縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの根本的治療法開発

文献情報

文献番号
200833047A
報告書区分
総括
研究課題名
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの根本的治療法開発
課題番号
H19-こころ・一般-023
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
西野 一三(国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 悟(国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第一部)
  • 林 由起子(国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)モデルマウスを用いて、各種薬剤、細胞移植、遺伝子導入による治療効果測定の前臨床試験を行なうことを目的とする。
研究方法
変異GNEのみを発現するDMRVモデルマウスに対し、低シアル酸の回復を標的として、細胞実験にて効果を見出した新規糖化合物を飲水にて15週齢から約40週間、シャペロン分子に作用し蓄積タンパク質を分解に誘導する化学シャペロン剤を腹腔内投与にて、35週齢から約20週間投与した。治療効果はマウスの運動能力測定、単離骨格筋の収縮力測定、生化学試験、病理観察によって評価した。細胞移植では放射線照射DMRVモデルマウスに対し、GFPマウス由来の細胞を移植し、移植後の血液細胞、臓器での細胞キメラ率とシアル酸量を測定した。また、遺伝子治療の基礎として、GNE発現アデノウイルスベクターのDMRVマウス細胞への投与を行い、シアル酸の回復を測定した。
結果と考察
新規糖化合物の投与ではDMRVマウスの運動能力や骨格筋の収縮力において、前年度のシアル酸投与と同様に改善が見られた。血清シアル酸レベルでは前年度以上の効果があった。このことは、この新規糖化合物が治療薬として有望であることを示していた。しかしながら、コントロールマウスでは、運動能力に若干の低下が認められた。また、化学シャペロン剤の投与ではDMRVマウスの発症後期に見られた筋変性を抑え、骨格筋の収縮力の改善に効果があるものの、発症初期に見られる筋萎縮への改善効果がないことが示された。これらの結果は、シアル酸補充療法が非常に高い予防効果があること、化学シャペロン剤は変性した骨格筋に対し高い効果があることを示し、異なるいくつかのアプローチを合わせることで、根本的治療法が実現出来る可能性を強く示していた。GNE遺伝子発現アデノウイルスベクターのDMRV細胞への感染試験、細胞移植実験では、それぞれ細胞内、血清でのシアル酸レベルの上昇が観察された。
結論
シアル酸の上昇を目的とした、関連化合物の投与はDMRVマウスの症状の予防に充分な効果が得られる事が判った。化学シャペロン剤などアミロイド抑制薬剤投与や、細胞移植、遺伝子治療などの他の方法を組み合わせる事で、より高い効果が得られると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-