胞は生後も高い移動能を保ち,細胞補充療法のよいツールとして注目されているため,これらの細胞における病態が明らかになれば,新たな治療戦略の構築に結びつくと考えている。
結論
DISC1結合分子としてpericentriolar material-1(PCM1)およびBardet-Biedl syndrome-4 protein (BBS4)を同定し、報告した。また、大脳皮質抑制性神経細胞への遺伝子導入技術を開発し、大脳皮質抑制性神経細胞でのDISC1の機能解析を行った。抑制機能不全は統合失調症における認知機能低下の要因とも考えられているため、本研究をさらに発展させることにより、統合失調症における認知機能低下の病態理解および治療戦略の構築に有用であることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-04-13
更新日
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