プリオン病における免疫反応の解明とそれに基づく診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
200833048A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病における免疫反応の解明とそれに基づく診断・治療法の開発
課題番号
H19-こころ・一般-024
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
片峰 茂(長崎大学 )
研究分担者(所属機関)
  • 西田教行(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 調 漸(長崎大学 保健医療推進センター)
  • 坂口末廣(徳島大学 疾患酵素学研究センター)
  • 杉村和久(鹿児島大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
有効な臨床治療手段がないクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)をはじめとするプリオン病では、プリオン病分子機構の解明に基づく診断・治療法の開発が急務となっている。
本研究では、これまでほとんど顧みられることのなかった免疫系を利用した新たなプリオン病予防・治療法の確立を目指し、具体的には自然免疫賦活物質と抗体の臨床応用へ向けた基盤を確立することを達成目的としている。
研究方法
各種自然免疫関連因子の遺伝子発現を特異的RNAiにてノックダウンさせ、異常型PrP産生量を比較した。IRF3遺伝子欠損マウスに各種プリオン株を感染させた。ヒトプリオン病患者髄液中のサイトカイン濃度をELISAにて検討した。Sh3.9scFv遺伝子をlentivirus vectorに挿入し293T細胞に導入、ウイルスが存在する培養上清を回収した。Microgliaへウイルスを感染させRT-PCR法、Western blottingを用いて抗体の発現を検討した。PRB7抗体の可変部領域と共にヒト末梢血リンパ球由来のIgG-H鎖、L鎖を挿入したベクターを構築し蛋白発現を行った。得られた抗体の組み換えヒトプリオン蛋白との結合能を解析、タンパク分子の立体構造について原子間力顕微鏡、CDスペクトルを用いて解析した。

結果と考察
プリオン持続感染細胞において自然免疫系因子の発現低下が特異的に認められ、それらを過剰発現すると異常型PrPを減少させた. 逆にIRF3、TLR3、RIG-Iの発現を抑制すると異常型PrPが増加することを確認した。IRF3欠損マウスは野生型マウスに比べ早く発症した。すなわちプリオンが細胞に感染し持続的に異常PrP産生が行われるにしたがって、なんらかの機序でRIG-I-IRF3系の抑制が起こると思われる。プリオン病患者において髄液中IL-8の発現が有意に高かった。Sh3.9scFv遺伝子をマイクログリアへ遺伝子導入し発現が確認された。PRB7scFvは、βプリオン蛋白に特異的結合活性を示さず抗体のリフォールディングに問題があった。PRB7のヒトIgG3型はCOS7細胞にて発現しβ型プリオン蛋白への結合が認められた。
結論
プリオン感染とMyD88非依存的自然免疫系との相互作用が明らかとなった。CJD患者の髄液中IL8は鑑別診断に有用である可能性がある。抗体療法の実用化可能性が見出された。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-