脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究

文献情報

• 文献番号: 200833046A
• 報告書区分: 総括
• 研究課題名: 脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究
• 課題番号: H19-こころ・一般-022
• 研究年度: 平成20(2008)年度
• 研究代表者(所属機関): 嘉山 孝正(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)

研究分担者(所属機関)

• 三國　信啓(京都大学医学部附属病院　脳神経外科)
• 吉峰　俊樹(大阪大学医学部附属病院　脳神経外科)
• 高安　正和(愛知医科大学病院　脳神経外科)
• 宇川　義一(福島県立医科大学附属病院　神経内科)
• 馬場　久敏(福井大学医学部附属病院　整形外科)
• 有賀　徹(昭和大学医学部附属病院　救急医学講座)
• 喜多村　孝幸(日本医科大学附属病院　脳神経外科)
• 深尾　彰(山形大学大学院医学系研究科　公衆衛生・予防医学講座)
• 細矢　貴亮(山形大学医学部附属病院　放射線診断科)
• 畑澤　順(大阪大学医学部　生体情報医学講座)
• 篠永　正道(国際医療福祉大学熱海病院　脳神経外科)
• 吉本智信(関東中央病院　脳神経外科)
• 佐藤慎哉(山形大学医学部総合医学教育センター　脳神経外科)
• 西尾　実(名古屋市立大学医学部附属病院　脳神経外科)

• 研究区分: 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
• 研究開始年度: 平成19(2007)年度
• 研究終了予定年度: 平成21(2009)年度
• 研究費: 25,000,000円
• 研究者交替、所属機関変更: -

研究報告書（概要版）

研究目的

「低髄圧症候群」は、脳脊髄液の漏出により頭痛、めまい、悪心、嘔吐等を引き起こす疾患で、５０年以上も前にその疾患概念が提唱され、世界同一の概念でコンセンサスが得られている。一方、後年提唱された「脳脊髄液減少症」は、ほぼ同議語で用いられてはいるが、その中には低髄圧でないものも存在する等の論文があり、疾病の定義に混乱が生じている。これまでいくつかの診断基準が提唱されているが、未だ広くコンセンサスを得たものはない。本研究は、これまで髄液漏の根拠とされていた画像診断所見の疾患特異性、髄液漏と症状の因果関係を検討することによって、「低髄圧症候群・脳脊髄液減少症の科学的根拠に基づく誰がみても納得できる診療指針」の作成を目指す。

研究方法

初年度に本症の診断に関する文献レビューを行い、臨床像を検討した後に診断プロトコールを作成する。その後、作成した新たな診断プロトコールによる前方視的検討を行い、診断基準を確立する。さらには確立した診断基準による原因疾患別患者割合と治療法の検討をおこない、既に存在する国際頭痛学会、神経外傷学会等のガイドラインをプロトタイプとしながら、本疾患に関連する学会間の垣根を取り払い、誰がみても納得できる診療指針を作成する。

結果と考察

診断法確立のための臨床研究プロトコールは、平成１９年１２月に完成し、倫理委員会での承認を得た施設より順次登録を開始し、現在も登録継続中である。平成２１年３月末現在の登録数は２４例である。登録開始が予定より遅れた最大の理由は、倫理委員会での審議順番待ち等による遅れであった。
　研究成果の公表としては、平成１９年度に行った文献レビュー及び研究者施設で経験した症例の検討結果を、（社団法人日本脳神経外科学会第６７回学術総会において、シンポジウム「脳脊髄液減少症研究の現況」を企画し報告した。

結論

近年、我が国では、脳脊髄液減少症と交通外傷の因果関係をめぐる問題が生じ、種々の社会問題を起こしている。そこには、過剰医療と見逃し医療や種々の疾病がこの疾患とされるものに含まれている可能性がある。その問題を解決する為には、本疾患の臨床像および診断基準を明確にする必要性がある。従って本研究の成果は、これらの混乱を科学的に解明でき、医学的にも社会的にも貢献するところは大である。症例登録は予定より遅れているが、登録増加の対策をこうじながら、来年度に向けて一日も早い目標症例の達成を目指す。

公開日・更新日

• 公開日: 2009-04-15
• 更新日: -